北京の若手シンポが描く、これからの博物館の未来 video poster
博物館はこれまで「過去の記憶を守る場所」として親しまれてきましたが、その博物館が未来を見据え始めたらどうなるのでしょうか。2025年の国際博物館の日にあわせて、中国の首都・北京で開かれた若手シンポジウムでは、まさにその問いが投げかけられました。新しい世代の博物館関係者が集まり、テクノロジーや創造性、観客の理解が博物館の未来をどう形づくるのかを探りました。
「過去の番人」から「未来のラボ」へ
このシンポジウムの背景には、博物館の役割の変化があります。これまで博物館は、文化財や資料を静かに展示し、保存することが中心でした。しかし若い世代の専門家たちは、博物館を「過去の番人」から「未来のラボ」へとアップデートしようとしています。
彼らが目指すのは、過去の記録を見せるだけでなく、来館者とともに新しい問いを生み出し、これからの社会を考えるための場にしていくことです。そのためのキーワードとして、テクノロジー、創造性、そして観客への深い理解が挙げられました。
北京で開かれた若手シンポジウムの焦点
2025年の国際博物館の日に北京で行われたこの若手シンポジウムには、新しい世代のミュージアム・プロフェッショナル(博物館の現場で働く専門家)が参加しました。テクノロジー、創造性、観客への理解という三つの視点から、これからの博物館のあり方が話し合われました。
こうしたテーマからは、次のような問いが浮かび上がります。
- テクノロジーは、展示を「難しくする」のか、「分かりやすくする」のか
- 創造性は、専門性とどう両立しうるのか
- 観客を「数」ではなく、一人ひとりの経験としてどう捉え直すのか
これらの問いは、北京だけでなく、日本を含む多くの地域の博物館が直面しているテーマでもあります。
キーワード1:テクノロジーがひらく新しい鑑賞体験
若い世代の博物館関係者にとって、テクノロジーは単なる「便利な道具」ではなく、来館者との関係を変えるきっかけになりつつあります。デジタル技術を活用することで、展示物の裏側にあるストーリーを、より直感的に伝えられるようになるからです。
- スマートフォンを通じた多言語解説
- 拡張現実(AR)や仮想現実(VR)による没入型展示
- オンライン上でのバーチャル・ツアーやライブ配信
こうした取り組みは、物理的な距離や時間の制約を超えて、博物館と観客をつなぐ手段になり得ます。一方で、技術だけが先行すると「画面を見るだけの体験」になってしまうリスクもあり、そのバランスが重要だとされています。
キーワード2:創造性とストーリーテリング
シンポジウムで強調されたもう一つの視点が、創造性とストーリーテリングです。若い世代は、「何を展示するか」だけでなく、「どう語るか」「どんな順番で見せるか」といった点を重視しています。
同じ資料でも、
- 歴史的な背景を重ねて語る
- 現代の課題とつなげて見せる
- 来館者自身の経験を重ね合わせられるように設計する
といった工夫によって、受け取られ方は大きく変わります。博物館は、単に「知識を教える場所」から、「物語をともに紡ぐ場所」へと変わろうとしていると言えます。
キーワード3:観客理解から「共創」へ
テクノロジーや創造性を語るとき、忘れてはならないのが観客へのまなざしです。若手によるこうした議論の中では、観客を単なる「来館者」ではなく、博物館とともに未来をつくるパートナーとして捉え直す視点が重要になっています。
具体的には、
- アンケートやデータ分析だけに頼らず、対話の場を設ける
- 子どもや若者、高齢者など、異なる世代の声をすくい上げる
- 地域の人びとと協力して展覧会やイベントをつくる
といったアプローチが考えられます。観客を「分析の対象」から「共創の仲間」へと位置づけることが、これからの博物館づくりのカギになりそうです。
日本の読者にとっての意味
日本でも、地方の小さな資料館から都市部の大規模な博物館まで、来館者数の変化やデジタル化への対応が課題になっています。北京での若手シンポジウムは、その課題に向き合うヒントを与えてくれます。
私たち一人ひとりが、次のような形でミュージアムと関わり直すこともできそうです。
- 身近な博物館や美術館に足を運び、「ここがもっとこうなったら」と感じた点をフィードバックする
- オンライン展示や配信を通じて、海外や他地域のミュージアムの試みをのぞいてみる
- 学校や職場、地域コミュニティで「面白かった展示」について話題にする
こうした小さなアクションの積み重ねが、博物館をより開かれた場所に変えていく力になります。
若い対話がひらくミュージアムの未来
2025年の国際博物館の日に北京で開かれた若手シンポジウムは、博物館が「過去」と「未来」をどうつなぐのかを改めて問い直す場となりました。テクノロジー、創造性、観客理解という三つの視点は、日本を含む多くの地域の博物館に共通するテーマでもあります。
博物館の未来は、どこか遠くにある特別な構想ではなく、現場で働く若い世代の対話と試行錯誤の中に育まれています。次に博物館を訪れるとき、展示の向こう側にいるこうした議論や挑戦にも、少し思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








