天柱山の崖を磨く「美容師」たち 20年続く知られざる仕事
中国安徽省・安慶市にある天柱山の断崖絶壁で、山の「美容師」と呼ばれる清掃チームが今年5月に作業を行い、その姿が改めて注目を集めました。観光客の目に触れにくい場所で、20年にわたって景観と安全を支え続けてきた人たちです。
天柱山の断崖を磨く専門チーム
天柱山は、中国安徽省安慶市に位置する山で、切り立った岩壁とダイナミックな景観で知られています。その険しい崖の上で働くのが、特別な清掃チームです。彼らは単なる作業員ではなく、山そのものを美しく保つ「美容師」として紹介されています。
今年2025年の5月6日から18日にかけて、このチームの活動が再び注目を集めました。高い崖の上からロープを頼りに降り、岩肌に沿って少しずつ移動しながら、山の表情を整えていきます。地上からは小さな点にしか見えない人影が、黙々と作業を続ける様子は、まさに「縁の上の仕事」です。
なぜ断崖を「クリーニング」するのか
こうした断崖清掃には、いくつかのねらいがあると考えられます。単に見た目をきれいにするだけではなく、観光客の安全や自然環境への配慮にもつながる仕事です。
- 景観の維持:岩肌に残ったごみや人工物を取り除くことで、天柱山本来の景色を保ちます。
- 観光客の安全確保:崩れやすい小石や不安定な部分を点検し、危険の芽を早めに見つける役割も果たします。
- 自然環境への配慮:放置されたごみが動植物に悪影響を与えないようにすることも重要です。
私たちが撮影スポットから眺める「壮大な絶景」の裏側には、こうした地道な手入れが積み重ねられていることが分かります。
20年続く、見えない安全と景観づくり
「20 years on the edge(崖の縁での20年)」という言葉が象徴するように、天柱山の断崖を守る取り組みは、約20年にわたって続けられてきました。ロープに身を預け、風を受けながら崖に向き合う日々は、決して楽な仕事ではありません。
しかし、観光客の多くは、その存在を知ることなく山を楽しみます。写真に写るのは美しい岩肌と雲海であり、その背景にある「手仕事」は、ほとんど可視化されません。それでも、チームは毎年のように作業を重ね、天柱山の魅力を静かに支えています。
今年5月6日〜18日に行われた作業が注目されたのは、こうした長年の積み重ねに、あらためて光が当てられたからとも言えます。観光地の価値は、派手な施設だけでなく、見えない維持管理によって支えられていることを思い出させてくれます。
デジタル時代に伝わる「崖の上の仕事」
スマートフォンで簡単に絶景をシェアできる時代だからこそ、天柱山の「崖の美容師」たちの仕事は、新しい意味を持ち始めています。SNSには、崖の途中にぶら下がる作業員の姿や、ロープ1本で岩壁と向き合う緊張感のある写真が投稿され、国内外の関心を集めています。
画面越しに見ると、彼らの仕事はどこか非現実的で、アクロバティックなパフォーマンスのようにも映ります。しかし、その本質はきわめて現実的で、地道なメンテナンスです。こうした「見えにくい労働」が可視化されることで、観光地を利用する側の意識も少しずつ変わっていくかもしれません。
私たちが観光地でできること
天柱山の例は、中国の山岳観光地に限らず、世界の多くの景勝地にも共通するテーマを投げかけています。それは、「絶景を楽しむ私たちは、その裏側の労働にどれだけ目を向けているか」という問いです。
観光客としてできることは、決して難しいものではありません。
- ごみを持ち帰る、決められた場所に捨てる
- 立ち入り禁止エリアや注意書きを守る
- 危険な場所で無理な写真撮影をしない
- 現地で働く人たちの存在に少しだけ思いを馳せる
このような小さな行動の積み重ねが、天柱山のような観光地の景観と安全を、長く次の世代へ引き継ぐ力になります。
「読み流さずに、少し立ち止まる」ニュースとして
天柱山の崖を掃除する「美容師」たちの話題は、派手な政治ニュースや経済ニュースに比べると、目立たないニュースかもしれません。しかし、私たちの日常の楽しみや旅行の裏側に、どれほど多くの人の仕事が重なっているかを考えさせてくれる、静かな国際ニュースでもあります。
次に絶景の写真をSNSでシェアするとき、画面の外側で働く人たちの存在を、少しだけ思い浮かべてみる──。天柱山の「崖の美容師」たちの20年は、そんな視点の変化をそっと促してくれているように見えます。
Reference(s):
20 years on the edge: Meet the cliffside cleaners of Tianzhu Mountain
cgtn.com








