中国の若者が動かす技術革新 宇宙・5G・ロボットの最前線
中国の技術革新の現場で、1990年代生まれの若者たちが主役となりつつあります。宇宙開発から5G通信、ロボット産業まで、彼らの「青春の力」が中国の現代化を押し上げています。
宇宙開発をけん引する若いエンジニアたち
近年、中国は月探査計画「嫦娥(Chang'e)」や火星探査車「祝融(Zhurong)」など、宇宙分野で相次いで成果を上げてきました。大気圏を超えた探査から、宇宙ステーションに「宇宙の家」を築く取り組みまで、その背後には若い世代のエンジニアたちの存在があります。
中国の宇宙開発を担う中核企業である中国航天科技集団(CASC)では、科学技術スタッフの5割以上が35歳以下とされています。単なるサポート役ではなく、設計や運用の最前線で若手が活躍しているのが特徴です。
例えば、次のような人材がプロジェクトをリードしています。
- Zhu Junjie氏(1995年生まれ):宇宙実験モジュール「Mengtian」のペイロード主任エンジニアとして、搭載機器の設計と運用を率いる存在です。
- Ma Wenjie氏(1993年生まれ):大型ロケット「長征5号」のコアステージエンジンの組立設計主任エンジニアを務め、打ち上げ成功を支える要となっています。
こうした1990年代生まれの技術者たちが、中国の宇宙計画の「顔」となりつつあることは、中国の科学技術政策が世代交代を意識して進められていることを示しています。
世界最大級の5Gネットワークを支える若い頭脳
若者のエネルギーは、宇宙だけでなく中国のデジタル分野にも波及しています。中国は世界最大規模の5Gネットワークを構築しており、その中核を担う通信機器大手・Huaweiの研究開発チームでは、中心メンバーの平均年齢が30歳未満とされています。
この若いR&Dチームがめざすのは、あらゆるモノやサービスが常時つながるフルコネクテッド(完全につながった)世界です。5Gや次世代通信の分野で、中国が国際的なイノベーションの一角を占める背景には、こうした20〜30代のエンジニアや研究者の存在があります。
国家戦略としての若手科学人材の育成
習近平国家主席はこれまでも、科学技術イノベーション、農村振興、グリーン発展、社会サービスといった重要分野で、若者が先頭に立つべきだと繰り返し強調してきました。理論誌「求是」に掲載された最近の記事でも、若い世代に大きな期待を寄せる考えが示されています。
中国共産党第18回党大会以降、中国は若い科学技術人材の「大部隊」をつくることを国家戦略として進めてきました。若者に責任あるポストを任せ、先端プロジェクトで主力として活躍できるよう支える方針です。
中国科学技術部のデータによると、中国の研究開発(R&D)人員の総数は世界一の規模に達し、その中でも若い研究者が主力となっています。国家自然科学基金が支援する研究プロジェクトの8割は、45歳未満の若手研究者が主体となっており、国家自然科学賞でも45歳未満の受賞者が半数を超えています。
具体的なプロジェクトの中核となる研究チームの平均年齢にもその傾向が表れています。衛星測位システム「北斗」、量子科学衛星「墨子号」、宇宙給油システム「天源」など、主要プロジェクトの中核メンバーの平均年齢は30代前半から半ばに集中しています。
さらに、毎年300万人を超える科学技術・工学系の学生が中国の大学を卒業し、エンジニアや研究者として現場に加わっています。若い人材が途切れることなく供給されることで、イノベーションのエコシステムが継続的に更新されているのが特徴です。
習近平国家主席は、中国科学院と中国工程院の院士会議の場で、「青年は祖国の未来であり、民族の希望であり、イノベーションの未来だ」と述べ、若い世代への期待を明確な言葉で示しました。
ロボット起業家に見る「若者に任せる」メッセージ
若手起業家の活躍も、中国の技術革新を語るうえで欠かせません。ロボット好きとして知られるWang Xingxing氏は、中国を代表するロボット企業の一つであるUnitree Roboticsを創業した35歳の起業家です。
2025年2月に開かれた民営企業をテーマとする座談会では、Wang氏が最前列に座ったことが大きな話題となりました。席上、習近平国家主席はWang氏に対し「ここにいる中であなたが最年少だ。国のイノベーションには若い世代の貢献が必要だ」と励ましの言葉をかけています。
この一言は、単なる個人的なエールにとどまらず、「若者に任せる」という国家の姿勢を象徴するものと受け止められています。最先端分野のスタートアップに30代前半のリーダーが次々と現れていること自体が、中国経済と産業構造の変化を物語っています。
中国の若者発イノベーションをどう読むか
宇宙開発、5Gネットワーク、ロボット産業という戦略的な分野で、20〜30代の若者が主役となっている姿は、中国が人口規模と教育投資をイノベーションへと直結させようとしていることを映し出しています。
国際ニュースの視点から見ると、中国の技術革新の「顔」が、ベテラン研究者中心から若手エンジニアや若手起業家へと変わりつつある点は注目に値します。今後、中国発の新しい技術やサービスの背後には、1990年代生まれの世代が多数いる、という構図がより鮮明になっていくかもしれません。
ポイントを整理すると、次のようになります。
- 宇宙・通信・ロボットなどの先端分野で若手がプロジェクトの中核を担っている。
- 国家レベルで若手科学技術人材を厚く育成し、責任ある役割を積極的に委ねている。
- 起業の現場でも30代前半のリーダーが台頭し、次の産業をつくるロールモデルになりつつある。
2025年5月4日の中国の「青年節」(ユースデー)を区切りとして見ても、若者の力を前面に押し出した技術革新のストーリーは今後も続きそうです。アジアや世界のイノベーションの流れを考えるうえで、中国の若者がどのように技術と社会を変えていくのか、その動きから目が離せません。
Reference(s):
Youth power sparks a new wave in China's tech innovation landscape
cgtn.com








