中国で500量子ビット超対応システム 量子コンピューター量産に弾み
中国・合肥市のスタートアップOrigin Quantumが、自社開発の超伝導量子測定・制御システム「Origin Tianji 4.0」を公開しました。500量子ビット超の量子コンピューターに対応し、中国の量子コンピューター生産体制を一段と前進させる動きとして注目されています。
500量子ビット超を支える新システム「Origin Tianji 4.0」
今回発表された「Origin Tianji 4.0」は、超伝導方式の量子コンピューター向けに設計された第四世代の測定・制御システムです。前世代の「Tianji 3.0」をベースに改良されており、この3.0は、中国が独自開発した第三世代超伝導量子コンピューター「Origin Wukong」を支える中核装置でもあります。
4.0では、500量子ビット超の量子コンピューターをサポートできるよう設計され、次の点で性能が強化されたとされています。
- スケーラビリティ(規模拡大のしやすさ)の向上
- システム全体の高い統合性
- 長時間運転を意識した安定性の改善
- 運用・実験プロセスの自動化
量子コンピューターの「神経中枢」とは
量子コンピューターでは、量子ビット(qubit)を冷却したチップそのものだけでなく、それを制御する測定・制御システムが重要な役割を担います。今回のシステムは、量子チップに送る信号を精密に生成し、戻ってくる微弱な信号を検出・解析する「神経中枢」のような存在です。
信号のわずかな乱れが計算結果の誤りにつながるため、高精度な制御と読み出しが不可欠です。量子ビットの数が増えるほど、こうした制御系をどこまで拡張できるかが、量子コンピューターの大型化・量産化のボトルネックになってきます。
開発チームが語るねらいと効果
安徽量子計算工学研究センター副主任で、システム開発チームを率いる孔偉成(Kong Weicheng)氏は、「Origin Tianji 4.0」によって量子チップの効率的な制御と精度の高い読み出しが可能になり、量子コンピューターの研究開発や納入までの期間短縮につながると説明しています。
制御システムの標準化と自動化が進むことで、
- 試作から実機までの立ち上げ時間を短くできる
- 複数台の量子コンピューターを並行して運用しやすくなる
- 遠隔からの利用サービスを安定して提供しやすくなる
といった効果が期待されます。量子コンピューターを「一部の研究室だけの装置」から、「多くのユーザーが使う共有インフラ」へと位置づけていく上で、こうした基盤技術の強化は欠かせません。
「Origin Wukong」が示す利用拡大
「Origin Tianji 4.0」の前世代システムを搭載した超伝導量子コンピューター「Origin Wukong」は、2024年1月6日の稼働開始以降、世界139の国と地域のユーザーにより2,600万回以上利用され、38万件超の量子計算タスクをこなしてきたとされています。金融からバイオ医薬まで、幅広い産業分野の案件が含まれています。
これは、オンライン経由で世界各地の研究者や企業が中国発の量子計算リソースにアクセスしていることを示す数字でもあります。量子コンピューターが、特定の組織に閉じた技術ではなく、クラウド経由で共有される計算基盤として動き始めている様子がうかがえます。
私たちが注目したいポイント
今回の発表は、日本を含む世界の技術動向をウォッチする読者にとって、次のような視点から考えるきっかけになりそうです。
- 500量子ビット級を見据えた制御システムの開発が進んでいること
- 量子コンピューターを遠隔サービスとして提供する動きが加速していること
- 金融・バイオ医薬など実ビジネスでの試験利用がすでに広がっていること
量子コンピューターはまだ発展途上の技術ですが、暗号技術、AI、創薬、材料開発など、私たちの日常や産業に直結する分野に影響を与える可能性があります。中国をはじめ各地で進むこうした基盤技術の整備が、今後の国際競争や協力のあり方にどのようにつながっていくのか、引き続き注視したいところです。
Reference(s):
China unveils new system to boost quantum computer production
cgtn.com








