国交45年のジンバブエと中国 デジタル・グリーン協力と女性リーダーの現在地
2025年、ジンバブエと中国は国交樹立45周年を迎えました。両国の協力はインフラからデジタル経済、グリーン開発、そして女性リーダーシップまで広がり、グローバル・サウスの連携を考えるうえでも重要なケースとなっています。本記事では、駐中国ジンバブエ大使アビゲイル・ショニワ氏の発言を手がかりに、その現在地と今後の方向性を整理します。
3つのフェーズで見るジンバブエ・中国関係
ショニワ大使は、ジンバブエと中国の関係の歩みを「3つのフェーズ」として捉えています。いずれの段階でも、両国は互いの主権を尊重し、核心的利益を支持し合ってきたと強調します。
- 第1フェーズ(1960〜1980年):独立前の連帯
ジンバブエ独立前、中国は解放闘争を支えるため、物資支援や戦闘員の訓練などを行ったといいます。ショニワ氏は、この時期を「今日の自由なジンバブエを支える根」と位置づけ、「強い根を持つ木は嵐にも耐えられる」とたとえます。 - 第2フェーズ(1980年〜2000年代初頭):国交樹立と政治関係の強化
1980年4月18日の独立と同時期に、中国は最初期にジンバブエと外交関係を樹立した国の一つになりました。この時期には、政治関係の一層の緊密化とともに、中国からジンバブエへの医療支援チームの派遣などが行われ、新しい国家の保健医療体制づくりを後押ししたとされています。 - 第3フェーズ(2000年代初頭〜現在):経済開発を軸にした「前例のない協力」
2000年代以降、両国関係は経済開発を中心に、ほぼあらゆる分野へと広がってきました。ショニワ氏によれば、中国企業と政府からの投資・支援により、空港や病院、情報通信(ICT)、発電所、さらには工業団地などの大型インフラプロジェクトが進んでおり、ジンバブエが掲げる「ビジョン2030」に向けた変革のカギになっているといいます。
こうした流れを通じて、同大使は両国関係を「時間とともに強度を増してきた木」のような存在だと語ります。
インフラからデジタル・グリーンへ広がる協力
独立以降45年の間に、ジンバブエと中国の協力分野は大きく変化してきましたが、特に最近は、インフラ整備に加えてデジタル経済とグリーン開発が新たな柱として浮上しています。
インフラ投資と産業基盤の整備
ショニワ氏は、空港、病院、ICTインフラ、発電所などの大型プロジェクトを「ジンバブエ経済の変革に不可欠な基盤」と位置づけます。さらに、工業団地や産業パークで進む新たなプロジェクトが、生産能力の向上や雇用創出に結びつくことへの期待も示しました。
デジタル経済での連携拡大
同大使は、デジタル経済とグリーン開発を「未来の波」と表現します。中国がこれらの分野で大きな進展を遂げていることから、ジンバブエには学ぶべき点が多く、すでに協力が始まっているといいます。
具体的には、中国の通信機器企業がデータセンター建設を支援したり、通信会社と連携してインフラ整備を行ったりしているほか、次のような分野で協力の余地があると指摘しました。
- 電子商取引(EC)やオンラインビジネスの基盤整備
- 製造業など伝統的産業のデジタル化による生産性向上
- リモートセンシングや自動化された農業機械による精密農業
- GPSを活用した物流やルート最適化
- アルゴリズム経済やギグ・エコノミーへの対応
ショニワ氏は、デジタル技術は農業、医療、製造業など幅広い分野で活用でき、農村部や高齢者にも広く浸透している中国の経験から学びたいと強調します。「私たちは協力に非常に意欲的であり、より多くの企業に関わってほしい」と述べ、さらなる連携拡大への期待を示しました。
グリーン開発とエネルギー協力
エネルギー分野でも、ジンバブエは中国との協力を通じたグリーン転換を視野に入れています。ショニワ氏は、電力不足への対応として、次のような新エネルギー分野での投資に期待を寄せています。
- 太陽光パネルなどの再生可能エネルギー
- 水素エネルギー
- 風力発電
- 水力発電所の整備・拡充
デジタルとグリーンの両分野での協力は、インフラ中心だった従来の関係を、より高度な産業・技術協力へと押し上げる動きともいえます。
グローバル・サウスと保護主義の時代
「世界は今、深い変化の中にある」とショニワ氏は語ります。地政学的緊張に加え、保護主義の高まりが世界貿易を揺さぶり、特に開発途上国に深刻な影響を与えかねないと懸念します。
同氏が挙げた論点は次の通りです。
- 保護主義はグローバルなサプライチェーンを混乱させ、多くの国々の成長を脅かしている
- こうした状況の中で、ジンバブエを含むグローバル・サウスの国々は連帯し、「公正で、正義があり、均衡のとれた経済秩序」を築く必要がある
- 大規模な経済規模を持つ中国のような国がリーダーシップを発揮し、真の多国間主義を守ることが重要だ
ショニワ氏は、多国間主義が攻撃にさらされているとし、保護主義と対峙しながら、多国間の枠組みをいかに機能させるかがグローバル・サウスにとって死活的な課題だと訴えます。単に自由貿易か保護主義かという二項対立ではなく、「誰の声が国際ルール形成に反映されるのか」という視点が強く意識されていることがうかがえます。
