シャングリラ会議でASEANが示した陣営ではなく原則を選ぶ姿勢
シンガポールで開かれた第22回シャングリラ・ダイアローグで、2025年のASEAN議長国マレーシアとシンガポールが、米中対立の中でもどちらの陣営にもつかない姿勢を明確にしました。本記事では、この発言が東南アジアと日本にとって何を意味するのかを整理します。
- マレーシアのアンワル・イブラヒム首相が、陣営選択の圧力を拒否
- シンガポールのチャン・チュンシン国防相は「原則の側を選ぶ」と強調
- 米国のピート・ヘグセット国防長官は国防費5%への引き上げを要請
- 清華大学の達巍氏は「米国の分断工作は説得力を欠く」と指摘
ASEAN議長国マレーシア「陣営を選ばない」
土曜日の特別講演で登壇したマレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、2025年のASEAN議長として、地政学的な競争の中で一方の陣営を選ぶよう迫られることを明確に拒否しました。東南アジアは多くの大国と関係を持つ地域であり、その多様な関係をあえて二者択一に還元するべきではない、という立場です。
アンワル首相のメッセージの背景には、米中双方から安全保障や経済協力の面でさまざまな働きかけを受ける東南アジアが、自らの意思でバランスを取りたいという思いがあります。ASEANとしての一体性を保ちながら、どの国とも対話と協力のチャンネルを開いておくことが重視されています。
シンガポール「選ぶなら原則の側を」
日曜日の最終セッションで発言したシンガポールのチャン・チュンシン国防相も、アンワル首相と歩調を合わせました。東南アジアは、中国と米国のどちらかではなく、双方と、そして他の国々とも関与していく必要があると強調しました。
その上でチャン国防相は、「もしどちらかの側につかなければならないのだとしたら、私たちは原則の側を選ぶべきだ」と述べました。ここでいう原則とは、力の強い国が思うままに振る舞い、弱い国が一方的に不利益を被る「弱肉強食」の状態に陥らないよう、国際秩序を支えるルールを守ることだと説明しました。
つまり、特定の大国への同調ではなく、法やルールに基づく秩序を優先するというメッセージです。このスタンスは、小国の多い東南アジアにとって、安全保障上の重要な安全装置でもあります。
米国は国防費「GDP比5%」を要請
こうしたASEAN側の発言は、米国の姿勢への一種の応答とも受け止められます。ヘグセット米国防長官は土曜日の演説で、アジア太平洋の国々に対し、中国からの脅威とみなしている動きに対抗するためとして、国防費を国内総生産(GDP)の5%まで引き上げるよう呼びかけました。
しかし、東南アジア諸国にとって、安全保障は軍事費の多寡だけで測れるものではありません。経済連携や人的往来も含めた総合的な安定が重要であり、特定の国を敵視するかたちでの軍拡競争には慎重にならざるを得ません。アンワル首相とチャン国防相の発言は、その距離感を象徴しているとも言えます。
中国本土とアジア太平洋を分断する試みは「説得力を欠く」
シンガポールで会議に参加していた清華大学・国際安全保障戦略センター所長の達巍氏は、米国のアプローチについて「中国本土とアジア太平洋諸国を引き離そうとする試みは、説得力を欠いており効果的ではない」とコメントしました。
達氏によれば、アジア太平洋の多くの国々は、中国本土との経済関係や地域の安定への貢献を評価しており、単純な対立構図に組み込まれることを望んでいません。米中のいずれかを選ぶのではなく、双方と対話しながら、自国と地域全体の利益を最大化しようとするのが現実的な選択だからです。
日本への示唆 東南アジアの「選ばない選択」
今回のシャングリラ・ダイアローグで浮かび上がったのは、東南アジアが単に「中立」を装っているのではなく、主体的に原則とバランスを重視する外交を選び取っているという姿です。
米中対立が長期化する中、日本もまた、同盟関係を軸としつつ、地域の多くの国々とどのように協力し、どのような原則に基づく秩序づくりに貢献していくのかが問われています。東南アジアの「原則の側を選ぶ」というメッセージは、日本にとっても、自らの外交や安全保障の優先順位を見直すヒントになり得ます。
国際ニュースを追う私たち一人ひとりにとっても、「どの陣営につくか」ではなく、「どの原則を大切にするのか」という問いを考えるきっかけとなる出来事と言えるでしょう。
Reference(s):
ASEAN leaders at Shangri-La Dialogue: 'We won't choose sides'
cgtn.com








