中国発「ボーングローバル」企業 テックで世界を攻める新世代
高レベルの対外開放政策や一帯一路構想のもと、中国の次世代企業が「ボーングローバル(生まれながらにグローバル)」な存在として台頭し、テクノロジーとデジタルインフラを武器に世界市場で存在感を強めています。
政策が後押しする「ボーングローバル」中国企業
中国本土では、高レベルの対外開放政策と一帯一路構想(Belt and Road Initiative)を背景に、新しい世代の企業が積極的に海外市場へ打って出ています。単なる低コストや大量生産の強みだけでなく、技術革新、スマート製造、デジタル能力を前面に出してグローバル競争に挑む姿が目立ちます。
こうした企業は、創業初期から世界市場を前提に事業を設計する「ボーングローバル」型の特徴を持ちます。製品そのものに加え、ソフトウェア、クラウド、AI、エネルギーなどを組み合わせた「エコシステム」で勝負する点が、従来型の輸出企業との大きな違いです。
ロボットで世界シェア6割 Unitree Roboticsのインパクト
代表例の一つが、杭州に拠点を置くロボット企業、Unitree Roboticsです。同社は2024年、ヒト型ロボットと四足歩行ロボットを含む全モデルの海外販売台数が2万台を超えました。データによると、四足歩行ロボットに限れば、世界市場の約6割を同社が占めたとされています。
四足歩行ロボットの海外展開では、販売後のサポートも高度にデジタル化されています。顧客のトラブルに対し、遠隔からのソフトウェア更新や機能アップデートが必要になるためです。Unitree RoboticsのLi Pengfei氏は、CGTNの取材に次のように述べています。
「当社の四足歩行ロボットを海外で販売する際、顧客に問題が起きれば遠隔でのアップグレードやサポートが頻繁に必要になります。China Mobileのグローバルなカバレッジと安定したデータ伝送が、それを可能にしています」と話し、国際ネットワークの重要性を強調しました。
こうした発言からも分かるように、低遅延で安定した国際通信インフラは、もはや単なる裏方ではなく、スマートロボットのグローバル展開における「競争力そのもの」になりつつあります。
自動車:BYDなどが輸出するのは「車」だけではない
自動車分野でも、中国本土のメーカーがグローバル展開を加速しています。BYD、SAIC、Cheryなどは、自社製の低炭素型LNG(液化天然ガス)船を使った自動車輸送船団を拡充し、海上輸送の部分まで自前で押さえる動きを強めています。輸送の脱炭素とコスト・品質の両立を狙った取り組みと言えます。
BYDの年次報告書によると、同社は2024年に電気自動車(EV)とハイブリッド車を合わせて427万台を納車しました。同社が海外に送り出しているのは車両だけではありません。バッテリー、蓄電システム、充電ソリューションを組み合わせた「エネルギーエコシステム」全体を輸出し、世界的なクリーンエネルギーソリューション企業としての位置付けを志向しています。
こうした動きは、自動車メーカーが単に完成車を売る企業から、エネルギーとモビリティの総合プラットフォーム企業へと変わりつつあることを示しています。
エネルギー:スマートグリッドとAIで「見える」インフラに
エネルギー企業もまた、パイプラインや発電所といったハードの建設にとどまらず、デジタル化されたインフラを海外に展開しています。東南アジアのスマートグリッド(高度に制御された電力網)や、ラテンアメリカの太陽光発電向けソフトウェアプラットフォームなどでは、リアルタイムのデータとAIが活用されています。
アフリカのミニグリッド(小規模電力網)では、電力需要の変動に応じてAIがリアルタイムに電力負荷を調整する取り組みも進んでいます。こうした技術により、多様な市場でエネルギー供給の安定性と運用効率を高めることが狙われています。
通信・クラウド・AI:見えない「土台」が主戦場に
他方で、中国本土の企業が海外で事業を展開する際には、課題も少なくありません。現地でのオペレーションのローカライズ、各国・地域の規制への対応、コネクテッドカーにおける車車間・路車間通信(V2X)、無線でのソフトウェア更新(OTA)、そして国境をまたぐクラウドデータのコンプライアンスなど、多くが「スマート化」と「接続性」に関わるものです。
ロボット企業も同様に、AIモデルやデータパイプラインを海外の利用シーンや言語、顧客の行動に合わせて調整する必要があります。ここで重要な役割を果たしているのが、中国本土の通信キャリアが構築してきたデジタルインフラです。
通信インフラ企業は、従来のクラウドサービス提供者から、AIを組み込んだ統合プラットフォームへと変貌しつつあります。業界ごとのニーズに合わせたAIソリューションを提供し、グローバルなAIエコシステムの構築を目指しています。
China Mobileの副社長であるLi Huidi氏は、「AIは産業の姿を変えているだけでなく、中国企業のイノベーションの位置付けを世界のバリューチェーンの中で再定義しています」と述べています。さらに「私たちは低遅延で高信頼なグローバルAIコンピューティングネットワークを構築し、中国企業の海外進出を支えるワンストップのデジタルプラットフォームをつくっています」と続けました。
AIインフラ、エッジノード(利用者や機器に近い場所に設置された計算拠点)、越境データのコンプライアンスへの投資は、単なる通信サービスではなく、世界で戦う中国本土企業の「デジタル競争力」を支えるレバーになっています。
日本の読者への示唆:製品から「プラットフォーム競争」へ
中国本土の「ボーングローバル」企業の動きは、日本やアジアの企業にとっても無関係ではありません。特に次のようなポイントは、今後の産業競争を考える上で参考になりそうです。
- 競争の軸が、価格や生産規模から、AI・ソフトウェア・デジタルインフラによる差別化へと移りつつあること。
- 自動車やロボットといった製造業であっても、エネルギーや通信など隣接分野を巻き込んだ「エコシステム戦略」が鍵になっていること。
- 海外展開では、現地の規制やデータガバナンスに対応できるグローバルなネットワークとAI基盤を持つかどうかが、大きなハードルにも競争優位にもなり得ること。
2025年現在、中国本土の次世代企業は、ロボティクス、電気自動車、エネルギー、通信・AIインフラといった分野で、世界各地での実証とビジネスモデルの模索を続けています。今後の国際ニュースを追う際には、販売台数やプロジェクト規模だけでなく、その背後にあるネットワーク、ソフトウェア、データ戦略にも目を向けることで、グローバル競争の構図がより立体的に見えてきそうです。
Reference(s):
Born global: The tech edge of China's next-gen global enterprises
cgtn.com







