中国初の「宇宙から海まで」海洋性氷河調査が西蔵で始動
中国南西部の西蔵自治区で、衛星・ヘリコプター・地上観測を組み合わせた中国初の本格的な海洋性氷河調査が始まりました。気候変動の影響を受けやすい氷河を三次元的にとらえ、今後の自然資源管理や地球温暖化研究の基盤となるデータづくりを目指します。
風雪の合間に飛び立った低空ヘリ レンロンバ氷河から調査開始
今週、風と雪が収まって晴れ間が広がった木曜日、西蔵自治区チャンドゥ市にあるレンロンバ氷河上空に低空ヘリコプターが飛び立ちました。これは、中国として初めて実施される海洋性氷河の空中調査です。
今回のプロジェクトは今週立ち上がったばかりで、海洋性氷河の発達パターンや融解の変化を詳しく調べることが主な目的です。得られたデータは、氷河資源を含む自然資源の管理や保全に役立てられるとしています。
海洋性氷河とは?「暖かく、よく動く」氷のかたまり
調査対象となる海洋性氷河とは、極地や高山地帯の地表に長年存在し、地面に沿って移動する自然の氷のかたまりを指します。氷の温度が比較的高いことから、温暖氷河とも呼ばれます。
中国の研究者によると、こうした海洋性氷河には次のような特徴があります。
- 氷の温度が高く、凍結と融解が速い
- 氷河の動きが目に見えるかたちで現れやすい
- 気候の変動や地形の影響を強く受ける
一方で、気候が変わりやすく地形も複雑なため、広い範囲にわたるデータ収集は極めて難しいとされてきました。今回の空中調査は、そのハードルを下げる試みでもあります。
ヘリに搭載された「氷を透かして見る」レーダーと重力計
レンロンバ氷河上空を飛ぶヘリコプターには、胴体の左右に長方形の装置が取り付けられています。中国自然資源航空物探遥感センター(AGRS)の主任科学者・熊勝清氏によると、これは氷を透過する空中レーダーで、高周波の電磁波を照射し、氷河内部の構造を探ることができます。
さらに、機体には国産の空中重力計も搭載されています。この装置は氷河の下にある岩盤のわずかな密度差を捉えることで、氷の厚さを推定することが可能です。熊氏は、この重力計について「世界水準の精度を達成しながら、同等の海外製装置の3分の1のサイズに収まっている」と説明しています。
レンロンバ氷河の調査を終えた後、ヘリコプターは今後2週間ほどかけて、西蔵自治区東南部の主要な氷河地帯を次々と飛行する計画です。およそ1,000平方キロメートルの範囲をカバーし、その結果は3〜4カ月後に取りまとめられる見通しです。
高分衛星で広く・細かく 氷河を3Dモデル化
空からの観測を支えるのが、宇宙空間からのリモートセンシング(遠隔観測)です。AGRSの上級エンジニア・王姍姍氏によると、今回の調査では2機の高分(Gaofen)衛星がレンロンバ氷河を撮影しました。
高分衛星が取得する画像は、広い範囲を一度にカバーできるうえ、細かな地形の情報も含まれています。これにより、研究チームは次のような氷河の変化を素早く把握できるといいます。
- 氷河の境界線の位置
- 標高の変化
- 氷の表面の動き
王氏は「高精度の衛星画像と地形データを組み合わせることで、レンロンバ氷河の詳細な3Dモデルを構築した」と説明します。この三次元データセットを使うことで、
- 氷河の動きの仕組みを解析する
- 将来の変化をシミュレーションする
- 表面だけでなく、氷の内部やその下の状態も推定する
といった研究が可能になります。
宇宙(衛星)、空(ヘリコプター)、地上観測を組み合わせたこの三位一体の手法は、中国の海洋性氷河観測としては初めての試みとされています。
宇宙・空・地上をつなぐ観測網がねらうもの
海洋性氷河は、気温や降水の変化に敏感に反応し、その動きや融解のスピードが比較的速い氷河です。そのため、地球規模の気候変動がどのように進んでいるのかを読み解く「早期警報」のような役割も期待されています。
しかし、海洋性氷河が分布するのは高地や寒冷地といった厳しい環境であり、
- 標高が高く、気圧が低い
- 気温が低く、風雪が強い
- 対象となるエリアが広大
といった条件が重なります。今回のプロジェクトでは、衛星・航空機・地上観測を組み合わせることで、こうした環境下でも継続的で体系的な監視を行おうとしています。
研究チームは、海洋性氷河を詳しく調べることで、地球温暖化を含む気候変動のプロセスをよりよく理解し、その影響に対応するための科学的な土台を築くことを目指しています。デジタル技術と観測機器の進展により、氷河の内部や動きがこれまでより立体的に見えてきた今、そのデータをどう読み解き、政策や地域の暮らしにどう生かしていくかが、今後の大きなテーマとなりそうです。
Reference(s):
China's first space-to-sea glacier survey underway in Xizang
cgtn.com








