端午節に隠れた健康の知恵 ドラゴンボートだけではない養生文化
ドラゴンボートやちまきで知られる中国の端午節。今年2025年は土曜日に当たりました。春から夏へと季節が切り替わるタイミングで祝われるこの行事には、派手なレースや詩人・屈原をしのぶ物語の陰で、病気を遠ざけて心身を整えようとする健康の知恵が受け継がれています。
端午節はなぜ健康の節句なのか
端午節(Duanwu)は、春と夏の境目にあたる時期に行われる行事です。この季節は気温と湿度が同時に上がりやすく、虫が増え、病気を運ぶリスクも高くなるとされてきました。自然環境が大きく変化するなかで、どのように体調を守るかという切実な問いに向き合う中から、端午節の習慣が育まれてきたと考えられます。
ちまき(粽)、ドラゴンボートレース、屈原をしのぶ行事など、端午節の代表的な風習は世界的にもよく知られるようになりました。しかし、その背景には、古代中国の養生思想に根ざした予防医学的な発想があります。行事をとおして病気を「治す」のではなく、そもそも「近づけない」ことを目指してきたのです。
古くから続く予防と養生の発想
季節のリスクを見極める
端午節のタイミングは、気候の変化が体調に影響しやすい時期と重なります。人びとは、暑さや湿気、虫による病気といったリスクを意識しながら、どの季節にどんな不調が起こりやすいのかを経験的に見極めてきました。これは現代で言えば、季節ごとに生活リズムやセルフケアの重点を見直す発想に近いと言えるでしょう。
日常生活そのものを「お守り」にする
端午節に行われるさまざまな儀式は、長い時間をかけて発展してきた複合的な工夫です。食べ物のとり方、家や身の周りの整え方、人との集まり方など、日常生活の細かな部分に「予防」の視点を織り込み、暮らし全体をととのえることをめざしています。
たとえば、家族や地域の人びとが一緒にちまきを囲むことは、高温多湿で食欲が落ちがちな時期に、きちんと食事をとるきっかけにもなります。単なるごちそうではなく、「この時期こそしっかり栄養をとろう」というメッセージを共有する場だと見ることもできます。
心の落ち着きも健康の一部
人びとが集まり、ドラゴンボートレースを楽しみ、屈原の物語を語り継ぐことは、単なる娯楽や追悼ではありません。季節の変わり目の不安や緊張感を、共同体で分かち合い、物語や儀式の形で受け止めることで、心の負担を軽くしようとする働きもあります。
現代の言葉で言えば、端午節には身体だけでなく、メンタルヘルスにも目を向けるホリスティックな(全体的な)健康観が込められていると考えられます。体と心、そして人と人とのつながりを切り離さずにとらえる視点です。
2025年の私たちにとっての端午節のヒント
2025年の端午節はすでに過ぎましたが、その健康の知恵は、年末を迎える今の時期にも通じるものがあります。季節が変わるたびに体調や気分が揺らぎやすいのは、現代の私たちも同じです。端午節に込められた発想を、自分の生活に引き寄せて考えてみることができます。
- 季節の変わり目には、体調の変化を「当たり前のもの」として受け止め、早めに休息やケアを入れる。
- 食事や住まいの環境を少しととのえることで、病気のリスクを減らせると考え、無理のない範囲で工夫してみる。
- 家族や友人と行事や時間を共有し、安心感やつながりを感じることも健康の一部だととらえる。
古い行事に込められた養生の知恵を読み解くことは、中国の伝統文化を知る手がかりであると同時に、私たち自身の暮らし方や健康との向き合い方を見直すヒントにもなります。カレンダーに並ぶ祝日を、単なるイベントとして消費するのではなく、季節とからだの対話の場としてとらえ直してみると、新しい発見が生まれるかもしれません。
Reference(s):
The health wisdom embedded in Dragon Boat Festival traditions
cgtn.com







