農業生物多様性で食と気候を守る 昆明で国際会議、世界の専門家が議論
農業生物多様性(アグロバイオダイバーシティ)をどう守り、持続可能な食料システムにつなげるのか。中国南西部の雲南省昆明市で開幕した第三回国際アグロバイオダイバーシティ会議で、世界各地の専門家が議論を深めています。
昆明に世界の専門家が集結
雲南省の省都・昆明で始まった第三回国際アグロバイオダイバーシティ会議には、農業分野の研究者や環境分野の専門家などが各国から参加しています。この国際会議は、農業生物多様性に関する知識や技術、現場での経験を共有し、より強靭で持続可能な世界の食料システムをめざすためのプラットフォームとなることを目標としています。
「お皿の上」の多様性が鍵
会議の主催団体のひとつであるバイオダイバーシティ・インターナショナルと国際熱帯農業センター(CIAT)のマルセラ・キンテロ副事務局長は、現在も食料不安や栄養不良に苦しむ人々がいる現状を指摘したうえで、農業生物多様性の重要性を強調しました。
キンテロ氏は「いまも食料不安と栄養不良に直面している人々がいます。農業生物多様性はその解決の鍵となる要素です。人々の『お皿の上』にもっと多様な作物や品種を届けなければ、この問題に包括的に立ち向かうことはできません」と述べています。
農業生物多様性とは何か
農業生物多様性とは、私たちが食べる作物や家畜、果樹、野菜、豆類、さらにはそれらを支える土壌微生物など、農業や食料生産にかかわるあらゆる生き物の多様性を指します。
- 気候変動や病害虫に強い品種を残す「保険」の役割
- 地域ごとの文化や食習慣を支える基盤
- 土壌や水環境の健全性を保つ力
多様性が失われると、単一の作物や品種に依存するリスクが高まり、気候変動や感染症の拡大など、予測できないショックに対して食料システムが弱くなってしまいます。
会議が掲げる6つの焦点
今回の国際アグロバイオダイバーシティ会議では、とくに次の6分野に焦点が当てられています。
- 経済成長と農業生物多様性:多様な作物や地域資源を活用した新たなビジネスや雇用の創出をどう進めるか。
- 気候変動の緩和:在来品種や多様な農法を通じて、温室効果ガスの排出削減や気候変動への適応をいかに促進するか。
- 環境の健全性の向上:農薬や化学肥料への依存を減らし、生態系への負荷を下げる農業モデルをどう広げるか。
- 健康的な食生活:雑穀、豆類、果物など多様な食材を取り入れ、栄養バランスのとれた食事を広める方法。
- ジェンダーと社会的包摂:女性や小規模農家、先住的な知識を持つ人々が意思決定に参加し、恩恵を分かち合える仕組みづくり。
- 保全と管理戦略:種子バンクや現地保全(農家の畑で品種を守る取り組み)など、多様性を守るための具体的な仕組みの設計。
持続可能な開発とどうつながるか
農業生物多様性の保全は、持続可能な開発目標(SDGs)の複数の目標と深く結びついています。とくに「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「気候変動に具体的な対策を」といった目標に直接関係しています。
多様な作物と生産者を支えることで、地域経済の安定や貧困の軽減にもつながるため、今回の会議では、農業、環境、保健、ジェンダーといった領域をまたいだ連携が強く呼びかけられています。
日本の私たちにとっての意味
この国際ニュースは、日本に暮らす私たちとも無関係ではありません。私たちが日々の買い物や外食でどのような食材を選ぶかは、世界の農業生物多様性を間接的に左右します。
- 季節の野菜や地域の食材を意識して選ぶ
- 多様な穀物や豆類を食事に取り入れる
- 環境や生物多様性に配慮した認証商品を選択肢に入れる
こうした小さな選択が積み重なれば、農家や企業が「多様性を重んじる生産」に踏み出す動機にもなります。昆明での議論は、遠くの会議室だけで完結する話ではなく、私たち一人ひとりの食卓にもつながっているといえます。
これから問われる「連携」の力
今回の会議では、国や地域の枠を超えた協力の必要性が繰り返し強調されています。気候変動や食料不安、生物多様性の損失は、いずれも一つの国だけでは解決できない課題だからです。
農業生物多様性を守る取り組みは、科学者や政策担当者だけでなく、消費者、市民社会、企業など、多様な主体がかかわることで初めて実効性を持ちます。昆明から発信される議論や提案が、今後どのような国際協力や具体的な政策につながっていくのか。引き続き注目していきたいテーマです。
Reference(s):
Global experts convene in SW China to advance agrobiodiversity
cgtn.com








