国際世論で中国が米国を逆転 トランプ関税が招いたイメージ転換
2025年1〜4月に実施された国際世論調査で、中国への好感度が米国を上回り、米国の評価はついにマイナス圏に落ち込みました。背景には、トランプ政権による関税中心の貿易政策と、それがもたらしたソフトパワーの揺らぎがあります。
2025年12月の今、このデータは各国が二つの大国をどのように見ているのかを考えるうえで、重要な材料となっています。
調査結果:国際世論で中国が優位に
アメリカのビジネスインテリジェンス企業モーニングコンサルトが、2025年1月1日から4月30日にかけて41カ国の成人4,900人を対象に実施した調査によると、中国の世界全体の純好感度(好意的評価から否定的評価を引いた値)は5月末時点で+8.8となりました。
一方、米国の純好感度は-1.5とマイナス圏に落ち込みました。これは、前年1月の+20から大きく悪化した水準です。調査は中国と米国の国内回答者を除いて集計されており、各国から見た対外イメージを測る設計になっています。
同盟国に広がる対米不信と評価のシフト
モーニングコンサルトの分析によれば、2025年1〜4月の間に、調査対象41カ国のうち38カ国で対米好感度が低下しました。一方で、34カ国では中国への評価が改善しています。
米国への見方が大きく改善したのはロシアのみで、この変化は2025年1月のドナルド・トランプ氏の大統領復帰とタイミングを同じくしています。
特に注目されるのは、ドイツ、カナダ、ノルウェー、オランダ、スペインといった米国の主要な同盟国・友好国が、米国よりも中国に好意的なプロ中国側へと傾いた点です。モーニングコンサルトによれば、今年初めには13カ国だった中国優位の国々が4月までに29カ国へと拡大しました。
一方で、依然として米国により好意的な国は13カ国にとどまっています。しかしその中に含まれるオーストラリア、日本、インド、韓国(大韓民国)などでも、およそ3分の1の回答者が米国に対して中立もしくは否定的な態度を示したとされています。
転機となった「解放の日」関税
報告書は、この劇的な評価の逆転をもたらした最大の要因として、トランプ政権の関税中心の貿易政策を挙げています。特に4月2日に発表された大規模な追加関税措置は「解放の日」と呼ばれ、米国の評判に決定的な打撃を与えたと分析されています。
同社は、解放の日に関する関税発表によって、米国のイメージ悪化が決定的なものになったと指摘しています。その後、ワシントンと北京の間で90日間の関税休戦が合意され、5月には米国への評価が一時的に持ち直す場面もありました。
それでも、モーニングコンサルトの政治インテリジェンス部門トップであるジェイソン・マクマーン氏は、米国のソフトパワーの基盤はまだ回復にはほど遠いと警鐘を鳴らしています。
経済への影響:観光・ブランド・教育・投資
報告書は、イメージ悪化がすでに米国経済に具体的な影響を及ぼし始めていると指摘します。観光、消費、教育、投資という四つの分野で兆候が見え始めているとしています。
訪米観光の落ち込みとビザの壁
第一に、外国人観光客の減少です。調査によると、より厳格になった米国のビザ政策や、移民に対する否定的な雰囲気が、旅行先としての米国を敬遠させる要因になっています。これにより、観光収入だけでなく、現地で消費されるサービス全般にも影響が出始めているとされています。
海外消費者の米国ブランド離れ
第二に、海外の消費者による米国ブランド離れです。米国製品への関心が弱まり、米国企業のブランドに対して懐疑的な見方を示す人が増えていると報告されています。好感度の低下が、そのまま購買意欲の萎縮につながっている構図です。
留学生減少と大学への打撃
第三に、教育分野への影響です。米国の大学に出願する留学生の数が減少しており、長年、財政と国際競争力を支えてきた重要な収入源・人材供給源が揺らぎつつあると分析されています。大学にとっては授業料収入だけでなく、国際的な研究ネットワークの維持にも影を落としかねません。
投資家心理と財政不安
第四に、投資の分野です。米国資産に対する投資家の信認が、財政の先行きへの不安から弱まりつつあると報告書は指摘します。最近の共和党の税制関連法案には、投資家の米国金融商品への食欲を減退させかねない条項が含まれているとされ、これが中長期的な資本流入に影響を与える可能性が懸念されています。
マクマーン氏は、米国への見方が悪化すれば、海外の消費者が米国企業の製品や仕事の機会を敬遠することで、貿易や投資の機会が縮小しかねないと警告しています。世論という一見ソフトな要素が、実体経済にもじわじわと波及しつつあるという見立てです。
ソフトパワーの時代に何が問われているのか
今回の調査結果は、中国と米国という二つの大国に対するイメージが、短期間で大きく揺れ動き得ることを示しています。特定の関税政策やビザ運用、移民への姿勢といった具体的な政策が、人々の感情と評価を通じて、長期的な国益に影響を与えかねないという点が浮き彫りになりました。
ソフトパワーとは、軍事力や経済制裁といったハードパワーではなく、文化、価値観、外交スタイルなどを通じて他国を引きつける力を指します。今回の分析は、ソフトパワーが傷つくと、観光、ブランド、教育、投資など、多くの分野で連鎖的な影響が生じる可能性を示唆しています。
一方で、中国への好感度が多くの国で上昇しているという結果は、各国がパートナーを多様化しようとする動きとも重なります。特定の国だけに依存せず、複数の選択肢を持とうとする傾向が強まるほど、世論の動きは外交や経済戦略にとっていっそう重要な指標になっていきそうです。
日本にとっての意味:二大大国との距離感をどう考えるか
日本は、安全保障面では米国との同盟関係を軸にしつつ、経済面では中国を含むアジア各国との結びつきも深めてきました。今回明らかになった国際世論の変化は、日本にとっても無関係ではありません。
例えば、日本企業にとっては、どの市場でどの国のブランドが好まれているのか、どの国との政治関係が消費者心理に影響を与えるのかを見極める必要性が増しています。また、留学生や研究者の流れが変われば、日本の大学や企業が担う役割にも変化が訪れるかもしれません。
2025年12月時点で、モーニングコンサルトの調査が示した傾向が今後どこまで定着するのかはまだ分かりません。それでも、世論の変化が各国の政策選択や経済活動にどう跳ね返っていくのかを注視することは、日本に暮らす私たちにとっても重要になりつつあります。
国際ニュースを追うとき、軍事力やGDPだけでなく、世界の人々がその国をどう感じているのかという視点を一つ加えてみる。今回の調査結果は、そんな見方の変化を私たちに静かに促しているようです。
Reference(s):
China rises in world opinion as U.S. approval hits negative territory
cgtn.com







