山火事で森林回復力が世界的に低下 7年以内に再生できたのは3割未満
21世紀の大規模な山火事の後、世界の森林が自力でどれだけ回復できているのか――。新たな国際研究によると、火災から7年以内に元の状態へ十分に再生できた森林は、焼失した地域の3分の1に満たないことが分かりました。地球規模で森林の「回復力」が静かに失われつつあることを示す結果です。
国際チームが示した「森林回復力の劣化」
この研究は、中国本土と海外の科学者による国際チームがまとめ、学術誌「Nature Ecology & Evolution」に掲載されました。研究チームは、世界各地で起きた3,281件の大規模な山火事を対象に、火災後の森林の回復状況を分析しました。
分析の結果、21世紀に発生した大規模火災の後、7年間で十分に回復できた森林は、全体の3割未満にとどまることが明らかになりました。つまり、一度大きな火災に見舞われた森林の多くが、「元に戻れないまま時間が過ぎている」ということです。
研究の概要:3,281件の山火事を全球スケールで解析
研究は、北京師範大学のChen Ziyue氏、中国科学院地理科学と資源研究所のWu Zhaoyang氏、スペイン・バルセロナ自治大学のJosep Penuelas氏らが率いるチームによって行われました。気候帯や時期の違いを考慮しながら、「どのような条件のときに森林は回復しやすいのか」を詳細に調べています。
- 対象:世界各地の大規模山火事 3,281件
- 方法:衛星データなどを組み合わせたハイブリッドな解析手法
- 焦点:気候帯・時期ごとの森林回復の要因と、その変化の傾向
これにより、地域ごとの違いだけでなく、時間の経過とともに森林の「回復の仕方」そのものが変わってきていることが浮き彫りになりました。
2010年以降、火災は激化し回復は鈍化
研究チームが特に注目したのは、2010年以降の変化です。大規模火災の「激しさ」(焼損の深刻さ)と、その後の森林回復の関係が、それ以前と比べて大きく変わっていました。
主なポイントは次のとおりです。
- 2010年以降、乾燥地域では大規模火災の中程度の激しさが42.9%増加
- 亜寒帯(ボレアル)地域では、火災の激しさが54.3%増加
- 特に影響が大きかった地域:北米西部、シベリア北中部、オーストラリア南東部
一方で、森林の回復状況は悪化しています。火災後に回復が「停滞」したままの地域の割合は、2010年以前の22.6%から、2010年以降は25.6%へと増加しました。特に、樹冠(樹木の上部の葉や枝の層)の構造や、森林の生産性(光合成などによる物質生産)の回復が難しくなっていると報告されています。
数字で見る森林回復力の低下
- 火災後7年で十分回復した森林:3分の1未満
- 回復が停滞した地域:22.6% → 25.6%に増加
- 火災の激しさ:乾燥地域で約43%、ボレアル地域で約54%の増加
研究はまた、森林の「レジリエンス(回復力)」が、火災の激しさに対してますます敏感になっていることも示しています。火災が少し激しくなるだけで、回復不能に陥るリスクが高まっている、ということです。
炭素循環と生物多様性への見えにくい打撃
今回の研究が警鐘を鳴らしているのは、目に見える「燃えた面積」だけではありません。火災後の森林回復力の低下が、地球全体の炭素循環や生物多様性にも、長期的で深刻な影響を及ぼしうる点です。
研究チームは、火災後の森林が十分に再生しないことで、次のようなリスクが高まると指摘しています。
- 生物多様性の大規模な損失
- 木材や森林資源など、生物資源の喪失
- 森林が担う「炭素吸収源」としての役割の低下
特に、森林が炭素を吸収する能力が落ちると、火災そのものによる二酸化炭素排出を上回る規模で、気候システムに影響を与える可能性があります。研究は、これが地球規模の炭素循環を「深くかき乱す」恐れがあると警告しています。
さらに、熱波や干ばつといった気候の極端現象が悪化するなかで、火災後の森林はかつてないほど厳しい条件下での再生を迫られています。山火事、気候極端現象、森林回復力の低下が、悪い方向にかみ合い始めている構図が見えてきます。
自然回復だけでは足りない 求められる「意図的な支援」
研究を率いたChen氏は、これまでのように「自然に任せる」だけでは、強まる気候ストレスに森林の自然回復メカニズムが追いつかなくなっていると指摘しています。そのうえで、火災後の重要な回復期間に、計画的な介入を行う必要性を訴えています。
具体的には、次のような取り組みが求められるとしています。
- 火災直後から数年間を見据えた、科学的な植林・再造林の計画
- 土壌や水環境の回復を含む、総合的な生態系の修復プロジェクト
- 国や地域をまたぐ協力にもとづく、山火事後の支援の枠組みづくり
オーストラリア・タスマニア大学の専門家David Bowman氏は、この研究について「極めて深刻なテーマを扱う、影響力の大きな論文だ」と評価しています。山火事の多いオーストラリアや北米だけでなく、世界全体に向けた警告として受け止めるべきだ、と読み取ることができます。
読者が押さえておきたい3つの視点
通勤中やスキマ時間にニュースをチェックする読者にとっても、この研究は「遠い国の環境問題」にとどまりません。気候変動やエネルギー政策、国際経済ともつながるテーマです。最後に、考えるヒントとなるポイントを3つ挙げます。
- 火災後の7年間は、森林が「戻れるかどうか」を左右する重要な時間であること
- 山火事対策は「燃えないようにする」だけでなく、燃えた後にどう支援するかが問われていること
- 森林は単なる景観ではなく、炭素吸収源として気候を支えるインフラだという視点
国際ニュースを日本語でフォローする私たちにとって、この研究は「山火事が増えている」という表層的な話題を超え、森林をどう守り、どう回復させるのかという長期的な視点を持つきっかけになります。次に「山火事」のニュースを目にしたとき、その後ろにある森林の回復力と地球環境への影響にも、少しだけ意識を向けてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
Wildfires slash global forest recovery capacity, study warns
cgtn.com








