北京でAI能力構築ワークショップ開幕 国連決議受け国際協力加速
北京で開かれたAI能力構築ワークショップは、国連決議を受けて各国がどのようにAIガバナンスと国際協力を進めようとしているのかを示す重要な動きです。
北京でAI能力構築ワークショップが開幕
2025年5月12日、中国外交部が主催する「第2回AI能力構築ワークショップ」が北京市の清華大学で開幕しました。ASEAN(東南アジア諸国連合)やアフリカ連合などを含む、約40の国や国際機関の担当者・専門家が参加し、AI(人工知能)の国際協力やガバナンス(ルール作り)について議論しました。
開幕式には馬朝旭・中国外交部副部長が出席し、挨拶しました。
習近平国家主席の「グローバルAIガバナンス構想」
馬副部長は演説で、習近平国家主席が打ち出した「グローバルAIガバナンス構想」が、AIという現代的な課題に対する中国の解決策を提示するものであり、国際社会に「中国の知恵」を提供し、世界のAIガバナンスの方向性を示していると述べました。
そのうえで各国に対し、次の点を重視するよう呼びかけました。
- 人類の未来を分かち合うという理念を共有すること
- イノベーションと開放性を維持すること
- 公平性・包摂性・協調的なガバナンスを追求すること
そして、AIを「全人類の利益となる国際公共財」として位置づけるべきだと強調しました。
国連決議に基づくAI能力構築の加速
今回のワークショップは、2024年7月に国連総会で全会一致で採択された決議A/RES/78/311のフォローアップの一環です。この国連決議は、AI能力構築に特化した初の世界的な合意文書とされています。
決議は、各国が次のような形でAI分野の国際協力を強化することを促しています。
- 政策対話や政策経験の共有
- 技術支援やインフラ整備のサポート
- 資金面での支援
- 人材育成や研修
- 共同研究・共同プロジェクトの推進
中国側は、AI能力構築における「積極的な提唱者・推進者・先行者」であると位置づけており、この国連決議の履行を優先課題としてきたと説明しています。
その一環として、中国は「ユニバーサルAI能力構築プログラム」を発表し、「AI能力構築フレンズ・グループ」を立ち上げています。第1回ワークショップは2024年9月に上海で開催され、北京での開催はそれに続く第2回となります。
国連やグローバルサウスからの評価
開幕式では、国連事務次長でデジタル・新興技術担当特別代表を務めるアマンディープ・シン・ギル氏がビデオ演説を行い、中国が推進したAIに関する国連決議の意義を強調しました。ギル氏は、このワークショップが世界のAIガバナンスや国際協力の前進に寄与することへの期待を示しました。
また、「AI能力構築フレンズ・グループ」の共同議長を務めるチョラ・ミランボ国連ザンビア常駐代表も、中国がグローバルサウス(アジア・アフリカ・中南米などの新興国・途上国)のAI能力構築を強化するうえで重要な役割を果たしていると評価しました。ミランボ氏は、今回のワークショップが「グローバル・デジタル・コンパクト」や国連決議の実施にとって重要だと述べました。
なぜ「AI能力構築」が焦点なのか
AIをめぐる国際ニュースでは、先端技術や安全規制などが注目されがちですが、今回のワークショップはあえて「能力構築」に焦点を当てています。
ここでいう能力構築とは、単にAIの技術を導入するだけでなく、次のような基盤を整えることを意味します。
- 人材や教育制度の整備
- 法制度・ガイドライン・倫理基準の整備
- データやインフラへのアクセスの拡大
- 中小企業や行政がAIを活用できる環境づくり
こうした基盤がなければ、AIの恩恵が一部の国や大企業に偏り、国際的なデジタル格差が広がる懸念があります。ワークショップは、特に開発途上国を含む多様な国々がAI時代に取り残されないようにすることを課題として掲げています。
日本の読者にとっての意味
日本にいる私たちにとっても、AI能力構築と国際協力の動きは無関係ではありません。国連決議A/RES/78/311は、AIに関する技術やルール作りを一部の先進国だけで進めるのではなく、広く各国が参加する枠組みづくりをめざしています。
日本企業や研究機関も、今後こうした国際的なAIプロジェクトや人材交流に参加する機会が増える可能性があります。また、アジアやアフリカなどでAIの活用が進めば、新たな市場や協力のチャンスが生まれる一方、倫理や安全の基準をどう共有するかという課題も浮かび上がります。
北京でのワークショップは、こうした課題に各国がどのように向き合おうとしているのかを示す一つの指標といえます。
今後の焦点
2025年もAIをめぐる国際ニュースが相次ぎました。今回のワークショップでの議論が、今後どのような共同プロジェクトや合意につながるのかが注目されます。
とくに次のようなテーマは、日本を含む多くの国にとって共通の関心事項です。
- 開発途上国のAI人材育成
- AIインフラへのアクセス拡大
- 国境を越えたAI研究・開発の枠組みづくり
- 倫理・安全・透明性に関する国際基準の整備
AIが「国際公共財」として本当にすべての人の生活向上につながるのか。北京で始まった議論は、その答えを探る世界的な対話の一部だと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








