後期中新世の気候変動を加速させた「植生変化」とは何か
約1160万〜530万年前の後期中新世に起きた大きな気候変動の背景で、地表の植生変化が重要な役割を果たし、その変化が気候の転換を加速させていた可能性が示されました。中国科学院大気物理研究所の研究チームが主導し、国際的な科学誌「Science Advances」に最近掲載された研究です。
後期中新世とは? 地球の気候が大きく揺れた時代
後期中新世は、およそ1160万年前から530万年前まで続いた地質時代を指します。この長い期間のあいだに、地球は現在の気候につながる大きな転換期を経験したとされています。今回の研究は、その転換のスピードに「植生の変化」がどのようにかかわっていたのかを改めて問い直すものです。
植生の変化が気候変動を加速させたという新しい見方
この研究によると、後期中新世の主要な気候変動は、単に大気や海洋の変化だけで進んだのではなく、地表を覆う植物の変化によって「加速」された可能性があります。つまり、気候が変わるから植生が変わるという一方向の関係ではなく、植生の変化そのものが気候変動を強める役割を担っていたと考えられるのです。
「結果」ではなく「引き金」の一部としての植生
これまでの古気候研究では、植生は気候変動の「結果」として扱われることが多くありました。しかし今回の中国科学院大気物理研究所の研究は、植生を気候変動を早める「要因」の一つとして位置づけています。これは、地球システムを理解するうえで、植物の役割をより能動的にとらえ直す視点ともいえます。
植物はどうやって気候に影響するのか
では、なぜ植生の変化が気候変動を加速させうるのでしょうか。ここでは一般的に知られている、植物と気候の主な関係を整理してみます。
- 大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、温室効果ガスの量を変える
- 森や草地、砂漠など地表の状態を変え、太陽エネルギーの吸収・反射のバランス(アルベド)に影響する
- 植物の蒸散によって大気中の水蒸気を増減させ、雲の形成や降水パターンに影響する
後期中新世のように長い時間スケールで森林や草原の広がりが変化すると、地球規模の気温や降水の分布も変わりうると考えられます。今回の研究は、そうした植生の変化が、当時の大きな気候変動を「早める方向」に働いていた可能性を示していると言えます。
遠い過去の研究が、なぜ今の気候危機とつながるのか
数百万年前の話だと聞くと、現在の気候問題とは無関係に思えるかもしれません。しかし、今回のような古気候と植生の研究は、今世紀の気候変動を考えるうえでも重要なヒントを与えます。
現代では、人間の活動によって植生が短期間で大きく変化しています。森林伐採や農地の拡大、都市化、逆に植林や自然再生の取り組みなど、土地利用の変化はあらゆる地域で進行中です。こうした変化は次のような形で、気候と結びつきます。
- 温室効果ガスの排出削減だけでなく、土地利用や植生のあり方も気候政策の重要な柱になる
- 大規模な植林や自然再生を行う際には、植える量だけでなく、どこに・どのような植生を増やすかが、地域と地球全体の気候への影響を左右する
- 都市や周辺地域の緑地計画も、局地的な気温や水循環に影響しうるため、長期的な視点が求められる
後期中新世の研究は、植生変化が長期的な気候の流れを加速させうることを示し、今の私たちが土地や森とどう向き合うかを考える材料にもなります。
中国科学院発の研究が示す、国際的な議論への一石
今回の研究は、中国科学院大気物理研究所の研究者らによるものです。国際的な科学誌である「Science Advances」に掲載されたことで、世界中の研究者がデータや議論を共有し、気候モデルの改良や地球システムの理解の深化に生かすことができます。
アジアから発信されるこうした古気候と気候変動に関する研究は、地域の視点をふまえつつ、地球規模の課題に貢献するものでもあります。とくに、アジアは人口や経済活動が集中し、土地利用や植生の変化が大きく進んでいる地域でもあるため、その知見は今後の政策や国際的な議論にとって無視できないものになっていくでしょう。
私たちがこのニュースから考えたいこと
今回の後期中新世に関する研究から、現代を生きる私たちが考えられるポイントをまとめると、次のようになります。
- 気候変動と生態系の変化は切り離せず、互いに影響し合う
- ゆっくりとした変化でも、条件がそろうと気候の急激な転換につながる可能性がある
- 人間の活動による植生の変化も、長期的には地球システム全体に影響しうる
日々のニュースでは、気温の上昇や極端な気象現象など「今起きている」気候変動に注目が集まりがちです。一方で、後期中新世のような遠い過去を扱う研究は、地球がどのようなメカニズムで変化してきたのかを教えてくれます。
地球規模の変化を長い時間軸でとらえながら、自分たちの暮らしや政策選択が植生と気候にどう影響するのかを考えることが、これからの時代の国際ニュースを読み解くうえでの新しい視点になりそうです。
Reference(s):
Vegetation changes accelerated climate shifts during late Miocene
cgtn.com







