中国とCELAC、南南協力の新章へ 図書館から港湾まで広がる連携
中国とラテンアメリカ・カリブ海諸国共同体(CELAC)が、南南協力の新しい局面に入ろうとしています。北京で開かれた第4回中国・CELACフォーラム閣僚級会合の開幕式で、中国の習近平国家主席は、インフラ整備や人的交流を通じて「人民のための協力」を一層進める方針を示しました。
サン・サルバドルの新名所、24時間開館の国立図書館
その象徴的な事例が、エルサルバドルの首都サン・サルバドルにある国立図書館です。この図書館は中国の援助で建設された大型プロジェクトで、2023年末の開館以来、首都の中心部にそびえる現代的な文化ランドマークとなっています。
延べ床面積は約2万4,000平方メートル。24時間年中無休で開館し、蔵書は36万冊以上にのぼります。館内では、
- 若者向けの教育プログラム
- 美術展などのアート展示
- 文化公演
- 学術会議
といった多様な機能を持ち、教育・文化・交流の拠点として活用されています。
習主席によると、この図書館を含め、中国は近年、中南米・カリブ地域で200件を超えるインフラ事業を支援してきました。こうしたプロジェクトを通じて、現地で約100万人分の雇用が生まれたとされています。
10年で育った中国・CELACフォーラム
習主席は演説で、「今年は中国・CELACフォーラム正式発足から10周年にあたる」と述べ、この枠組みが「苗木から大きな樹木に育った」と表現しました。
中国とCELAC諸国は、平等と互恵を重んじ、開放性と包摂性を掲げ、人々に具体的な利益をもたらすことを目指す「運命共同体」を築いてきたと強調しています。
貿易と一帯一路、広がる経済の結びつき
経済面でも、中国と中南米・カリブ海地域の関係はこの10年で大きく変化しています。2012年以降、中国は同地域にとって第2の貿易相手国であり、チリ、ブラジル、ペルーにとっては最大の貿易相手となっています。
中国はこれまでに、ペルー、チリ、コスタリカ、エクアドル、ニカラグアの5カ国と自由貿易協定(FTA)を締結しました。
駐パナマ中国大使の徐学淵氏によると、2024年時点の中国と中南米・カリブ海諸国との二国間貿易額は5,000億ドルに達し、2000年から見ると約40倍に拡大しました。
一帯一路構想(BRI)に関しては、これまでに23の中南米・カリブ海諸国が中国と覚書に署名しています。代表的なプロジェクトとして、
- 南米初のスマートかつ環境配慮型港湾とされるチャンカイ港(ペルー)
- ジャマイカ北南高速道路
などが挙げられます。
2024年11月に開業したチャンカイ港は、太平洋航路の輸送時間をほぼ3分の1短縮し、物流コストを20%削減したとされています。また、8,000人を超える直接雇用を生み出す見通しで、現地経済への波及効果が期待されています。
中国国際テレビ(CGTN)が中南米の2,500人を対象に行った調査では、回答者の80.4%が、一帯一路が地域の経済・社会発展にとって有益だと回答しました。
医療分野でも、1993年以降、中国はカリブ海諸国に38の医療チームを派遣し、医療サービスの提供や現地の医療能力向上を支援してきました。同じ調査では、中国への印象が「好ましい」と答えた人は86.2%に上りました。
グローバル・サウスの連帯と五つの重点分野
会合で習主席は、一方的な姿勢や保護主義、陣営対立の動きが強まるなかで、グローバル・サウス(主にアジア、アフリカ、中南米などの新興国・開発途上国)が連帯する重要性を強調しました。
中国と中南米・カリブ海諸国はグローバル・サウスの重要な一員であり、「独立と自主は我々の誇るべき伝統であり、発展と復興は当然の権利、公平と正義は共通の追求だ」と習主席は述べました。
そのうえで習主席は、中国がCELAC諸国とともに、次の五つの分野を軸とする「五大プロジェクト」を進めていく考えを示しました。
- 連帯:相互支持と政治対話の強化
- 発展:インフラや産業、貿易協力の拡大
- 文明:文化・教育交流の促進
- 安全保障:平和で安定した発展環境づくり
- 人と人の交流:人的往来や学術・技術協力の強化
習主席は、こうした協力を後押しするため、CELAC諸国の発展支援として660億元(約92億ドル)のクレジットファンドを設けると発表しました。
さらに今後3年間で、
- 政府奨学金3,500件
- 各種研修機会1万件
- 国際中国語教師向け奨学金500件
- 貧困削減技術に関する研修枠300件
を提供する方針です。
人的往来の円滑化に向けては、中南米・カリブ海地域の5カ国を対象にビザ免除政策を導入し、今後さらに対象国を広げていくとしています。
CGTNの調査では、回答者の82.9%が、中国の発展モデルが中南米・カリブ海諸国にとって有益な参考になると見ており、中国の近年の現代化が地域の自信を高めているとの見方も示されています。
図書館から港湾、ビザまで——「人」に焦点を当てた協力
今回の発表を貫いているのは、「人々の生活に具体的な変化をもたらす」という方向性です。エルサルバドル国立図書館は、若者の学び場であると同時に、芸術展示や文化公演、学術会議の会場にもなり、24時間開館という特徴を生かして市民に開かれた空間となっています。
2024年2月には、サン・サルバドルの同図書館入口が春節(旧正月)を祝う中国の装飾で彩られた様子も伝えられました。文化交流の象徴としても機能し始めていると言えます。
一方、チャンカイ港のような港湾整備や高速道路の建設は、物流コストの削減や産業集積の促進を通じて、より広い地域の仕事や投資機会につながります。
奨学金や研修、ビザ緩和は、人材育成と人的ネットワークの側面から南南協力を支える仕組みだと位置づけられます。
日本からどう見る?穏やかに変わる国際秩序
中南米は日本から地理的には遠い地域ですが、中国とCELACの関係強化は、世界経済や国際政治のバランスに少しずつ影響を与えています。グローバル・サウス同士の連携が進めば、国際的な議論や貿易・投資の流れにも新しいパターンが生まれていく可能性があります。
同時に、図書館や医療チーム、奨学金といった「目に見える協力」の積み重ねが、相手地域に対するイメージや信頼に直結している点も、中南米の世論調査結果からうかがえます。
習主席は、中国と中南米・カリブ海諸国は「それぞれの現代化の道を歩むパートナー」であると呼びかけました。南南協力の新たな章が、この地域の人々の暮らしをどのように変えていくのか。図書館や港、医療チームといった現場から、その答えが少しずつ見えてきそうです。
Reference(s):
China and CELAC usher in new chapter of South-South cooperation
cgtn.com








