元設計者が語る中国J-10戦闘機の秘密 40年進化の舞台裏
中国製戦闘機J-10シリーズの開発に携わった元副主任設計者が、40年以上続く機体進化の舞台裏と最新型J-10CEの特徴を語りました。最近は国際紛争での役割から注目を集めるこの戦闘機は、なぜ今も現代的な姿と高い戦闘力を保っているのでしょうか。
40年以上前に始まったJ-10と輸出型J-10CE
J-10は、中国南西部の成都市にある航空機メーカーで開発された単発・多用途戦闘機です。デルタ翼とカナードと呼ばれる前翼を組み合わせた独自のシルエットから、英語圏ではヴィゴラス・ドラゴンの愛称でも知られています。
その改良輸出型がJ-10CEです。単発・単座の第三世代多用途戦闘機と位置づけられ、空対空戦闘から地上攻撃まで幅広い任務に対応できるよう設計されています。開発開始は1980年代にさかのぼるとされますが、設計に関わったXie Pin氏は、2025年の今もなおJ-10シリーズが現役であり続ける理由を、継続的なアップグレードにあると説明します。
カナード翼が生む揚力と機動性
J-10シリーズの外観的な特徴のひとつが、機首付近に取り付けられたカナード翼です。カナードは前翼とも呼ばれ、主翼より前方に小さな翼を配置する方式です。
Xie氏は、このカナード翼と主翼前縁の交わる部分で渦が発生し、その渦が主翼上面を流れることで空気の流れが速くなり、結果として揚力が増すと説明します。揚力が増えれば、低速でも失速しにくく、急旋回や高度な機動がしやすくなるため、ドッグファイトと呼ばれる格闘戦で有利になるとされています。
同氏は、開発から40年以上たった今でもJ-10が美しく、現代的に見える理由として、このカナードを含む全体の空力設計の完成度を挙げています。
ステルス性を高める細かな工夫
J-10CEは、外見こそ基本設計を維持しているものの、レーダーに映りにくくするための工夫が積み重ねられています。例えば、操縦席のキャノピーには特殊な膜がコーティングされ、レーダー波の反射を抑える役割を果たしているとされます。
さらに目を引くのが、機体下面に設けられた独特のエアインテークです。Xie氏によれば、J-10CEの吸気口はクラムシェル型インテークと呼ばれ、機体下面に取り付けられた吸気口の中央に隙間を設けることで、表面近くを流れるエネルギーの低い境界層の空気を分離して排出します。
この構造により、吸気効率が高まり、機体の抵抗を減らすことができるだけでなく、従来型に比べて構造重量も軽くできるといいます。小さな形状の工夫の積み重ねが、結果としてステルス性と運動性能の両立につながっているというわけです。
レーダーと兵装の進化で一気に長視野へ
J-10CEの強みは、機体そのものだけでなく、搭載するレーダーや兵装システムの進化にもあります。Xie氏は、過去に携わったJ-7やJ-8といった戦闘機を引き合いに出し、かつての機体は遠距離の目標を捕捉できず、いわば近視の戦闘機だったと振り返ります。
これに対し、最新のレーダー技術を搭載したJ-10シリーズは、約200キロ離れた目標を探知できるとされています。敵機を視認するよりはるか前の段階で状況を把握できることは、現代の空戦において大きな優位性となります。
兵装面でも、J-10戦闘機には11カ所の外部ハードポイントが設けられ、各種ミサイルや誘導爆弾、ポッドと呼ばれる電子装備などを搭載可能です。目視外射程ミサイルと組み合わせることで、遠距離からの多目標同時攻撃や、強い電磁妨害環境下での精密な対地攻撃が可能だと説明されています。
ベテラン設計者が示す長寿命プラットフォームの姿
近年、国際ニュースでは新型ステルス戦闘機や無人機が注目を集めがちですが、J-10シリーズの歩みは、ひとつの戦闘機プラットフォームを長期間かけて改良し続けるという別の方向性を示しています。
開発から40年以上を経ても、空力設計を活かしつつコックピットやインテーク、レーダー、兵装などを段階的にアップグレードすることで、J-10CEは現在の戦場環境に適応し続けています。Xie氏の証言は、戦闘機開発が単なる新型機競争ではなく、既存機の能力をいかに引き出し続けるかという長期的な取り組みでもあることを物語っています。
国際紛争のニュースにJ-10の名前を見かけたとき、その背景には、こうした設計者たちの試行錯誤と、何十年にもわたる技術蓄積があることを思い浮かべると、軍事技術を見る視点も少し変わってくるかもしれません。
Reference(s):
Former designer decodes secrets of China's J-10 fighter jet series
cgtn.com








