習近平主席が中国・CELACフォーラムで基調演説 中南米と「5つのプログラム」提案
2025年5月13日、中国の習近平国家主席は北京で開かれた第4回中国・CELAC(ラテンアメリカ・カリブ海諸国共同体)フォーラム閣僚会合の開会式で基調演説を行い、中国とラテンアメリカ・カリブ海地域(LAC)の関係を「新たな章」へ進める構想を示しました。今年12月に入った今も、この演説で打ち出された方針は、中国と中南米の関係を考えるうえで重要な手がかりとなっています。
フォーラム10年、中国と中南米の関係をどう位置づけたか
習主席は冒頭、2015年に北京で第1回閣僚会合が開かれてからの10年で、中国・CELACフォーラムが「小さな苗木から大木へと成長した」と述べ、これまでの歩みを振り返りました。
中国とLAC地域の交流は、16世紀の「中国船(Nao de China)」による太平洋横断の交易にさかのぼるとしたうえで、1960年代以降、新中国と中南米諸国との外交関係樹立を通じて交流と協力が深まってきたと強調しました。21世紀に入り、とくに近年は「共に未来を築く歴史的な時代」に入ったと位置づけています。
これまでの協力を象徴する4つの側面
演説の前半で、習主席は中国とLAC諸国の関係を象徴する4つの側面を挙げました。
- 政治面での相互支持:LAC諸国が長年にわたり「一つの中国」原則を支持していることに謝意を示し、中国は各国が自国の国情に合った発展の道を歩み、主権と独立を守り、外部からの干渉に反対する取り組みを支持すると述べました。1960年代に中国国内で行われたパナマ運河の主権をめぐるパナマの人々への連帯行動や、1970年代の「200カイリ」海洋権益を求める動きへの支持、1992年以降32回連続で対キューバ禁輸措置の終結を求める国連総会決議に賛成してきたことなどを具体例として挙げました。
- 経済・インフラ協力の拡大:経済のグローバル化の流れの中で、中国とLAC諸国は貿易、投資、金融、科学技術、インフラなど幅広い分野で協力を深めてきたと説明しました。一帯一路(ベルト・アンド・ロード)協力の枠組みのもとで、両者は200を超えるインフラ事業を実施し、100万人以上の雇用を生み出したとしています。衛星協力は「ハイテク分野の南南協力のモデル」とされ、ペルーのチャンカイ港の稼働はアジアと南米を結ぶ新たな物流ルートになったと紹介しました。また、中国はチリ、ペルー、コスタリカ、エクアドル、ニカラグアと自由貿易協定を結び、中国とLACの貿易額は昨年、初めて5,000億ドルを超え、21世紀初頭の40倍以上になったと述べています。
- 危機対応での相互支援:自然災害や感染症などの危機への協力も強調しました。中国は1993年以降、38の医療チームをカリブ海地域に派遣してきたとしたうえで、新型コロナウイルスの世界的流行時には、LAC諸国に3億回分以上のワクチンと約4,000万点の医療物資・機器を提供し、複数の専門家チームも派遣したと説明しました。
- 地球規模課題への連携:中国とLAC諸国は「真の多国間主義」を掲げ、国際的な公正と正義を守り、国際ガバナンス改革や世界の多極化、国際関係の民主化を推進していると位置づけました。気候変動や生物多様性などの課題で協力しているほか、中国とブラジルが発表したウクライナ危機の政治的解決に向けた6項目の共通認識が、110を超える国々から支持を得たことにも言及しました。
「グローバル・サウス」の一員としての問題意識
習主席は現在の国際情勢について、「世紀単位の大きな変動」が加速し、複数のリスクが絡み合う中で、各国の団結と協力が平和と安定、発展と繁栄のために不可欠だと指摘しました。そのうえで、
- 関税戦争や貿易戦争に勝者はいないこと
- いじめや覇権主義は、最終的に自らを孤立させること
などを挙げ、保護主義やブロック化への懸念をにじませました。
中国とLAC諸国はいずれも「グローバル・サウスの重要な一員」として、独立と自主は誇るべき伝統であり、発展と振興は当然の権利、公平と正義は共通の追求だと位置づけています。そのうえで、中国はLAC諸国と共に「共有の発展と振興を進める5つのプログラム」を打ち出し、「中国・LACの運命共同体」の構築を進める考えを示しました。
今後3年に向けた「5つのプログラム」
1. 連帯プログラム:政治対話と多国間協調の強化
連帯プログラムでは、中国とLAC諸国がそれぞれの核心的利益と重大関心事項で互いを支持し合うことを掲げました。国家ガバナンス(統治)の経験交流を進めるため、今後3年間、CELAC加盟国の政党関係者300人を毎年中国に招待する方針を示しました。
また、LAC諸国が多国間の場で影響力を高める努力を支持するとし、国連を中心とする国際システムと国際法に基づく国際秩序を共に守り、国際・地域問題で「一つの声」で発信していくと強調しました。
2. 発展プログラム:一帯一路と新分野の協力拡大
