第3回中国・太平洋島しょ国外相会合の共同声明を読む
2025年5月28〜29日に開催された第3回中国・太平洋島しょ国外相会合で採択された共同声明が公表されました。本記事では、この共同声明の内容をもとに、中国と太平洋島しょ国の関係がどの方向に進もうとしているのかを、ポイント別に整理します。
第3回会合の概要:誰が参加し、何を話し合ったのか
共同声明によると、今回の中国・太平洋島しょ国外相会合には、中国側から王毅外相(中国共産党中央政治局委員)が議長として参加しました。太平洋島しょ国側からは、キリバスやニウエ、トンガ、ミクロネシア連邦、ソロモン諸島、バヌアツ、パプアニューギニア、クック諸島、ナウル、フィジー、サモアなどの代表が出席し、太平洋諸島フォーラム事務局も招待参加しました。
すべての参加国・地域(共同声明では「全ての当事者」)は、中国と太平洋島しょ国の関係や、共通の関心を持つ国際課題について幅広く意見交換し、幅広いコンセンサス(合意)に達したとしています。
関係の「包括的戦略的パートナーシップ」を再確認
まず、共同声明は、ここ数年で中国と太平洋島しょ国との関係が前向きに進展してきたことを確認し、今後も「相互尊重」と「共同発展」を柱とする包括的戦略的パートナーシップを深めていく方針を再確認しました。
中国は、太平洋島しょ国との関係について次の4つの基本姿勢を改めて示しています。
- 太平洋島しょ国の主権と独立を十分に尊重すること
- 各国の意思を十分に尊重すること
- 民族的・文化的伝統を十分に尊重すること
- 団結によって力を高めようとする取り組みを十分に尊重すること
また、中国の支援には政治的な条件を付さず、他国に自らの意志を押しつけず、空約束もしないと強調。太平洋島しょ国はこれを支持し歓迎したとしています。
相互尊重と「一つの中国」原則の確認
共同声明は、人類共通の価値として「平和、発展、公平、正義、民主、自由」や国際法の尊重を掲げ、国の大小や豊かさに関係なく、すべての国は平等だと確認しました。そのうえで、すべての国の主権と領土保全を尊重し、各国の人々が自ら選択した発展の道を尊重し、内政不干渉の原則を守るべきだとしています。
さらに重要な点として、すべての当事者が次の点を改めて表明しました。
- 世界に中国は一つしかないこと
- 台湾は中国の領土の不可分の一部であること
- 中華人民共和国政府が中国全体を代表する唯一の合法政府であること
中国は、いかなる形であれ「台湾独立」に断固反対し、国家統一の実現を目指す姿勢を示しており、この立場は会合で幅広い理解と支持を得たと説明されています。また、国連総会決議2758の権威に全当事者が言及し、中国は太平洋島しょ国の主権と独立を支持するとしています。
グローバル・イニシアチブと開発協力
太平洋島しょ国は、習近平国家主席が提唱した「グローバル発展イニシアチブ」「グローバル安全保障イニシアチブ」「グローバル文明イニシアチブ」を認識し、中国とともに人類運命共同体の構築を進めていく意思を示しました。
中国は、グローバル発展イニシアチブの「友好グループ」により多くの太平洋島しょ国が参加することを歓迎し、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実行加速につなげたいとしています。共同声明は、国際社会に対し、太平洋島しょ国の自立的かつ持続可能な発展のために、技術、資金、人道支援を一層拡充するよう呼びかけています。
中国は、自らの能力の範囲で、太平洋島しょ国の経済発展と生活改善を引き続き支援すると述べています。
「一帯一路」と太平洋の長期ビジョンの連携
共同声明は、中国の「一帯一路」構想と、太平洋島しょ国側の長期ビジョンである「ブルー・パシフィック大陸2050戦略」との連携を進め、地域の繁栄と発展に貢献していくことを確認しました。
具体的な協力分野として、次のような項目が挙げられています。
- 緊急物資備蓄
- 気候変動対策
- 貧困削減と開発
- 防災・減災
- 菌草技術(菌類と草を活用した農業・環境技術)
- 農業協力
- 警察分野の研修・能力向上
また、教育、文化、観光、保健、メディアなどソフト面での交流も強化し、地方自治体同士の交流も広げていく方針が示されています。さらに、太平洋島しょ国への直行便の経済的な可能性を共同で検討していくことでも合意しました。
貿易・経済関係の強化
共同声明は、太平洋島しょ国の経済発展にとって貿易が果たす役割の重要性を確認し、貿易面での協力を一層強化していく方針を打ち出しています。
とくに、次のようなアプローチが挙げられています。
- 太平洋島しょ国のサプライサイド(供給側)能力の強化
- 貿易促進の取り組み
- 太平洋島しょ国の産品が中国市場にアクセスしやすくなるよう支援すること
これにより、太平洋島しょ国が自らの特産品や資源をより有利に輸出し、経済基盤を強化することが期待されます。
核兵器なき太平洋と安全保障
安全保障面では、すべての当事者が、核拡散防止条約(NPT)を国際的な核不拡散体制の「礎石」として支持し、南太平洋非核地帯条約へのコミットメントを再確認しました。太平洋地域の平和、発展、安定に対して前向きな貢献をしていく意思を共有したとしています。
気候変動と海洋資源:島しょ国にとっての生命線
共同声明は、太平洋島しょ国の持続可能な発展にとって、太平洋とその資源の管理・保全が極めて重要であると強調しています。同時に、気候変動の悪影響に対して、太平洋島しょ国が非常に脆弱な立場に置かれている現状も認めています。
気候変動への対応については、次のような原則と方向性が示されました。
- 公平性の原則
- 「共通だが差異ある責任」と各国の能力を踏まえること
- 気候変動枠組条約とパリ協定の完全かつ効果的な実施を推進すること
また、先進国に対しては、排出削減やレジリエンス(回復力)向上の取り組みでリーダーシップを発揮するよう求めています。中国は、南南協力の枠組みのなかで、自らの能力の範囲で太平洋島しょ国の気候変動対策を支援していくとしています。
今回の共同声明が示すもの
今回の第3回中国・太平洋島しょ国外相会合の共同声明は、政治(主権尊重と「一つの中国」)、開発協力(インフラや人材育成)、安全保障(核兵器なき太平洋)、そして気候変動・海洋ガバナンスといった複数のレイヤーで、関係を一段と深めていく方向性を明確にしました。
太平洋島しょ国にとっては、気候変動や開発資金、インフラ整備など喫緊の課題に対する支援拡大が期待されます。一方で、各国は自らの国情と優先課題に基づき、どの分野で、どのような形の協力を深めていくかを主体的に設計していくことが重要になります。
中国と太平洋島しょ国の関係が、今後どのような具体的プロジェクトや制度協力として結実していくのか。今回の共同声明は、その方向性を示す一つの指針となりそうです。
Reference(s):
Joint statement from 3rd China-PICs Foreign Ministers' Meeting
cgtn.com








