中国とロシア、核保有国に冷戦思考の放棄を要請 米「Golden Dome」計画に懸念
核兵器をめぐる緊張が高まる中、中国とロシアが核保有国に「冷戦思考」と「ゼロサムゲーム」の発想を捨てるよう呼びかけ、米国のミサイル防衛構想などに強い懸念を示しました。
中国とロシア、共同声明のポイント
中国とロシアは、木曜日に発表した世界的な戦略的安定に関する共同声明で、核兵器を保有する国々には国際安全保障と世界の戦略的安定に対する特別な責任があると強調しました。そのうえで、次のような点を訴えています。
- 核保有国は、冷戦期のようなブロック対立を前提とした「冷戦思考」や、一方が得をすれば他方が損をするという「ゼロサムゲーム」の発想をやめるべきだと指摘。
- 核保有国は、戦略的リスクを引き起こすような措置を控え、互いの懸念を尊重しながら、対等な対話と協議を通じて信頼を高めるべきだと強調。
- 核兵器国同士の軍事衝突は断固として回避されるべきであり、既存の対立や違いは、互いの安全保障上の利益と懸念を認め合い、尊重しながら、政治的・外交的手段で解決する必要があると訴えています。
高まる核リスクと「絶対的な安全保障」への警戒
声明は、すべての核保有国がこうした立場に従っているわけではないと指摘し、核保有国間の緊張が高まり、直接的な軍事衝突に直面する事態にまで至っていると懸念を示しました。その結果、戦略分野での問題や課題が相次ぎ、核紛争のリスクが高まっているとしています。
また、声明は「ある核保有国」が同盟国の支援を得ながら、他の核保有国の戦略抑止力の信頼性と有効性を損なおうとしていると批判しました。これは、圧倒的な軍事的優位を追求し、最終的に「絶対的な戦略的安全」を実現しようとする動きだと指摘しています。共同声明は、こうした行動は戦略的均衡を維持するための基本的な論理に反し、「平等かつ不可分な安全保障」という原則にも逆行するとしました。
米国のミサイル防衛構想「Golden Dome」への懸念
共同声明は、米国が最近発表した「Golden Dome」計画を名指しで取り上げました。この計画は、さまざまなミサイルの脅威、特に能力が拮抗する相手からのミサイルに対しても対応できるよう、制約を受けない世界規模・多層的・多領域のミサイル防衛システムを構築することを狙っていると説明しています。
中国とロシアは、この計画が世界の戦略的安定に深刻な損害を与えると警告します。声明は、戦略攻撃兵器(攻撃用の核戦力など)と戦略防御兵器(ミサイル防衛など)の「切り離せない相互関係」を完全に否定するものであり、安定維持の中核原則に反すると批判しました。
さらに「Golden Dome」計画は、ミサイルやその関連施設を「発射前」に無力化することを目指し、運動エネルギー(物理的な破壊)と非運動エネルギー(物理的破壊を伴わない手段)の両方を用いてミサイルやその支援施設を攻撃し、発射前に無力化する研究開発を後押しすると指摘されています。
前方展開と軍事基地の拡大がもたらすリスク
声明はまた、特定の核保有国が他の核保有国の周辺の敏感な地域で、恒久的な軍事基地を新設・拡張したり、軍事力を誇示して圧力をかけたり、他国の中核的な安全保障上の利益を脅かす敵対的行動をとったりしていると批判しました。こうした動きが、直ちに対処すべき最も緊急の戦略的リスクの一つになっていると位置づけています。
加えて、軍事施設や高度な攻撃・防御能力を持つ兵器の前方展開が進んでいることが、深刻な懸念事項として挙げられました。
宇宙空間の軍事利用と商業衛星の問題
「Golden Dome」計画は、宇宙空間での戦闘能力を大幅に高めることも掲げているとされています。具体的には、軌道上でミサイルなどを迎撃するシステムの開発・配備を進め、宇宙空間を武器で満たし、大規模な武力対立の場に変えてしまう懸念が指摘されています。
中国とロシアは、特定の国が宇宙空間を武力対立の舞台として利用しようとする試みに反対し、軍事的優位の獲得を目的とする安全保障政策を拒否する立場を明確にしました。また、宇宙空間を「戦闘領域」と定義し利用する考え方も受け入れられないとしています。
さらに両国は、商業用の宇宙システムが主権国家の内政干渉や、他国が関与する武力紛争への介入に利用されていることを非難しました。民間の宇宙インフラが軍事的な目的に転用されることへの警戒感を示した形です。
米英豪の安全保障連携と南太平洋
共同声明は、米国・英国・オーストラリアによる三者の安全保障パートナーシップにも言及しました。両国によると、この枠組みを通じて、南太平洋非核地帯条約の締約国の領土内に、二つの核保有国が自らの核戦力を防護するための軍事施設を設けようとする動きがあるとしています。
声明は、こうした動きが地域の戦略的安定を損ない、南太平洋における軍拡競争を誘発しかねないと警告しました。核兵器を持たない地域に核関連の軍事インフラを持ち込むことへの強い懸念が示されています。
「建設的な大国関係」とは何か
声明全体を通じて、中国とロシアは、大国同士が建設的な関係を維持することの重要性を繰り返し強調しています。とりわけ、核保有国は自らの安全保障だけでなく、国際社会全体の安定に対して特別な責任を負っているというメッセージが込められています。
そのうえで両国は、互いの安全保障上の利益と懸念を対等に認め合い、尊重することが、誤った判断や危険なエスカレーションを避ける鍵だと訴えています。核抑止力の強化競争に走るのではなく、対話と協議を通じて信頼を築くべきだ、という立場です。
読み手に突きつけられる問い
今回の共同声明は、特定の国や計画を名指しで批判しながらも、「核戦争は絶対に避けねばならない」という点では、多くの人が共有しうる問題提起でもあります。
ミサイル防衛の拡大や宇宙空間の軍事利用、核抑止力の強化といった安全保障政策は、抑止力を高めて戦争を防ぐ方向にも働き得る一方で、相手国に脅威と受け止められれば、かえって軍拡競争や誤算のリスクを高める可能性もあります。
中国とロシアが呼びかける「冷戦思考からの決別」や「平等かつ不可分な安全保障」というキーワードをどう受け止めるか。日本を含む国際社会は、核兵器の存在を前提とした安全保障のあり方と、対話による信頼醸成のバランスをどのように取るべきなのか。読者一人ひとりにとっても、考えるきっかけとなるテーマと言えそうです。
Reference(s):
China, Russia call on nuclear powers to abandon Cold War mentality
cgtn.com