発展プログラムでは、グローバル発展イニシアチブをLAC諸国と共に実行に移し、多国間貿易体制を守りつつ、サプライチェーンの安定と円滑化、開かれた国際経済環境づくりを進めるとしました。
具体的には、
- 各国の発展戦略と中国の構想との連携強化
- 一帯一路協力の拡大と、インフラ・農業と食料・エネルギー・鉱物といった伝統分野での協力強化
- クリーンエネルギー、5G通信、デジタル経済、人工知能など新分野での協力拡大
- 中国・LAC科学技術パートナーシップの展開
などを掲げました。さらに、中国はLAC諸国から質の高い製品の輸入を増やし、中国企業によるLAC地域への投資を促すとともに、人民元660億(RMB66 billion)規模の信用枠を設けてLAC諸国の発展を支援するとしています。
3. 文明プログラム:文化・学術交流の深化
文明プログラムでは、グローバル文明イニシアチブを共に推進し、文明間の平等、相互学習、対話、包摂の理念を掲げるとしました。平和、発展、公平、正義、民主、自由といった「人類共通の価値」を尊重しつつ、中国とLACの文明交流を深めることを目指します。
具体的には、
- 中国・LAC文明間対話会議の開催
- 文化・芸術交流の強化と、「ラテンアメリカ・カリブ芸術シーズン」の開催
- 共同発掘や遺跡保護・修復、博物館展示など文化遺産分野での協力
- 古代文明に関する共同研究や、文化財不法取引への対抗での協力
といった構想が示されました。
4. 平和プログラム:安全保障と治安協力
平和プログラムは、グローバル安全保障イニシアチブの実行を柱としています。中国は、ラテンアメリカ・カリブ地域を「平和の地帯」とする宣言や、中南米・カリブにおける核兵器禁止機関加盟国の宣言を支持すると表明しました。
そのうえで、
- 災害ガバナンス
- サイバーセキュリティ
- テロ対策
- 腐敗防止
- 麻薬対策や国際組織犯罪への対処
などの分野で協力を強化し、地域の安全と安定を守るとしています。中国は、CELAC加盟国のニーズに合わせた治安・法執行分野の研修を実施し、必要な装備支援にも取り組むとしました。
5. 人的・文化交流プログラム:奨学金とビザ免除の拡大
人的・文化交流を扱う「人と人とのつながりプログラム」では、今後3年間でCELAC加盟国に対し、
- 政府奨学金3,500件
- 中国での研修機会1万件
- 国際中文教師奨学金500件
- 貧困削減分野の専門家研修300件
- 「漢語橋」プログラムを通じた1,000件の派遣枠
などを提供する計画を示しました。あわせて、300件の「小さく美しい」民生プロジェクトを立ち上げ、魯班工坊(職業教育に関する協力プログラム)などの職業教育協力、中国語教育の支援も進めるとしています。
文化・メディア面では、「The Bond」の名称で中国映画・テレビ作品の展示を行い、中国とLAC双方で毎年10本の優良テレビドラマやオーディオビジュアル作品を相互に翻訳・紹介する計画です。観光対話も実施し、人的往来を促進するため、まず5カ国のLAC諸国に対するビザ免除を導入し、状況に応じて対象国を拡大していく方針を打ち出しました。
「友は財産」——演説の締めくくりに込められたメッセージ
演説の終盤で習主席は、11世紀の中国の詩人の言葉として「人生の最大の喜びは、心を通わせる友を得ることにある」と引用し、ラテンアメリカのことわざ「友を持つ者は宝を持つ者である」にも触れました。
そして、「たとえ世界がどう変わろうとも、中国は常にLAC諸国の良き友人、良きパートナーであり続ける」と述べ、中国とLAC諸国がそれぞれの近代化の道を歩みながら、「中国・LAC運命共同体」の新たな章を書き進めようと呼びかけて演説を締めくくりました。
日本の読者にとっての読みどころ
今回の演説は、中国と中南米・カリブ地域との関係をどのような枠組みでとらえ、今後3年間で何を優先しようとしているのかを示すものです。日本の読者の視点から見ると、少なくとも次の点が注目されます。
- 協力分野の広がり:インフラや貿易だけでなく、デジタル技術、文化財保護、治安協力、人的交流など、多層的な協力をパッケージとして提示している点。
- 人的交流のスケール:奨学金や研修、ビザ免除などを通じて、学生や専門家、観光客など人の往来を重視している点。
- 「グローバル・サウス」連携の文脈:中国とLAC諸国が自らをグローバル・サウスの一員と位置づけ、国際秩序やグローバル課題への対応で歩調を合わせようとしている点。
中南米・カリブ地域は、日本からは地理的にも心理的にもやや遠い存在になりがちです。しかし、中国とLAC諸国の関係がどのように深まっていくのかは、国際秩序の変化を理解するうえでも無視できないテーマになりつつあります。今回の演説は、その流れを読み解く一つの手がかりと言えそうです。
Reference(s):
Full text: Xi's speech at 4th ministerial meeting of China-CELAC Forum
cgtn.com








