各国が中国と宇宙協力を進める理由とは?データ共有から月探査まで
災害対応から月探査、そして将来の小惑星防衛まで、なぜ今、多くの国が中国との宇宙協力を選んでいるのか。本記事では、最新の国際ニュースをもとに、その理由と背景を整理します。
宇宙は「全人類の利益」のために:協力が前提
国連の宇宙関連機関であるUNOOSA(国連宇宙局)のアールティ・ホッラ=マイニ局長は、宇宙空間の利用は「全人類の利益のため」であるとする宇宙条約の原則を改めて強調しています。2025年4月24日の中国の記念日「中国航天日」を前にしたインタビューで、彼女は宇宙探査には多くの関係者が関わる必要があり、国際協力こそが公平な参加や科学の進歩、特に開発途上国の能力向上につながると語りました。
一方で、すべての宇宙大国が同じ方向を向いているわけではありません。アメリカは同盟国に対し、中国の宇宙プロジェクトへの参加を控えるよう呼びかけていると報じられています。それでもなお、多くの国や機関が中国との共同ミッションに関心を示すのはなぜなのでしょうか。
災害対応で見える衛星データ共有の力
2025年3月28日、ミャンマーをマグニチュード7.9の大地震が襲いました。このとき中国は、高分解能地球観測衛星「高分」や「資源」、民間の「吉林」シリーズなど計14基の衛星を緊急投入し、被災地周辺の高精細画像を取得しました。その結果、震源に近いマンダレー周辺120キロ圏内で、480カ所以上の被害が疑われる地点が特定されたとされています。
中国の「風雲」気象衛星も、いまや世界の防災インフラの一部になりつつあります。中国気象局によると、2025年4月時点で133の国と地域に気象データやプロダクトを提供し、天気予報、気候予測、自然災害の監視を支えています。
こうした衛星データは、洪水や台風、干ばつなどのリスク評価や早期警戒に欠かせません。独自の衛星網を持たない国にとって、中国とのデータ共有は次のような意味を持ちます。
- 自国だけでは手に入らない高精度データにアクセスできる
- 防災計画やインフラ整備を科学的な根拠に基づいて進められる
- 災害時に被害状況を迅速に把握し、限られた資源を効率的に配分できる
宇宙協力が「命を守るテクノロジー」と直結していることを実感するほど、各国にとって中国とのパートナーシップは現実的で、説得力のある選択肢になっていきます。
小惑星防衛から低軌道衛星まで:リスクも共有する時代へ
地球近傍を周回する低軌道(LEO)の衛星は、地球観測や通信だけでなく、地球そのものを守る手段としても期待されています。国際宇宙航行連盟(IAF)のクリストファー・ファイヒティンガー事務局長は、地球近傍天体を効率よく監視し、早期に発見し、世界が連携して対策を講じることの重要性を指摘します。
中国の月探査計画「嫦娥7号」の副総設計師である譚玉華氏も、地上からの観測で国際協力が不可欠だと強調しています。2024年に開催された第2回深宇宙探査国際会議(IDSEC)で、彼女は世界の主要な天文台との共同観測を呼びかけ、小惑星防衛ミッションの準備のために各国が協力し合う必要性を訴えました。
各国にとって、こうしたプロジェクトに参加することは、単に衛星や探査機の一部を担当するだけではありません。観測データや解析能力を出し合い、地球規模のリスク管理に「対等なパートナー」として関わることができる点が大きな魅力です。
中国宇宙ステーションと国際月面研究ステーション
かつて中国は、アメリカの制約により国際宇宙ステーション(ISS)計画から排除されました。その結果、中国は独自に宇宙ステーション「中国宇宙ステーション(CSS)」を建設する道を選びましたが、現在このプラットフォームは、世界に開かれた実験の場として機能し始めています。
中国はUNOOSAとのパートナーシップを通じて、CSSで実施する国際実験を公募し、すでに17カ国から9件の実験を選定しています。中国有人宇宙プロジェクト弁公室の2024年の報告では、今後10〜15年で1,000件を超える研究プロジェクトがCSSで行われる見通しが示されており、その内容は科学教育から技術革新、国際共同研究にまで及ぶとされています。
