北極の種子バンクに1万1,000点超 スヴァールバル世界種子貯蔵庫が新規寄託
北極の種子バンクに1万1,000点超 スヴァールバル世界種子貯蔵庫が新規寄託
2025年2月末、北極圏ノルウェー・スヴァールバル諸島のスヴァールバル世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)に、世界14カ所のジーンバンク(遺伝資源保存機関)が新たに1万1,200点以上の種子サンプルを寄託しました。将来の食料安全保障を支えるカギとして、作物の多様性の重要性があらためて浮かび上がっています。
世界14機関が参加した第67回の寄託
今回で67回目となる種子の寄託には、世界各地のジーンバンク14機関が参加しました。寄託されたのは、野菜や各地域に根付いた伝統作物の種子です。
施設の運営パートナーであるCrop Trustは、発表文の中で、これらの種子が栄養面や気候変動への適応力だけでなく、文化的なアイデンティティの維持にも不可欠だと強調しました。
- 寄託した機関:世界14のジーンバンク
- 新たに預けられた種子:1万1,200点超
- 寄託回数:通算67回目
- 現在保管されている種子:世界中から130万点超
スヴァールバル世界種子貯蔵庫とは
スヴァールバル世界種子貯蔵庫は、北極圏の永久凍土に位置するノルウェー・スヴァールバル諸島に設けられた、作物多様性のためのバックアップ施設です。世界中のジーンバンクに保管されている種子の「保険」のような役割を担い、予期せぬ災害や紛争などで各地のコレクションが失われても、再び取り出せるようにすることを目的としています。
現在、この施設には世界各地から集められた130万点以上の種子サンプルが保管されており、作物の多様性を守るための世界最大規模の安全なバックアップ拠点となっています。
作物多様性が食料安全保障にもたらすもの
今回の国際ニュースが示すのは、「どれだけ多くの種類の作物を守れるか」が、将来の食料安全保障に直結するという現実です。単一の作物や品種に依存した農業は、気候変動や病害虫の拡大に対して脆弱になりがちです。
作物の多様性が重要とされる背景には、次のような理由があります。
- 異なる環境条件に適した多様な品種があることで、異常気象が続いても収量を確保しやすくなる
- 病害虫に強い性質を持つ品種が、将来の育種(新品種づくり)の材料になる
- 栄養価の高い伝統作物や雑穀などを活用することで、食生活の偏りを是正しやすくなる
スヴァールバル世界種子貯蔵庫に保管されている種子は、こうした「将来の選択肢」を担保するための、長期的な備えでもあります。
野菜と伝統作物、文化をつなぐ種子
Crop Trustによれば、今回の寄託には野菜や伝統作物が多く含まれています。これらは単にカロリーや栄養を供給するだけでなく、各地域の料理や祭事、暮らし方と結びついた文化そのものを支える存在です。
ある地域で長く栽培されてきた在来の作物は、その土地の気候や土壌に合わせて選ばれてきた結果でもあり、人々の記憶や物語とも重なっています。種子を守ることは、そうした文化や歴史を次の世代につなぐことでもあります。
私たちはこのニュースから何を考えられるか
北極圏の小さな諸島にある施設で行われた今回の寄託は、日々の生活からは遠い出来事のように見えるかもしれません。しかし、極端な気象や不安定な国際情勢が続くなかで、世界規模で作物多様性を守る取り組みは、私たちの食卓の安全とも静かにつながっています。
日本に暮らす私たちにとっても、次のような視点を持つきっかけになりそうです。
- ニュースや商品表示を通じて、どのような作物や品種が使われているのかに意識を向けてみる
- 地域に根付いた作物や多様な食材を選ぶことで、多様性を支える一端を担う
- 気候変動や環境問題の議論の中で、「食料の多様性」という観点を意識してみる
スヴァールバル世界種子貯蔵庫への今回の寄託は、世界が協力して未来の食料を守ろうとする長期的なプロジェクトの一部です。遠く北極の種子バンクで交わされたこの小さな国際協力は、今後の地球規模の食料安全保障を考えるうえで、静かながら重要なニュースだと言えるでしょう。
Reference(s):
Global gene banks add over 11,000 seed samples to Svalbard Vault
cgtn.com








