SDGsへ科学協力強化を 中国科学院70周年で国際科学者ら訴え
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成期限である2030年まで残り5年を切る中、中国と海外の科学者が北京で集まり、最先端の科学技術による国際協力を一段と強化すべきだと呼びかけました。
セミナーでは、気候変動や環境汚染など地球規模の課題に対し、科学界がどのように連携し、どんな責任を果たすべきかが話し合われました。
北京で開かれた「持続可能な開発と包摂的協働」セミナー
この動きの舞台となったのは、中国科学院(CAS)の学部創立70周年を記念して土曜日に北京で開かれたセミナー「Sustainable Development and Inclusive Collaboration: Responsibilities of the Scientific Community(持続可能な開発と包摂的協働―科学界の責任)」です。
会合には、中国と海外の科学者に加え、14の国と地域から科学アカデミーや国際科学機関のトップら60人以上が参加し、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた科学協力のあり方を議論しました。
複雑化する地球規模課題と科学の役割
中国科学院の侯建国(ホウ・ジエングオ)院長は、気候変動や環境汚染、資源の希少化、食料安全保障などの地球規模課題が、互いに絡み合いながら深刻さを増していると指摘しました。
さらに、急速に進む新たな技術革新が、世界の持続可能な発展の姿を大きく変えつつあると述べ、科学技術の活用が課題解決に不可欠になっていると強調しました。
侯院長によると、中国の国家的な科学研究機関である中国科学院はこれまで、
- 生態系の保全
- 生命科学と健康
- エネルギー技術
といった分野で研究体制を強化し、新しい技術を持続可能な発展に生かす道を探ってきました。
中国科学院が掲げる今後の重点分野
今後について侯院長は、中国科学院が一層「開かれた研究機関」として、世界のパートナーや各国の第一線の科学者との協力を深めていく方針を示しました。
具体的には、次のような取り組みを進めるとしています。
- 重点研究分野での国際共同研究の拡大
- 若手を含む人材交流と共同育成の強化
- 持続可能な発展に関する助言・評価活動の推進
- 持続可能性に関わるオープンデータの共有促進
- 人工知能(AI)の力を活用した新たな解決策の探索
こうした取り組みを通じて、中国科学院は国際社会とともにSDGsの達成に貢献していく考えです。
豪州・ロシア・国際組織トップも「協力」を強調
セミナーでは、中国以外の主要な科学機関のトップも、包摂的な科学協力の重要性を口々に訴えました。
豪州アカデミー会長「科学は地政学を超える力」
オーストラリア科学アカデミーのチェンナプティ・ジャガディッシュ会長は、中国の科学者との半世紀にわたる自らの協力関係や、オーストラリアと中国の制度的な連携の歴史を振り返りました。
そのうえで、量子技術や人工知能(AI)といった変革的な分野では、とりわけ国境を越えた協力が欠かせないと指摘しました。科学には地政学的な境界を乗り越え、グローバルな協力を促す力があると強調しました。
ロシア科学アカデミー「中国との協力を最優先」
ロシア科学アカデミー(RAS)のセルゲイ・チェルニシェフ副会長は、RASが中国との協力を重視していると述べました。
今後の中国科学院との連携は、地球規模の課題への対応を進めるうえで不可欠であり、二国間関係を強化するうえでも重要な役割を果たすとの見方を示しました。
国際科学会議「中国科学院は世界科学のリーダー」
国際科学会議(ISC)のピーター・グラックマン会長は、中国科学院が世界的な科学のリーダーとしての地位を確立していると評価しました。
その理由として、研究成果だけでなく、多くの国や機関とのパートナーシップ、そして科学を地球規模の共同作業として推進してきた姿勢を挙げました。
国際科学会議は、科学の原則を守りながら国際的な科学協力を促進し、科学が今後も世界の課題解決に貢献し続けるよう支えていくとしています。
なぜ「包摂的な科学協力」が今、注目されるのか
今回のセミナー全体を貫いていたキーワードは、持続可能な開発と包摂的協働です。背景には、どの国も単独ではSDGsを達成できないという現実があります。
例えば、
- 気候変動対策には、世界各地の観測データとモデルの共有が不可欠
- 新興感染症や健康課題への対応には、生命科学や医療研究での連携が必要
- エネルギー転換には、クリーンエネルギー技術の共同開発と普及が重要
といったように、多くの課題が国境を越えてつながっています。こうした中で、中国科学院をはじめとする各国の科学アカデミーや国際機関が、互いの強みを生かしながら協力を深められるかどうかが問われています。
2025年の視点から見える問い
2025年時点で、2030年までの時間は限られています。北京のセミナーで示されたメッセージは、次のような問いとして私たちにも投げかけられているように見えます。
- 科学技術の最前線は、SDGsの具体的なターゲット達成にどう結びつくのか
- 国と国の関係が揺れる時期に、科学者同士の信頼と協力をどう守り、育てるのか
- オープンデータやAIなど新しいツールを、誰にとっても公正で包摂的な形で活用できるのか
中国と海外の科学者が北京で交わした議論は、アジアを含む世界全体にとって、科学と社会の関係をあらためて考えるきっかけになりそうです。
日本の研究機関や企業、そして次世代の研究者にとっても、SDGsと国際科学協力をどう結びつけるかは喫緊のテーマです。今回のセミナーで示された「開かれた協力」と「包摂性」というキーワードは、今後の国際ニュースと科学政策を読み解くうえで、重要な視点になっていくでしょう。
Reference(s):
Scientists urge greater collaboration for sustainable development
cgtn.com







