中国テック大手が2025年に大量採用 AI時代を見据えた人材戦略とは
中国のテック大手や製造業企業が2025年、相次いで大規模な採用・研修計画を打ち出しています。Tencent、Meituan、Baidu、Mideaなどが合計で数万人規模のポジションを用意し、AI時代に対応できる人材確保と雇用の安定を同時に追求していることが見えてきます。
2025年、中国企業が雇用市場の「安定装置」に
中国のITや製造業の大手企業は、2025年を通じて新卒と経験者の双方を対象に大規模な採用を進めています。背景には、景気の先行きが不透明な中でも雇用を維持・拡大しようとする動きがあります。
中国商業経済学会の宋向清副会長は、中国工業報へのコメントで、景気不安の中での積極的な採用計画は雇用市場の「安定装置」として機能し、企業の社会的責任の表れであり、安定した雇用を通じて持続的な経済発展にも寄与すると指摘しました。
Meituan:学生向け1万5000ポストで将来人材を囲い込み
フードデリバリーや地域サービスで知られるテック企業のMeituan(メイトゥアン)は、2025年に学生向けポジションを1万5000件以上用意しています。
- 新卒採用:およそ6000人
- 内定連動型インターン:4000人
- 一般インターン:5000人超
同社は近年、部門や職種を問わず、毎年6000人以上の大学卒業生を継続的に採用してきたとされ、2025年もその姿勢を維持しています。
さらにMeituanは、社内のあらゆる業務にAIを組み込み、従業員が広くAIツールにアクセスできる環境づくりを進めています。全社向けのAI基礎研修に加え、職種やレベルに応じたカスタマイズ研修や、AIを活用するイノベーションチームの育成も行っており、「採用」と「育成」をセットで設計していることが特徴です。
Tencent:3年間で2万8000人のインターン計画
メッセージアプリのWeChatやゲーム・エンタメ事業で知られるTencent(テンセント)は、2025年4月に過去最大規模となるインターン採用計画を発表しました。
- 今後3年間でインターン2万8000人を受け入れ
- そのうち2025年分として1万人を募集
- およそ6割が技術系ポジション
技術系の役割には、生成AIモデルの開発、アルゴリズム設計、デジタルコンテンツ制作、ゲームエンジン開発などが含まれます。AIやソフトウェアの基盤を支える人材を、学生段階から広く取り込もうとする姿勢が見て取れます。
Baidu:AIインターンと長期コンテストで人材パイプラインを構築
検索やAI技術で知られるBaidu(バイドゥ)も、2025年の早い段階からAI人材の獲得に動いています。2025年3月には、AI関連のサマーインターンとして3000件超のポジションを公開しました。
さらに、今後3年間で大学生向けインターンを2万1000人分提供すると表明しており、インターンシップを通じた長期的な人材パイプラインづくりを進めています。同時に、2026年卒向けの新卒採用をすでに開始し、外部からの経験豊富な人材の採用も継続しています。
Baiduは2020年以降、累計500万人のAI関連人材を育成するという目標を前倒しで達成したとされ、現在も複数の育成プログラムに投資を続けています。その一つが20年以上続くプログラミングコンテスト「Baidu Star」です。20回目を迎えたこのコンテストには、これまでに30万人以上が参加しており、優秀な技術人材を早期に発掘する場となっています。
Midea:製造業もAI・ロボティクス人材を積極採用
家電メーカーのMidea(ミデア)は、2025年に新卒向けに2000件を超えるポジションを開放しています。募集分野は、研究開発(R&D)、情報技術、マーケティング、財務、サプライチェーンなど多岐にわたります。
2025年1〜4月には、AI、ロボティクス、再生可能エネルギーなどの成長分野で、ほぼ1000人のプロフェッショナル人材を採用しました。製造業もAIシフトの波の中で、人材戦略を大きく変えつつあることがわかります。
Xiaomi、Huawei、AlibabaもAI採用とリスキリングを強化
スマートフォンや通信機器、プラットフォームビジネスで存在感を持つXiaomi、Huawei、Alibabaなどの企業も、AI関連の採用や社員研修を拡大しています。焦点は、新しいAI人材の採用だけではありません。
すでに働いている従業員に対し、生成AIやデータ分析などのスキルを身につけてもらう「リスキリング(学び直し)」にも力を入れています。AIを一部の専門家だけのものにせず、全社的な生産性向上につなげる狙いです。
広がる「AIスキル不安」と、人中心の戦略への転換
LinkedIn Chinaの責任者ナンシー・ワン氏によると、技術の変化が加速する中で、多くのビジネスパーソンが「AIスキル不安」を感じているといいます。自分のスキルが時代遅れになるのではないかという感覚は、中国企業の現場でも広がっているようです。
一方でワン氏は、中国企業が「技術中心」から「人中心」の発想へとシフトしつつあることを評価しています。AIを軸にした人材育成を企業戦略の中心に据え、従業員一人ひとりがAIを使いこなせるようにする方向に舵を切っているという見方です。
実際に、多くの企業がより体系的なAI研修制度を構築し始めています。基礎スキルの習得から、実際の業務プロジェクトでAIを使う実践、さらに高度な専門スキルへというステップを設計し、生産性の向上と将来に備えた人材づくりの両立を図っています。
日本の読者にとっての示唆:AI時代のキャリア設計
2025年の中国企業の動きを見ると、AI時代の人材戦略にはいくつかの共通点が浮かび上がります。
- 採用と育成をセットで考え、入社後の学び直しを前提にしている
- インターンシップを通じて、早い段階から人材を見極める
- AIスキルを、特別な専門ではなく「仕事の基礎」に近いものとして扱い始めている
こうした変化は、日本を含む他の国・地域の働き手や企業にとっても無関係ではありません。AIとどう付き合い、どのように学び続けるかが、今後のキャリア形成の重要なテーマになりつつあることを、中国企業の動きは示しています。
2025年も終わりに近づく中で、中国企業による大規模な採用・研修投資は、次世代のテクノロジー競争だけでなく、雇用の安定や人材育成を重視する新しい企業文化の兆しとしても注目されます。
Reference(s):
China's Tencent, Meituan, Baidu lead major hiring drives in 2025
cgtn.com








