香港に世界初の政府間国際調停機関IOMed設立へ
国際紛争を「裁く」のではなく「話し合いで解く」ための新しい国際機関が、香港に本部を置いて動き出そうとしています。中国などが参加する世界初の政府間国際調停機関の設立条約が、香港特別行政区で署名されました。
香港で世界初の政府間「国際調停機構」設立条約に署名
南部の香港特別行政区で行われた式典で、中国の王毅外相(中国共産党中央政治局委員)が、政府間の国際機関「国際調停機構(International Organization for Mediation、IOMed)」の設立条約の署名式に出席しました。
IOMedは、国際紛争を調停によって解決することに特化した、世界初の政府間の法的機関です。構想は2022年に中国と18カ国が共同で打ち出され、今回の署名で具体的な枠組みづくりが一歩進んだ形です。
署名式には、85カ国と約20の国際機関から、およそ400人のハイレベル代表が参加しました。このうち33カ国がその場で設立条約に署名し、IOMedの創設メンバーとなりました。
王毅外相は、創設メンバーとなった各国に祝意を表したうえで、出席者が共有する目的として、紛争の平和的解決と各国の友好的な協力を一層進めることを挙げました。
IOMedはどんな役割を担うのか
王毅外相によると、これまで、国際紛争の平和的解決だけを目的とする政府間の法的機関は存在していませんでした。IOMedは、この「空白」を埋める新たな仕組みとして設計されています。
IOMedが扱うことを想定しているのは、次のような紛争です。
- 国家と国家のあいだの紛争
- 国家と海外投資家とのあいだの紛争
- 国境をまたぐ商取引などに関する国際商事紛争
いずれも、当事国や当事者が「自発的に」調停を求める場合に支援する仕組みとされています。つまり、強制的な裁きではなく、当事者の合意に基づいて第三者が仲介し、柔軟な解決策を探ることに軸足を置いた機関です。
王毅外相は、IOMedが国際調停の制度的な空白を埋め、法の支配にもとづく国際秩序を支える「重要な国際公共財」として、グローバル・ガバナンス(国際社会のルールづくりと運営)を強化する役割を担うと述べました。
本部はなぜ香港に置かれるのか
設立条約の交渉に参加した国々の協議の結果、IOMedの本部は香港に置かれることが決まりました。
王毅外相は、香港がコモンロー(英米法)と大陸法の両方の伝統を併せ持つ独自の強みを指摘し、国際調停の分野で他にない優位性があると評価しました。金融・ビジネスの国際拠点であり、アジアと世界の交差点に位置することも、調停機関の本部としての適性を高める要素といえます。
香港とIOMedは「ともに成長し、相互に補完し合う」関係になると期待が示されており、国際紛争解決の新たなハブとしての香港の役割が一段と意識されそうです。
これからの課題と各国への呼びかけ
今回署名された設立条約が実際に効力を持つには、各国での批准(国内手続きによる正式な承認)が必要になります。王毅外相は、署名国に対し、できるだけ早期に批准を進めるよう呼びかけるとともに、今後さらに多くの国がIOMedに参加することを歓迎する姿勢を示しました。
条約の発効と参加国の拡大が進めば、国家間の対立や投資紛争、企業間の国際商事紛争などで、裁判や仲裁だけでなく、政府間機関による調停という選択肢が現実味を帯びてきます。
日本やアジアのビジネスにとっての意味
国境を越えるビジネスが当たり前になった今、紛争をいかにコストとリスクを抑えながら解決するかは、日本企業やアジアの企業にとっても大きなテーマです。
香港に本部を置くIOMedが本格的に活動を始めれば、アジアに近い場所で、政府間の枠組みによる調停手続きが利用できる可能性が広がります。これは、
- 長期化しがちな国際裁判や仲裁よりも、柔軟で合意重視の解決策を求めたいケース
- 国家と投資家のあいだで、政治的な緊張をできるだけ抑えて解決したい紛争
などで、選択肢の一つとして検討されていくかもしれません。
今後、どの国が条約を批准し、どのような案件でIOMedが活用されていくのか。国際ニュースとしての注目だけでなく、日本のビジネスや投資に関わる人にとっても、実務的な意味を持つ動きになっていきそうです。
Reference(s):
World's first intergovernmental mediation body set up in Hong Kong
cgtn.com