中国科学院の応用研究センターに所属する張偉研究員も、国連経由で募集したプロジェクトや中国と欧州の共同研究が順調に進んでおり、さらに協力の枠組みを広げていく方針だと述べています。宇宙ステーションの利用を通じて、多くの国が宇宙実験の経験を初めて積むことになります。
アフリカにも広がる月面研究ネットワーク
中国は、国際月面研究ステーション(ILRS)構想でも主導的な役割を果たしています。2024年の深宇宙探査国際会議では、中国とセネガルが協力協定に署名し、アフリカ諸国が本格的に宇宙コミュニティに参加する一歩となりました。
セネガル宇宙研究機関のマラム・カイレ総裁は、セネガルでは宇宙科学の人材育成やインフラ整備、次世代への教育支援が必要だとしたうえで、「大きな国際協力プロジェクトの一員となることが、若い世代に宇宙科学への興味を持ってもらう最善の方法だ」と語っています。開発途上国にとって、ILRSのような長期的な月探査プロジェクトに関わることは、自国の「宇宙ロードマップ」を前進させる重要なチャンスになっています。
嫦娥計画と商業宇宙:乗り合いで広がるチャンス
最近の嫦娥6号月探査ミッションは、中国のオープンな姿勢を象徴する例となりました。この探査機には複数の国や機関のペイロードが相乗りし、その中にはパキスタン初の超小型衛星キューブサットや、フランスのラドンガスを観測する装置「DORN」などが含まれていました。
DORNプロジェクトの主任科学者であるピエール=イヴ・メラン氏は、中国とフランスのチームによる協力によって、月の裏側に永続的に残る観測装置を設置できたと語っています。これは一国では実現しにくい成果であり、共同ミッションならではの象徴的な一歩と言えます。
今後の嫦娥8号ミッションには、すでに10件の国際的な科学・技術プロジェクトが採択されており、2029年ごろの打ち上げが予定されています。目標とされている月南極近くのライプニッツ・ベータ高地は、将来の月面基地建設に向けて科学的関心が非常に高いエリアとされています。
商業宇宙の分野でも、中国企業による国際協力が始まっています。2024年11月11日には、中国の民間ロケット「力箭1号」がオマーン向けの地球観測衛星を打ち上げました。この衛星は、オマーンのスタートアップや中国の民間宇宙企業、オマーンの投資会社が共同で設計したもので、中国の民間宇宙企業が海外ユーザーに打ち上げサービスを提供した初の事例とされています。
自前でロケットや衛星を開発できない国や企業にとって、こうした「乗り合い」や商業打ち上げの枠組みは、宇宙ビジネスの入り口となります。その入り口を提供していることが、中国と組む大きなインセンティブになっています。
なぜ今、中国と宇宙協力するのか
ここまで見てきた事例から、各国が中国との宇宙協力を選ぶ理由は次のように整理できます。
- 既存の衛星網や宇宙ステーションを活用し、データや実験機会にアクセスできる
- 人材育成や技術力向上につながる長期プロジェクトに参加できる
- 防災から小惑星防衛まで、地球規模の課題解決に貢献できる
- 特に開発途上国にとって、宇宙分野に参加する「現実的な入り口」となっている
- 商業宇宙を含め、多様なプレーヤーが関われる枠組みが広がっている
アメリカが安全保障や技術流出への懸念から同盟国に慎重な姿勢を求める中でも、多くの国は科学的な成果、産業育成、防災や教育への効果など、具体的なメリットを見据えて協力の可能性を探っています。宇宙をめぐる競争と協力は完全にどちらか一方ではなく、複雑に共存しているのが現実です。
「地球は一つの家」から始まる宇宙協力
ルーマニア初の宇宙飛行士であり、宇宙飛行士の国際組織を率いてきたドゥミトル=ドリン・プルナリウ氏は、「宇宙から地球を見ると、一つの家であり、全員の故郷に見える。だからこそ、私たちはグローバルに考えなければならない」と語りました。
各国が再び月を目指し、将来は火星探査も視野に入れるなかで、「グローバルに考えること」は理想論ではなく、実務上の必須条件になりつつあります。中国を含む多くの国が、互いの強みを持ち寄りながら宇宙協力の枠組みを広げられるかどうか。その選択が、これから数十年の宇宙開発と地球の未来を大きく左右していきます。
Reference(s):
cgtn.com