女性リーダーが広げる外交とガバナンスの地平
ショニワ氏は、ジンバブエ初の駐中国女性大使として、そして長年にわたり官僚組織でキャリアを重ねてきた女性リーダーとして、自身の経験と女性の政治参加の意義についても語っています。
初の駐中国女性大使として
大学卒業後に公務員となったショニワ氏は、産業・商業省の事務次官(パーマネント・セクレタリー)を務めるなどしてキャリアを積み、独立以来初の女性事務次官となりました。その後、駐中国大使に任命されたことを「大統領からの信頼に感謝している。謙虚な気持ちで受け止めている」と振り返ります。
女性として働く上での実感として、彼女は次のように述べています。
- 上に行くほど「自分ができる」と証明するため、より一層努力することが多い
- 家庭の責任と仕事の両立が求められる
- 同僚や部下からの支えがあったことで、大きな困難を感じずに職務を果たすことができた
そのうえで、世界全体としてはいまだに女性リーダーは少なく、企業の取締役会、政府、国際機関など、より多くの女性の登用が必要だと指摘しました。
IOCトップとなったコヴェントリー氏の意味
ショニワ氏が象徴的な存在として挙げたのが、国際オリンピック委員会(IOC)のトップに就いたジンバブエ出身のカースティ・コヴェントリー氏です。コヴェントリー氏は、初の女性かつ初のアフリカ出身のIOCトップとされ、その歩みはジンバブエ国内外で注目されています。
オリンピアンとして数々の記録を打ち立て、政府の閣僚も務めてきた同氏について、ショニワ氏は「やればできるというサインだ」と評価します。ジンバブエにとってだけでなく、アフリカ、そして世界の女性にとっても、大きな励みになる事例だという見方です。
北京で開かれるジェンダー会合への期待
2025年後半には、北京で「男女平等と女性のエンパワーメントに関するグローバル・リーダーズ会合」が開催される予定です。これは1995年の北京世界女性会議からの節目の年にあたる会合で、ショニワ氏は「振り返りの時になる」と話します。
彼女が期待するのは、次のような点です。
- 1995年以降、どこまで目標を達成してきたのかを検証する
- 達成できなかったことを見極め、今後30年の課題を整理する
- 女性の権利拡大やリーダーシップ強化に向けた新たな道筋を描く
ジンバブエ初の女性大使としての経験と、国際的なジェンダー議論とがここで交差している点は、アフリカとアジアを結ぶ新たな対話のかたちともいえそうです。
ショニワ大使が掲げる今後の優先課題
駐中国大使としての任期中に何を実現したいかという問いに対し、ショニワ氏は、非常に具体的な目標を列挙しました。
- 投資の拡大と産業高度化
中国からジンバブエへの投資を増やし、生産性向上と高付加価値化を進めることで、ジンバブエ産品の対中輸出も拡大したいとしています。 - 観光分野での連携強化
自然や文化資源を生かした観光はジンバブエの強みの一つとされ、ホテルや会議場など観光インフラへの投資を通じて、観光客の増加につなげたい考えです。 - 教育・人材育成と文化交流
学生や実務者が中国で学び、新しい知識や技術を持ち帰ることのできる教育・研修プログラムの拡充を重視しています。文化分野での交流もすでに進んでいるものの、さらに広げていきたいとしています。
ショニワ氏は、企業や各地の省・自治体との対話を重ねながら、「できる限りのことをしていきたい」と意欲を語りました。
日本の読者への示唆:南南協力と「学び合う」関係
ジンバブエと中国の45年にわたる関係は、日本の読者にとっても、いくつかの示唆を与えてくれます。
- 長期的なパートナーシップの重み
解放闘争期の支援から始まった関係が、いまやデジタル経済やグリーン開発、ジェンダー平等にまで広がっている点は、南南協力のあり方を考えるうえで興味深い事例です。 - 技術と知識の相互移転
ジンバブエ側が「学ぶべきことが多い」と認めつつ、単なる援助ではなく、産業デジタル化や農業の高度化などを通じた共創を志向している点は、アジアとアフリカの関係にも通じるテーマです。 - ジェンダー視点から見る外交
女性大使の存在や、アフリカ出身のIOCトップの誕生、北京でのジェンダー会合への期待など、外交とガバナンスの現場で女性リーダーが果たす役割も、今後の国際政治を理解するうえで重要な観点となりそうです。
国交樹立45年を迎えたジンバブエと中国の協力は、単なる二国間関係にとどまらず、グローバル・サウスの連帯、デジタルとグリーンを軸とした開発、そしてジェンダー平等という、複数の大きなテーマが交差する場になりつつあります。その動きを追うことは、アフリカを含む国際ニュースを読み解く新しい視点を与えてくれます。
Reference(s):
Ambassador Abigail Shoniwa on the growing Zimbabwe-China cooperation
cgtn.com








