世界初の南極「秋」生態系観測 中国砕氷船・雪竜2号が任務完了
南極の「秋」の生態系に焦点を当てた世界初の国際共同観測が、中国の砕氷船「雪竜2号」によって実施されました。今年5月28日に中国南部の海南省海口市へ帰港したこの航海では、208日間・約4万海里にわたるミッションの中で、多くの科学的成果が得られたとされています。
雪竜2号、208日・4万海里の南極ミッション
中国の砕氷船「雪竜2号」は、最新の南極航海で208日間にわたり約4万海里を航行し、今年5月28日に海南省海口市へ戻りました。この航海は、中国による第41次南極観測の一環であり、とくに南極の「秋」の生態系に焦点を当てた世界初の試みとして位置づけられています。
世界初の「南極の秋」国際共同観測
今回の第41次南極観測は、南極の秋の生態系に特化した世界初の多国間共同遠征となりました。参加したのは、中国、オーストラリア、韓国、アメリカ、マレーシア、ノルウェー、タイ、ニュージーランド、イギリスの9か国からの研究者や技術者など計91人です。
この中には、上海交通大学海洋学院からの教員と学生10人も含まれており、若手研究者が国際チームの一員として極地研究の最前線に立ったことも特徴です。
氷結が始まる「20日間」に集中調査
現地での本格的な海洋調査は、3月27日から4月15日までの20日間に行われました。この時期は、南極で海氷の形成が進み始める重要なタイミングです。
研究チームは、4本の観測ライン(トランセクト)に沿って24か所の観測点を設置し、海洋観測を実施しました。気温はマイナス20度前後という過酷な条件のなかで、次のような5,000点以上のサンプルが採取されました。
- 海水の鉛直プロファイル(ウォーターコラム)
- ろ過膜に集めた微生物などの試料
- 海底堆積物コア
- さまざまな生物試料
- 海氷のサンプル
これらのサンプルは、南極の秋から冬にかけて海洋環境と生態系がどのように変化していくのかを明らかにするための基礎データとなります。
食物連鎖を丸ごと捉える「世界初の体系的研究」
今回の観測で特に注目されるのが、南極の食物連鎖(トロフィックレベル)を「層」としてまとめて捉えようとする世界初の体系的研究が行われた点です。
研究チームは、南極の秋の氷結期に、次のような主要な生物群を対象に調査を行いました。
- 動物プランクトン
- 南極オキアミ
- 中層に生息する魚類(中層魚)
- 海鳥
- クジラなどの海洋哺乳類
こうした複数の段階を一体的に調べることで、南極の生態系が秋から冬にかけてどのようにエネルギーと物質を循環させているのかを、より立体的に理解できるとされています。
「暗く、寒い冬」にどう適応しているのか
研究のねらいの一つは、極域の生物が冬の厳しい低光環境にどのように適応しているかを明らかにすることです。日照時間が急激に短くなり、海氷が広がるなかで、生物たちは行動や生理機能を変化させながら生き延びています。
今回の成果は、そうした適応のしくみについて新たな光を当てるものとされており、今後の詳細な分析が期待されています。
深海へ運ばれる「炭素」の動きを追う
もう一つの重要なテーマが、海氷が形成される季節に、炭素がどのように深海へ運ばれていくのかという「炭素輸送」のプロセスです。
動物プランクトンやオキアミ、中層魚、海鳥や海洋哺乳類といった生物は、海水中の有機物を取り込み、排出物や死骸が沈降することで、深い海へと炭素を運ぶ役割を担っています。秋から冬にかけて海氷が成長する時期に、このプロセスがどう変化するのかを理解することは、地球全体の炭素循環を考えるうえでも重要です。
国際協力で進む極地研究――私たちへの問い
今回の雪竜2号による南極観測は、多国籍チームによる「南極の秋」生態系研究として世界初のケースとなりました。極地の変化は、海面上昇や気候パターンを通じて世界各地の社会や経済にも影響を与える可能性があります。
遠く離れた南極で、どのような生物が、どのようなリズムで暮らし、どのように炭素を深海へ運んでいるのか――。今回集められた5,000点を超えるサンプルの分析が進むことで、そうした問いに対する答えが少しずつ明らかになっていくはずです。
スマートフォン越しにニュースを読む私たちにとっても、「地球規模の変化をどう把握し、どのような行動につなげていくのか」という問いを静かに投げかけるプロジェクトだと言えるでしょう。
Reference(s):
A world 1st: Xuelong-2 wraps up Antarctic autumn ecosystem mission
cgtn.com








