中国、WTOで米国の相互関税に懸念 多国間貿易体制の強化を提案
世界貿易機関(WTO)の一般理事会で中国が米国の相互関税に強い懸念を表明し、多国間貿易体制の安定・発展・改革を柱とする提案を示しました。米中間の貿易摩擦が続く中、ルールに基づく秩序をどう守るのかがあらためて問われています。
中国がWTOで米国の相互関税に懸念
中国は火曜日、スイス・ジュネーブで開かれた2025年のWTO第2回一般理事会で、多国間貿易体制を支持するための文書提案を提出しました。その中で、米国が掲げる英語で「reciprocal tariffs(相互関税)」と呼ばれる関税措置に対し、深刻な懸念を表明し、WTOメンバーが団結して対応するよう呼びかけました。
中国代表団は、安定的で開かれた、ルールに基づく貿易秩序はすべての国や地域に利益をもたらすと強調しました。その一方で、発足から30年を迎えたWTOの多国間貿易体制が大きな試練に直面しており、とりわけ米国による関税措置が世界の貿易ルールの土台を揺るがしていると警告しました。WTOメンバーに対しては、この体制を守り強化するため、集団的な行動を取るよう求めています。
3つの柱:安定・発展・改革
中国の提案は、「安定」「発展」「改革」の三つを柱とする戦略としてまとめられています。ポイントは次の通りです。
- 貿易関係の安定化と透明性・監視の強化
- 後発開発途上国などへの市場アクセス拡大と支援
- 気候変動やサプライチェーンに対応するWTO改革と新協定の組み込み
1. 貿易の安定と透明性の強化
第一の柱は、貿易の安定です。中国は、WTOメンバーが団結し、貿易関係を安定させるとともに、各国の措置に関する透明性を高め、監視機能を強化することで、予測可能な貿易環境を維持すべきだと訴えました。
2. 開発途上国への市場アクセスと支援
第二の柱は、発展です。特に、後発開発途上国と呼ばれる最も脆弱な国々への市場アクセスを拡大し、開発途上国に対する貿易関連の支援をより実効性のあるものにする必要性を強調しました。これにより、成長の果実をより多くの国や地域が共有できるようにする狙いがあります。
3. WTO改革と新たな課題への対応
第三の柱は、改革です。中国は、気候変動やサプライチェーン(供給網)の強靱性といった新たな課題にWTOが迅速に対応する必要があると指摘しました。また、投資円滑化を通じて開発を支援する投資円滑化協定や、電子商取引に関する協定など、新しい分野の合意をWTOの正式な枠組みに組み込むことを提案しています。
米国の関税措置と多国間ルール
中国代表団は、米国による一方的な関税措置が、WTOの根幹にある最恵国待遇の原則や、多国間で合意したルールを弱めかねないと懸念を示しました。各国が自国の判断だけで関税を引き上げる動きが広がれば、貿易紛争が連鎖し、世界経済全体の不確実性が高まる可能性があります。
今回の提案は、関税対立が続く状況の中でも、多国間ルールを通じて問題を管理し、解決しようとするアプローチを前面に押し出したものだと言えます。
ブラジルやロシアなど、広がる支持
中国の提案は、WTOメンバーの間で幅広い支持を集めました。ブラジル、ロシア、パキスタン、アンティグア・バーブーダなどが、中国と同様に一方的な貿易措置への懸念を表明し、多国間ルールの重要性を強調しました。
これらの国々は、WTOが掲げる最恵国待遇の原則を守りつつ、実効性のある改革を進める必要があると指摘しています。揺れ動く世界経済の中で、WTOを「機能するルールメーカー」として再生させることが共通の課題となっています。
日本やアジアの読者にとっての意味
今回の動きは、日本を含む輸出入に依存する多くの経済にとって無関係ではありません。米国による関税措置と、それに対抗する多国間の枠組み強化の議論は、企業のサプライチェーンや投資判断にも影響し得るテーマです。
国際ニュースをフォローする上では、各国がWTO改革をどのような優先順位で語っているのか、誰がどの提案を支持しているのか、といった点を見ていくと、世界の力学がより立体的に見えてきます。
米国の相互関税をめぐる議論は、今後もWTOや二国間の場で続きそうです。多国間ルールと一国主義的な措置とのせめぎ合いを、2025年以降の国際経済を読み解くひとつの軸として追いかけていく必要がありそうです。
Reference(s):
China expresses concern over U.S. 'reciprocal tariffs' at WTO
cgtn.com







