4億人超が参加、中国のアウトドアブームが農村を変える
中国で4億人以上がアウトドアスポーツを楽しむようになり、農村や地方都市の景色が静かに変わり始めています。四川省や甘粛省などでは、自然と観光、スポーツを組み合わせた地域づくりが進み、新たな産業と雇用の芽が育ちつつあります。
4億人超がアウトドアを楽しむ中国
中国では、自然の中で体を動かすアウトドアスポーツが大きな広がりを見せ、参加人口は4億人を超えています。アウトドア産業には巨大な成長余地があるとみられ、国の政策もその後押しをしています。
今年4月には、国家発展改革委員会や国家体育総局など複数の政府部門が連名で通知を出し、各地の地方政府に対して「質の高いアウトドアスポーツ目的地」を整備し、新たな経済成長の柱を育てるよう呼びかけました。文化、スポーツ、観光資源を一体的に活用することがポイントです。
四川省・彭州 山と水を生かしたオールテレイン拠点
中国南西部の四川省彭州市は、その動きの象徴的な存在です。豊かな山並みと清流に囲まれた地形を生かし、「オールテレイン(あらゆる地形)」のアウトドアスポーツ拠点づくりを進めています。
すでに、パラグライダーやジップライン(滑空ロープ)といったアクティビティが整備され、成熟したスポーツの「マトリクス(組み合わせ)」が形成されつつあります。さらに、ラフティングやロッククライミング、ラペリング(ロープを使って崖を下りるスポーツ)といった新しい種目の開発も加速しています。
村人が語る「山の暮らし」の変化
彭州市の宝山村に暮らす黄暁龍さんは、変化をこう振り返ります。「以前、私たちの屋外での活動はとても伝統的で、主にハイキングだけでした。今では、アウトドアスポーツの発展によって、たくさんの新しいプロジェクトができました。その結果、多くの若い村人がふるさとに戻って働くようになっています」と話します。
アウトドアスポーツが増えたことで、インストラクターやガイド、飲食や宿泊といった仕事が生まれ、これまで都市部に出て行っていた若者がUターンするきっかけにもなっているといえます。
甘粛省・酒泉 ゴビ砂漠が「挑戦の舞台」に
一方、中国北西部の甘粛省酒泉市では、広大なゴビ砂漠の景観を生かしたアウトドアスポーツが注目を集めています。およそ20年前に始まったゴビ砂漠での長距離耐久レースのシリーズをきっかけに、国内外の愛好家が集まるようになりました。
ゴビ・チャレンジと呼ばれるイベントの創設者である曲向東さんは、「私たちは単にイベントを開催しているわけではありません。この土地に何か意味のあるものを残したいのです」と地元メディアに語っています。砂漠という過酷な自然環境を舞台にしながらも、その土地への敬意や長期的なまちづくりの視点が重ねられていることがうかがえます。
アウトドアスポーツが地方にもたらす三つの効果
こうした中国各地の事例からは、アウトドアスポーツが農村や地方都市にもたらしうる効果が見えてきます。
- 経済の多角化:農業中心だった地域で、観光・サービス産業という新しい収入源が生まれる可能性があります。
- 雇用と人の流れの変化:若者が地元に戻り、地域で働き続ける選択肢が増えることで、人口流出の緩和が期待できます。
- 自然と文化資源の再発見:地元の山や川、砂漠といった自然環境が「資源」として見直され、保全への意識が高まるきっかけにもなります。
これから問われる「質」と持続可能性
一方で、アウトドアスポーツの急速な広がりは、環境負荷や安全管理など新たな課題も伴います。高品質なアウトドアスポーツ目的地づくりには、次のような視点が欠かせません。
- 自然環境との共生:参加者数を追うだけでなく、ゴミ問題や生態系への影響を抑える仕組みづくり。
- 安全とルールづくり:初心者でも安心して楽しめるよう、ガイドの育成やコース整備、緊急時対応の体制を整えること。
- 地域住民の主体性:外部の企業任せにせず、村人や地元の若者が企画や運営に関わり、利益が地域に還元される仕組み。
中国で進むアウトドアスポーツの拡大は、単なるレジャーブームにとどまらず、農村の暮らし方や地方経済のあり方を静かに変えつつあります。自然のポテンシャルをどう生かし、いかに長く持続させていくのか──四川省や甘粛省の動きは、同じように地方の可能性を模索する日本やアジア各地にとっても、参考になるヒントを与えてくれそうです。
Reference(s):
Over 400m Chinese embrace outdoor sports, driving rural growth
cgtn.com







