ハーバード留学生禁止で香港科技大学が無条件受け入れ表明
米政府がハーバード大学による留学生の受け入れを禁止し、在籍する海外出身の学生に転学を求めたことを受け、2025年5月23日、香港科技大学(HKUST)が「影響を受ける学生を無条件で受け入れる」と表明しました。2025年12月現在、今回の動きは国際教育のあり方を考える象徴的な出来事として注目されています。
米政府の措置とその影響
米政府は、ハーバード大学が新たに国際学生(留学生)を受け入れることを禁止し、すでに在籍している海外出身の学生についても、他大学への転学を指示しました。この決定により、多くの学生が突然、進路の見通しを失いかねない状況に置かれています。
とくに、長期的な研究計画やキャリア設計をハーバード大学での学びに重ねてきた学生にとっては、短期間で新たな受け入れ先を探すことが求められる厳しい環境といえます。
香港科技大学の対応:無条件受け入れを表明
こうした状況を受けて、香港科技大学(HKUST)は5月23日に声明を発表し、影響を受ける学生に対して無条件での受け入れ方針を示しました。
対象としているのは、
- 現在ハーバード大学に在籍しているすべての国際学部生
- 同じく在籍中の国際大学院生
- ハーバード大学から入学許可を得ていた学生
とされています。HKUSTは、これらの学生が香港科技大学で学びを継続できるよう招待し、手続きや生活面での支援を約束しました。
スムーズな転学を支える具体的な支援
香港科技大学が表明した支援内容は、単なる「受け入れます」というメッセージにとどまりません。具体的には次のような点が挙げられています。
- 出願書類の審査を優先的に行うこと
- ハーバード大学で取得した単位の認定を柔軟に進めること
- 学生ごとの状況に応じた個別支援の提供
- ビザ取得のサポート
- 住居(宿舎など)の確保支援
さらに、転学プロセスを円滑に進めるため、専任のタスクフォース(特別チーム)を設置したことも明らかにしています。これにより、学生が直面しやすい事務手続き上の「壁」をできるかぎり下げる狙いがうかがえます。
香港の教育行政が示したメッセージ
同じ5月23日には、香港の教育長官にあたる Hong Kong Secretary for Education の Choi Yuk-lin 氏も、香港科技大学の動きに支持を表明しました。
Choi 氏は、世界中の優秀な学生に対し、香港地域で学ぶことを積極的に検討するよう呼びかけました。また、香港の教育局が地元の大学に対し、条件を満たす学生の受け入れを促していることも明らかにしています。
さらに、教育局は Harvard Club of Hong Kong と協力し、影響を受けた学生が新たな学びの場を見つけられるよう、追加的な支援策にも取り組む姿勢を示しました。行政と大学、そして同窓会組織が連携する形は、香港地域として国際人材を受け止めようとするメッセージとも受け止められます。
中国外交部の反応:教育交流の政治化に警鐘
中国外交部の報道官 Mao Ning 氏も、この問題についてコメントしています。Mao 氏は、中国と米国の教育協力は双方にとって利益をもたらすものであると強調しました。
そのうえで、学術交流を政治問題化することに中国は反対するとの立場を改めて示し、このような動きは米国の国際的なイメージを損なうと警告しました。また、中国は海外にいる中国人学生や研究者の正当な権利を守るための取り組みを続けると表明しています。
Mao 氏の発言からは、政治や安全保障上の対立が続くなかでも、教育や学術交流の分野はできるかぎり対立から切り離すべきだというメッセージが読み取れます。
今回の動きから見える3つのポイント
今回の香港科技大学の対応と、香港の教育行政、中国外交部のメッセージを合わせて見ると、いくつかの論点が浮かび上がってきます。
- 留学先選びにおける「政治リスク」の可視化
米政府の決定により、留学先の大学が政治的な判断の対象となり得ることが、改めて示されました。学生や家族にとっては、学問の内容や大学のランキングだけでなく、政策の変化が学びに与える影響も考えざるを得ない状況です。 - 香港地域の大学の存在感
香港科技大学が「無条件受け入れ」と具体的な支援策を打ち出したこと、そして香港の教育局が地元大学に受け入れを促したことは、香港地域の大学が国際的な学生の受け皿として積極的な役割を果たそうとしている姿勢を示しています。 - 中国と米国の間で揺れる教育交流
中国外交部が、教育協力の相互利益と学術交流の政治化への懸念をあらためて表明したことは、対立のなかでも「人の往来」や「知の交流」をどう守るかが重要なテーマになっていることを映し出しています。
これから留学を考える人への示唆
2025年12月の時点で見れば、今回の一連の動きは、特定の大学の枠を超え、国際教育全体が大きな転換点にあることを示唆しています。
留学や海外での研究を考える人にとって、重要になっているのは次のような視点です。
- 学びたい内容や研究テーマに本当に合った環境かどうか
- 大学や地域の政策が、今後数年間で大きく変わる可能性はどの程度あるのか
- 予期せぬ制度変更があったときに、別の選択肢へ移る道が確保されているか
香港科技大学の今回の決定は、困難な状況に置かれた学生に対する「セーフティネット」の一例ともいえます。同時に、国境を越えて学ぶことの意味やリスクを、私たち一人ひとりが改めて考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
HKUST welcomes Harvard's international students following US ban
cgtn.com








