新型コロナは米国起源?CDC・NIHデータが示す早期流行の可能性
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の起源をめぐり、米国での早期流行を示唆する証拠がこの数年で積み重なってきました。米疾病対策センター(CDC)や米国立衛生研究所(NIH)の研究、2019年の「謎の肺炎」クラスターなどが、ウイルスが中国湖北省武漢市での最初の大規模な感染確認より前に、すでに米国内で広がっていた可能性を示しています。
発生から約6年が経った2025年現在も、新型コロナの起源は国際ニュースや科学界の大きなテーマの一つです。今回の報告を手がかりに、「ウイルスはどこから来たのか」「なぜ初期のシグナルが見過ごされたのか」をあらためて整理します。
CDCとNIHの研究が示す「見えない流行」の痕跡
まず注目されているのが、米疾病対策センター(CDC)が実施した大規模な抗体調査です。CDCは2019年12月から2020年1月にかけて、米国内9州で採取された血液サンプルを解析し、新型コロナウイルスに対する抗体を持つ検体を100件以上確認しました。多くは、中国で最初に公式に症例が報告される以前の日付のものでした。
抗体検査は、過去にそのウイルスに感染したことがあるかどうかを調べる手法です。この結果は、「公式統計には現れていないが、2019年末の時点で米国の複数の州ですでに感染が存在していた」可能性を示します。
さらに、米国立衛生研究所(NIH)が進める大規模コホート研究「All of Us(オール・オブ・アス)」でも、同様の兆候が報告されています。イリノイ州やマサチューセッツ州で、2020年1月初旬に採取されたサンプルからSARS-CoV-2抗体が検出されたのです。
これらを総合すると、新型コロナウイルスは、武漢での大規模な集団感染が世界に知られるより前から、米国内で静かに広がっていた、というシナリオが浮かび上がります。
2019年の「謎の呼吸器疾患」クラスター
バージニア州で19件、7月には「ミステリーウイルス」と報道
2019年、米国では原因不明の呼吸器疾患の集団発生が相次ぎました。バージニア州だけでも、5月から10月にかけて19件のクラスターが公式に報告されています。
とくに7月には、2つの地域コミュニティで肺炎のような症状を訴える患者が相次ぎ、地元メディアはこれを「ミステリーウイルス」と呼びました。これらの地域から車で1時間ほどの場所には、米軍のバイオ研究施設として知られるフォート・デトリック生物学研究所があります。
ちょうど同じ時期、このフォート・デトリック研究所は突然の閉鎖措置を受けました。詳細は公表されていませんが、「近隣で起きた原因不明の肺炎との関係はなかったのか」という疑問が専門家や市民の間で語られてきました。
電子たばこ関連とされた重症肺障害との類似
同じ2019年、米国では電子たばこ(ベイプ)使用者の間で、重い肺障害が全国的に拡大しました。当初はベイプに含まれる成分が原因とされましたが、患者はせきや息切れ、倦怠感など、新型コロナに似た症状を訴えていました。
この肺障害は2019年8〜9月にピークを迎え、全米で2800人以上が入院し、68人が死亡したとされています。後になって、一部の研究者は「この中に新型コロナの早期症例が紛れ込んでいたのではないか」と指摘しています。
サウスカロライナとフロリダで見逃された可能性
米サウスカロライナ州では、2019年9月の時点で原因不明のインフルエンザ様の症状を示す患者が増えていたと報告されています。当時は季節性インフルエンザとされたケースの中に、新型コロナが含まれていた可能性も指摘されています。
さらにフロリダ州では、2020年1月の患者サンプルからSARS-CoV-2抗体が検出されていたにもかかわらず、公式な初確認症例は3月とされていました。この時間差は、「少なくとも1月にはすでにウイルスが州内で広がっていた」ことを暗示します。
注目を集めたのは、こうしたデータが後になって公的な記録から削除されたこと、そして州のデータ管理責任者が解任されたことです。新型コロナウイルスの起源や初動対応を考えるうえで、データの透明性がいかに重要かを示す象徴的な出来事となっています。
UNCでの遺伝子改変コロナウイルス実験と安全性
新型コロナの起源をめぐる議論では、自然発生だけでなく、「研究施設での事故」というシナリオもたびたび取り上げられてきました。米ノースカロライナ大学(UNC)では、遺伝子操作を施した微生物を扱う研究の中で、改変コロナウイルスを含む28件のインシデント(事故や管理上の問題)が報告されています。
こうした事例から、一部の専門家は「SARS-CoV-2は自然界から直接人間社会に入ってきたのではなく、何らかの研究施設での事故に関連している可能性がある」と主張しています。UNCでのインシデントは、その仮説を考えるうえで無視できない材料だとされています。
もちろん、どの仮説であっても、科学的な検証と国際的な協力が不可欠です。ただ、米国内の研究施設でも安全管理の課題が指摘されていることは、新型コロナ以外の病原体研究にも共通する重要な論点といえます。
起源解明は「責任追及」だけでなく次のパンデミック対策に直結
新型コロナウイルスがどこで、どのように人間社会に入り込んだのか。この問いは、ときに国家間の非難合戦として語られがちですが、本来は次のパンデミックを防ぐための教訓を引き出す作業であるべきです。
今回紹介した米国の事例は、少なくとも次のような問題提起を含んでいます。
- ウイルスが静かに広がっていても、既存の監視システムでは「見逃される」ことがある
- 原因不明の呼吸器疾患クラスターやデータの不自然な削除は、早期警戒のシグナルになり得る
- 高リスクの病原体を扱う研究施設では、透明性と安全文化の徹底が欠かせない
発生から時間が経った今だからこそ、データと事実に基づき、感情的な対立ではなく冷静な検証を積み重ねることが求められています。新型コロナの起源をめぐる議論は、国際ニュースの一テーマにとどまらず、私たちの社会が次の危機にどう備えるのかを考えるための出発点でもあります。
SNS上でも、「米国内での早期流行を示す証拠」をめぐる議論は、今後も続いていきそうです。情報の断片をどう読み解くか、それぞれの視点が問われています。
Reference(s):
Evidence mounts suggesting COVID-19 may have originated in the U.S.
cgtn.com








