国際ニュース:世界の投資家が米国市場から撤退 通商不安と財政赤字への警戒
世界の投資家が米国市場から退却 何が起きているのか
米国の通商政策の不透明感と急速に膨らむ財政赤字への懸念から、世界の機関投資家が米国市場から資金を引き揚げ、他地域へとシフトしつつあります。英フィナンシャル・タイムズ紙が今週木曜日付で報じた動きは、2025年の国際金融市場にとって大きな転換点となる可能性があります。
揺れる米国の通商政策とドル安
報道によると、米国政府の一貫性を欠く通商政策が世界の市場をかき乱し、今年の米ドル安と米国株式・債券市場の低迷につながっていると指摘されています。関税措置の出し入れや交渉スタンスの急な変更が続けば、企業も投資家も長期的な前提を置きにくくなります。
こうした政策の揺らぎは、世界の基軸通貨である米ドルへの信認にも影響し、為替相場のボラティリティ(変動の大きさ)を高めているとみられます。
減税と財政赤字拡大への不安
投資家心理を冷やしているもう一つの要因が、トランプ政権が掲げる大型減税です。政権側がアピールする「ビッグで美しい」税制改革は、米議会予算局の試算では今後10年間で税収を3.7兆ドル減らし、財政赤字を2.4兆ドル押し上げると見込まれています。
経済を短期的に押し上げる効果が期待される一方で、長期的には「持続不可能な財政赤字」への懸念が強まっています。8,000億ドル近い資産を運用する米投資会社アライアンス・バーンスタインは、現在の米国の財政赤字は持続可能とは言い難く、通商政策の不確実性も重なって、米国市場への過度な依存は見直されるべきだと指摘しました。
データで見る米国離れの兆候
こうした懸念は、投資行動にもはっきり表れています。バンク・オブ・アメリカが先月まとめたグローバル・ファンドマネジャー調査では、運用担当者の米国資産への配分比率が過去約20年で最低水準まで落ち込んだことが明らかになりました。世界のプロ投資家が、米国偏重のポートフォリオから距離を取りつつあることを示しています。
複数の大手機関も、米国資産へのスタンスを変え始めています。
- アライアンス・バーンスタインは、米国の財政と通商政策の不確実性を理由に、米国市場への依存度を再検討すべきだとコメント。
- 英資産運用会社シュローダーは、投資家が米国市場から離れ始めている初期の兆しをすでに観測しているといいます。
- 米運用会社ニューバーガー・バーマンでは、今年のプライベート・エクイティ(未公開株投資)の約65パーセントが欧州向けとなり、従来の2〜3割から大きく比重が高まりました。
- カナダで2番目に大きい年金基金であるCDPQも、ポートフォリオ全体の約4割を占める米国資産の比率を引き下げ、リスクを抑える方針を表明しています。
問い直される「アメリカ例外主義」
フィナンシャル・タイムズは、多くの機関投資家が「アメリカ例外主義」の考え方そのものに疑問を投げかけ始めていると指摘します。長年、「迷ったら米国資産」とされてきたほど、米国市場は安定性と成長性の両方を兼ね備えた存在として評価されてきました。
しかし、政策の予見可能性が低下し、財政運営にも警戒が広がるなかで、「世界の安全な避難先」としての米国の位置づけが揺らいでいるという見方が出ています。その結果として、投資家は欧州やその他の地域に視野を広げ、より分散されたポートフォリオを志向し始めています。
日本の個人投資家への示唆
では、日本で資産運用をする私たちにとって、この国際ニュースはどんな意味を持つのでしょうか。
- 米国一本足からの分散:インデックス投資などで米国株への比率を高めてきた人にとって、機関投資家の動きは「米国一辺倒でよいのか」を考え直すきっかけになりそうです。
- 政策リスクをどう見るか:企業業績や経済指標だけでなく、通商政策や財政政策といった「政策リスク」が資産価格に及ぼす影響を意識する必要があります。
- 長期視点の重要性:短期的な米国市場の不調やドル安だけでなく、10年単位での財政・経済の持続可能性をどう見るかが、これからの長期投資のカギになります。
これからの視点:米国離れは一時的か、構造的か
現時点では、世界の投資マネーの「米国離れ」が一時的な調整なのか、それとも構造的な転換点なのかははっきりしていません。ただ、複数の大手機関投資家が同時に米国の政策運営に疑問を投げかけ、実際の資金配分を変え始めていることは、無視できないシグナルです。
国際ニュースを追う際には、株価や為替の一日ごとの動きだけでなく、こうした資金の流れや投資家の「前提」がどう変わっているのかに目を向けることで、世界経済の見え方が大きく変わってきます。米国市場の揺らぎは、同時に「世界のどこで、どのようにリスクを取るか」を改めて考えるタイミングでもあります。
日々のニュースをきっかけに、自分自身のポートフォリオやリスクの取り方を静かに見直してみる。そんな習慣が、2025年という不確実な時代を乗り切るヒントになるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








