山西省の飾りパン「Jinnan Huamo」 祖先を敬うドラゴンボート・フェスティバルの無形文化遺産
ドラゴンボート・フェスティバルが近づく時期になると、中国・山西省南部の人びとは、ある特別な「飾りパン」作りに忙しくなります。高品質な小麦から生まれる装飾パン「Jinnan Huamo」は、祖先を敬い、天候や平和、繁栄を祈るための大切な存在です。
山西省南部で受け継がれる「祈りのパン」
山西省南部、とくにYunchengやLinfen周辺の地域では、ドラゴンボート・フェスティバルの前になると、多くの家庭でJinnan Huamoが蒸されます。小麦粉をこねた生地をふっくらと発酵させ、丁寧に成形していくこのパンは、ただの食べ物ではなく、地域の人びとの祈りを託した「食べられる工芸品」です。
生地は虎などの象徴的な姿にかたどられます。一つひとつの形は生き生きとしており、それぞれに縁起や願いが込められています。こうして作られたJinnan Huamoは、祭りの席を鮮やかに彩ります。
Jinnan Huamoとは? 国家級無形文化遺産になった飾りパン
Jinnan Huamoは、山西省南部で育まれてきた装飾パンで、現在は国家級の無形文化遺産として認定されています。ふだんの食事というよりは、特別な日を祝うための「ハレの食べ物」として位置づけられています。
特徴は、食べるためのパンでありながら、見て楽しむことができる美しい造形にあります。虎をはじめとするさまざまなシンボルが生地で表現され、蒸し上がると、柔らかな質感とともに祈りの意味が立ち上がってきます。
祖先を敬い、天候と平和、繁栄を祈る
Jinnan Huamoは、もともと祖先をまつる場で供えられ、天候が安定し、平穏な日々と豊かな実りがもたらされるよう祈るために作られてきました。こうした祈りは、現代でも地域の人びとの暮らしと密接に結びついています。
この飾りパンは、さまざまな場面で欠かせない存在になっています。
- ドラゴンボート・フェスティバルなどの祭礼
- 結婚式といった祝宴の席
- 葬儀の場での弔い
- 季節ごとの行事や通過儀礼
人生の節目や季節の変わり目に、Jinnan Huamoがそっと寄り添うことで、「日常」と「祈り」のあいだをつなぐ役割を果たしているといえます。
無形文化遺産として守り、伝える意味
Jinnan Huamoが国家級の無形文化遺産として認められていることは、単に古い風習を残すというだけでなく、地域の人びとの暮らしや価値観を未来へ伝えるという意味を持ちます。生地をこね、形を作り、蒸しあげる一連の手仕事のなかには、世代を超えて受け継がれてきた知恵と工夫が凝縮されています。
こうした伝統食は、レシピだけを残しても十分ではありません。どのような場面で作り、誰と囲み、どんな祈りを込めるのか――その背景にある物語ごと守り伝えることが、無形文化遺産の核心だといえます。
日本の読者にとってのヒント
日本でも、正月の餅や節句の行事食など、特別な食べ物に願いを込める文化が各地にあります。山西省南部のJinnan Huamoの物語は、私たち自身の足もとにある食の風習をあらためて見直すきっかけにもなりそうです。
忙しい日常のなかで、「なぜこの料理はこの日に食べるのか」「そこにどんな祈りが込められているのか」を考えてみると、食卓が少しだけ違って見えてくるかもしれません。Jinnan Huamoは、そのヒントを静かに教えてくれる存在だといえるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








