中国の衛星「天都1号」、史上初の地球-月共鳴軌道へ 月探査の新段階
中国の測位実験衛星「天都1号」が、人類として初めて地球-月の特別な共鳴軌道へ到達しました。月探査と地球-月インフラ構想に向けた重要な一歩です。
何が起きたのか:地球-月「3対1共鳴軌道」とは
天都1号は、1週間にわたる試験飛行の後、2024年5月22日に軌道制御を行い、「3対1地球-月共鳴軌道」と呼ばれる特別な軌道へ入りました。科学者らは、その成果を発表し、歴史的なマイルストーンだと位置づけています。
この軌道では、天都1号が地球の周りを3周する間に、月は地球の周りを1周します。衛星が描く軌跡を重ねて見ると、花びらのような複雑な形になるため、「花びら軌道」のようにもたとえられます。
深空探査実験室によると、この共鳴軌道には「比較的少ないエネルギーで衛星を維持できる」という特別な力学的性質があります。燃料の節約は、長期間の深宇宙探査ミッションでは大きな利点になります。
なぜ中国の月探査計画にとって重要なのか
今回の成果は、中国の月探査計画にとって重要な節目となりました。天都1号が取得した飛行データは、地球と月の重力が複雑に絡み合う環境で、宇宙機をどうナビゲートし、制御するかを研究するための基盤となります。
科学者たちは、この共鳴軌道技術が、将来の地球-月インフラの整備で重要な役割を果たすと見ています。たとえば次のような構想です。
- 地球-月間を結ぶ航路での効率的な航行ルート設計
- 深宇宙探査機に安定した通信・測位サービスを提供する衛星網
- 長期的な月面探査や基地運用を支えるナビゲーションインフラ
こうした技術が成熟すれば、地球と月の間に「宇宙の物流と通信の高速道路」を築くことも現実味を帯びてきます。
天都1号・天都2号とは:地球-月測位の実験衛星
天都1号は、通信中継衛星「鵲橋2号(Queqiao-2)」とともに、2024年3月に打ち上げられました。同時に打ち上げられた天都2号とあわせて、地球-月空間でのさまざまな技術実験を行うことが目的です。
これまでに、両衛星は軌道上で複数の技術試験を完了しています。なかでも天都1号による地球-月共鳴軌道への投入は、より高度な運用が求められるチャレンジでした。
現在、天都1号はミッションを延長し、地球-月の広い空間をカバーする測位(ナビゲーション)・通信コンステレーション(衛星群)に必要な中核技術の検証を続けています。
地球-月ナビゲーション・通信コンステレーションのイメージ
深宇宙で活動する探査機にとって、「どこにいるか」「地球とどうつながるか」は生命線です。そこで構想されているのが、地球と月の間に複数の衛星を配置し、常時サービスを提供する衛星コンステレーションです。
- 探査機や月周回衛星の位置を高精度に測定する
- 探査機と地球の間のデータ通信を中継する
- 月の裏側など地球から直接見えないエリアとの通信を補う
天都1号のような実験衛星は、こうした将来のシステムを見据え、どの軌道配置が効率的か、どのような制御方法なら燃料を節約できるかといったポイントを事前に確かめる役割を担っています。
国際ニュースとしての意味:月をめぐる長期プロジェクト
月探査は、短期的な「到達レース」から、長期的なインフラづくりと科学研究の段階へと移りつつあります。中国も、野心的な長期月探査計画を掲げており、地球-月空間における航行・通信技術の確立は、その柱の一つです。
今回の共鳴軌道への投入は、派手な映像こそありませんが、将来の大型ミッションを支える「裏方」の技術を積み上げる動きと言えます。国際ニュースとしても、各国・各地域がどのように月や深宇宙へのアクセス能力を高めていくのかを読み解く一つの材料になります。
これからの「地球圏」をどう捉えるか
地球と月を一体の「地球圏」としてとらえ、そこにインフラを築いていく発想は、今後数十年の宇宙開発を考えるうえで重要になっていきます。
私たちのスマートフォンやカーナビも、地上から見えないところで動く衛星インフラによって支えられています。同じことが、やがて月探査や深宇宙探査でも当たり前になるかもしれません。
地球-月空間にどのようなインフラが築かれ、それが科学研究やビジネス、国際協力のあり方をどう変えていくのか。今回の天都1号の成果は、そんな未来を静かにイメージさせてくれるニュースと言えるでしょう。
Reference(s):
China's Tiandu-1 satellite enters historic Earth-moon resonant orbit
cgtn.com








