中国の小惑星探査「天問2号」 10年計画の目的とねらいを読む video poster
中国の小惑星探査ミッション「天問2号」が2025年5月に打ち上げられてから、およそ半年がたちました。国際ニュースとしても注目を集めるこの計画は、小惑星や太陽系の成り立ちを解き明かすことをめざす10年規模の挑戦です。
天問2号とは?10年にわたる小惑星・彗星探査
中国国家航天局(CNSA)の天問2号ミッションは、太陽系初期や小惑星の形成・進化を理解することを目的とした惑星探査計画です。今後約10年にわたり、次のような目標が掲げられています。
- 地球近傍小惑星2016HO3からのサンプル(試料)採取と地球への持ち帰り
- 火星より遠い領域を公転する主ベルト彗星311Pの探査
一つの探査機で小惑星のサンプルリターンと彗星探査の両方を目指す点が、このミッションの大きな特徴です。
2025年5月、地球脱出軌道への打ち上げ
天問2号は2025年5月29日未明、四川省の西昌衛星発射センターから長征3Bロケットによって打ち上げられました。北京時間の午前1時31分、ロケットが上昇を開始し、およそ18分後には探査機が地球から小惑星2016HO3へ向かう遷移軌道に投入されたとされています。
今回が、このシリーズの長征3Bロケットにとって初めての「地球脱出軌道」への打ち上げミッションとなりました。打ち上げ後、探査機は順調に太陽電池パネルを展開し、中国国家航天局は打ち上げの成功を宣言しています。
- 発射場所:四川省・西昌衛星発射センター
- 発射時刻:北京時間 午前1時31分
- ロケット:長征3Bキャリアロケット
- 結果:探査機は計画どおり遷移軌道へ投入、太陽電池パネル展開も成功
ターゲットは「地球の準衛星」2016HO3
最初の目的地となる小惑星2016HO3は、「地球の準衛星」と呼ばれる特別な天体です。自らは太陽の周りを公転しながら、見かけ上は地球の周りを回っているように見えるという性質を持っています。これまでに見つかっている地球の準衛星は、わずか7個にすぎないとされています。
中国科学院国家天文台の研究者であるリウ・ジエンジュン氏によると、2016HO3は地球からおよそ1,800万〜4,600万キロメートルの距離にあり、他の多くの小惑星と比べて相対的に近い存在です。数百万にも上るとされる小天体の中で、地球近傍小惑星は約3万個に限られており、その中から2016HO3を選んだこと自体が「極めてまれな対象」を選び取ったことを意味すると説明しています。
なぜ2016HO3からサンプルを持ち帰るのか
科学者たちは、2016HO3の内部構造や表面の物質を詳しく調べることで、この小惑星がどのように生まれ、どのような環境を経てきたのかを知ることができると期待しています。それは同時に、太陽や地球の初期の歴史を読み解く手がかりにもなり得ます。
リウ氏は、この種の小さな天体が本格的に探査されるのは「国際的にも初めて」だと指摘します。2016HO3からサンプルを採取し地球に持ち帰ることは、「地球と月の系を超えた空間から、初めて物質を持ち帰る試み」であり、中国の惑星探査にとって大きな飛躍だとしています。
小惑星はしばしば「宇宙の化石」とも呼ばれます。形成から長い時間がたった今も、太陽系が生まれたばかりのころの情報をその内部に保存している可能性が高いためです。天問2号がもし2016HO3のサンプルを無事に地球へ届けることができれば、太陽系の「乳幼児期」をのぞき見る貴重な資料となるでしょう。
その先の目的地、主ベルト彗星311P
天問2号の旅は、2016HO3だけで終わるわけではありません。ミッション計画では、その後、火星よりも遠い軌道を回る主ベルト彗星311Pの探査も視野に入れています。小惑星だけでなく彗星も観測対象にすることで、太陽系初期の姿をより立体的にとらえようとする試みといえます。
まだ多くの部分がベールに包まれている主ベルト彗星に、探査機がどこまで迫れるのか。10年規模のミッションの後半に向けて、その行方に注目が集まっていきそうです。
中国の惑星探査にとっての一歩、人類全体にとっての一歩
中国国家航天局トップのシャン・ジョンデ氏は、天問2号ミッションを「中国の新たな惑星間探査の旅における重要な一歩」と位置づけています。ミッション期間が長く、リスクも大きい一方で、これまでにない発見をもたらし、人類の宇宙に対する理解を大きく広げることへの期待を語っています。
長期間にわたるこうした探査計画は、日々のニュースやSNSのタイムラインとはまったく違う時間軸で進みます。2025年12月の時点で、天問2号の旅はまだ始まったばかりです。これから先の10年で、航行、接近やサンプル採取、地球への帰還、そして彗星探査など、多くの重要な節目が訪れることになります。
小さな天体をめぐる物語は、私たち自身がどこから来たのかを知る物語でもあります。天問2号がこれからどのようなデータとサンプルをもたらすのか、その一歩一歩を追いかけることは、太陽系と地球、そして私たち人類のルーツを考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








