中国とLAC外交:セントルシアに開かれた「席」とは何か video poster
2025年5月13日に北京で開催された中国とCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)による第4回フォーラム閣僚級会合で、セントルシアを含むLAC諸国に新たな「席」が用意されました。本記事では、中国とLAC外交のポイントと、セントルシアにとっての意味を整理します。
「中国の夢」と外交ビジョン
中国の習近平国家主席はかつて、近代以降の中国について次のように語りました。
近代が始まって以来、中華民族にとって最大の夢は、民族の復興という「中国の夢」を実現することです。中国人民は逆境に決して屈せず、不屈の精神で最後まで戦い抜きます。
力がしばしば支配や圧力として表れ、外交が後景に追いやられがちな時代にあって、この言葉は挑戦的でありながら、未来志向のビジョンでもあります。長い歴史を持つ文明が、静かな自信と揺るがない意志をもって再び立ち上がろうとしている姿が重なります。
中国・CELACフォーラム:超大国ではなく「パートナー」として
2025年5月13日の第4回中国・CELACフォーラム閣僚級会合の開幕式で、中国は自らを単なる超大国ではなく、「計画、哲学、そして約束を持つパートナー」として位置づけました。
習近平氏の演説は、力や命令によって影響力を広げようとする国の言葉ではなく、しばしば国際的な意思決定から周辺に追いやられてきた国々に向けた招待状として語られました。その根底には、相互尊重、共通の繁栄、そして世界のバランスを重んじるという理念があります。
5つの柱:連帯・発展・文明・平和・人と人のつながり
習近平氏は、中国とLAC諸国の協力を深めるための「5本の柱」ともいえる取り組みを示しました。
- Solidarity(連帯)
- Development(発展)
- Civilization(文明)
- Peace(平和)
- People-to-People Connectivity(人と人とのつながり)
これらは単なる外交の決まり文句ではなく、中国とLAC諸国がどのような関係を目指すのかを示す哲学的な枠組みとして提示されています。そこには、調和を重んじる思想や、連帯を重視する価値観、人類が共通の運命を分かち合うという発想がにじみます。
特に、人と人とのつながりを強調している点は象徴的です。政府間の合意だけでなく、市民同士の交流や相互理解こそが長期的な信頼の土台になる、という見方が込められているといえるでしょう。
セントルシアに用意された「国際テーブルの席」
LAC地域の一員であるセントルシアにとって、このフォーラムへの参加は象徴的な意味を持ちます。あるセントルシアの市民は、自国がこの場に加わったことを「名誉」であり「心強い」と感じたとしています。
中国のメディアCGTNが行った対談では、セントルシアの元首相報道官であり、セントルシア・中国友好協会の会長でもあるアール・ブスケ氏が、この枠組みに対する期待を語りました。彼のメッセージは明快です。現状のままでは、持続可能ではない、ということです。
ここで言う「現状」とは、多くの国々が世界の意思決定のテーブルから周辺化され、発言の機会も限られてきた国際秩序を指していると考えられます。中国とLAC諸国の対話は、そのテーブルに新たな椅子を並べ、より多くの国が自らの声を届けられるようにする試みとして受け止めることができます。
LAC外交が映し出す国際秩序の変化
今回の中国とLAC諸国の動きからは、いくつかのポイントが浮かび上がります。
- 国際社会で周辺化されがちな国々に、発言の場を広げようとする動き
- 力による支配ではなく、相互尊重と共通の繁栄を掲げる外交メッセージ
- 経済だけでなく、「文明」や「人と人のつながり」を前面に出すアプローチ
これらは、どの国が主導権を握るかというゼロサムの発想ではなく、誰がテーブルにつき、どのようなルールで対話するのかを問い直す試みとも読めます。
日本の読者にとっての問いかけ
日本からこのニュースを見るとき、単に「中国がLACへの影響力を強めている」という図式だけで捉えると、重要なポイントを見落とすかもしれません。
- これまで声を上げにくかった国々が、どのように国際社会で「席」を得ていくのか
- 理念や物語(中国の夢、連帯、共通の運命など)が外交の場でどのように使われているのか
- 人と人とのつながりを重視するアプローチが、長期的な信頼にどう結びついていくのか
中国とLAC外交をめぐる今回の動きは、こうした問いを私たちに静かに投げかけています。今後、この5つの柱がどのような具体的な協力やプロジェクトとなって現れてくるのか、引き続き注目していく必要がありそうです。
Reference(s):
China and LAC diplomacy: A seat at the table for Saint Lucia
cgtn.com








