中国の科学者が1キロ解像度の全球海洋循環モデル 気候変動予測に新たな一歩
中国の科学者グループが、水平解像度1キロメートルというきめ細かさを持つ全球海洋循環モデルを共同開発しました。中国の科学技術日報(Science and Technology Daily)が木曜日に報じています。気候変動の行方を左右する海洋の動きを、これまでより詳細にとらえようとする試みです。
1キロメートル解像度の全球海洋循環モデルとは
今回報じられたのは、地球全体の海の流れをシミュレーションする「全球海洋循環モデル」です。特徴は、水平解像度が1キロメートルに達していることです。
解像度とは、モデルの「マス目」の細かさのことです。1つひとつのマスで海水の温度や塩分、流れの速さなどを計算していきます。マス目が細かいほど、小さな渦や流れの変化まで表現できるようになります。
1キロメートル級の解像度になると、これまで粗い計算では表現しきれなかった沿岸域の複雑な流れや、小さなスケールの循環構造などを、より現実に近い形で再現できると期待されています。
海洋は地球の「巨大な緩衝材」
科学技術日報によると、海洋は地球の気候システムにおいて、エネルギーと炭素の吸収源として極めて重要な役割を果たしています。報道は、海洋が地球温暖化によって生じた余分な熱の90パーセント以上を吸収し、人間活動による二酸化炭素排出の30パーセント超を取り込んでいると伝えています。
言い換えれば、海がなければ、私たちが経験している気温上昇は今よりはるかに急激なものになっていた可能性があります。その一方で、海洋に蓄えられた熱や炭素は、長い時間スケールで大気とやりとりし、将来の気候の姿を左右します。
こうした海洋の働きを理解し、将来を見通すうえで、海洋循環モデルは欠かせない道具です。特に、どの海域でどれだけの熱や二酸化炭素が吸収されているのかを、空間的に細かく把握するには、高解像度のモデルが有利になります。
高解像度モデルで何が見えてくるのか
1キロメートル解像度の全球海洋循環モデルが整備されれば、次のような研究や応用が進む可能性があります。
- 海流や渦の詳細な構造を捉え、熱や物質の輸送メカニズムをより精密に評価する
- 海洋の温度分布の変化を詳しく再現し、気候変動にともなう海洋熱波などのリスク評価に役立てる
- 海洋の炭素吸収量の空間分布を改善し、将来の大気中二酸化炭素濃度の見通しの不確実性を減らす
- 沿岸域や大陸棚付近の流れを細かく表現し、漁業資源や海洋生態系の変化を分析するための基盤とする
気候モデル全体の中で見れば、海洋だけでなく大気や氷床、生態系など多くの要素が絡み合っています。その中核をなす「海の部分」を高精度にすることで、地球システム全体の理解も一段と進むと考えられます。
計算負荷とデータの時代へ
一方で、1キロメートル解像度の全球モデルは、計算機にとって非常に重い負荷となります。長期間にわたるシミュレーションや、多数の条件を変えた試行(アンサンブル計算)を行うには、大規模な計算資源と効率的なアルゴリズムが欠かせません。
こうした制約はありますが、今回の取り組みは、2025年末の現在、海洋や気候の研究が「データと計算」の時代に本格的に入っていることを象徴しています。高解像度モデルと、観測データや衛星データを組み合わせることで、海洋と気候の理解は今後も着実にアップデートされていきそうです。
静かに世界をつなぐ研究
海は国境を持ちません。ある海域での熱や炭素の変化は、時間をかけて世界中の気候や生態系に影響を及ぼしていきます。個々の国や地域の研究成果も、最終的には地球全体の理解の一部として組み込まれていきます。
中国の研究チームによる今回の全球海洋循環モデルの開発は、そうした長い時間と広い空間のスケールで見たとき、私たちがどのような未来の気候を選び取るのかを考えるための材料を静かに増やしていると言えます。スマートフォンの画面越しにその一端を知り、海の向こう側で進む研究に思いを巡らせることも、グローバルな時代のニュースとの付き合い方のひとつなのかもしれません。
Reference(s):
Chinese scientists refine climate-ocean model with 1 km detail
cgtn.com








