中国主導の深海国際ニュース ハダルゾーン探査で国連公認へ
地球で最も深く暗い「ハダルゾーン」の探査で、中国の研究機関が主導する国際プロジェクトが、国連の海洋科学イニシアチブに正式認定されました。深海研究と海洋保全を結びつけるこの動きは、2025年の国際ニュースとしても注目を集めそうです。
国連が認定したグローバル・ハダル探査計画とは
今回、国連の「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021~2030年)」に公式に承認されたのが、グローバル・ハダル探査計画(Global Hadal Exploration Programme=GHEP)です。
GHEPを主導するのは、中国科学院(CAS)傘下の深海科学・工学研究所(Institute of Deep-sea Science and Engineering=IDSSE)です。これまでばらばらに進められてきたハダルゾーン研究を、地球規模の協調的なミッションへとまとめ上げ、「探査・理解・保全」を一体で進めることを目標としています。
ハダルゾーンとは 6,000~1万1,000メートルの極限世界
ハダルゾーンとは、主に海溝と呼ばれる海底の深い溝を指し、およそ水深6,000メートルから、最深部では約1万1,000メートルに達する領域です。
この環境は、次のような特徴を持つ「極限の世界」とされています。
- 極端な高水圧
- 太陽光がほとんど届かない暗闇
- 低い水温
- 頻繁な地震活動
- 特殊な適応を遂げた生物の存在
長らく技術的な制約があったため、人類が足を踏み入れた回数も少なく、地球上で最も未解明な領域の一つとされてきました。
この10年の挑戦が土台に 中国の深海探査の歩み
中国は過去10年ほど、深海探査の分野で着実に取り組みを進めてきました。その流れが、今回の国際プロジェクトの土台になっています。
- 2014年:中国科学院が「ハダル科学技術プログラム」を開始
- 2016年:マリアナ海溝で水深1万メートル級への歴史的な潜航を実施
- 2022年:有人潜水船「奮闘者(Fendouzhe)」と探査船「探索」シリーズを活用した「世界海溝潜航・探査プログラム」を始動
こうした継続的な科学技術の蓄積が、世界各地の海溝を視野に入れたGHEPの立ち上げにつながっています。
9つの海溝を調査 10カ国145人の研究者が参加
これまでに中国の研究者たちは、10カ国から集まった145人の研究者と協力し、世界の9つのハダル海溝を調査してきました。マリアナ海溝のほか、ケルマデック海溝やプイセガル海溝など、各地の極限環境が対象となっています。
こうした共同探査を通じて、ハダルゾーンに生きる独特な生物、極限環境で進む地質プロセス、地球内部の動きなど、多くの手がかりが集まりつつあります。
2025年から本格始動するGHEPの役割
GHEPは2025年から、本格的に国際研究のハブとして動き出す予定です。極限環境、生命進化、地質プロセスといったテーマごとに、世界の研究を束ねていきます。
具体的には、次のような取り組みが計画されています。
- 国際的な研究拠点(ハブ)の設置
- 各国が参加する共同の深海潜航・探査航海の実施
- 定期的な国際シンポジウムの開催
- 試料や観測データ、設備などへのオープンアクセスの提供
- とくに若手研究者を対象としたトレーニングの実施
IDSSEの主要研究者である杜夢然(デュ・モンラン)氏は、「より深く潜ることは、海を理解し、その海と共存する方法を見いだすことだ」と語っています。ハダルゾーンという「手つかずの領域」での国際協力が、深海保全と持続可能な利用に必要な知識をもたらすことが期待されています。
世界各地の研究機関が参加するネットワーク
GHEPには、すでに世界各地の研究機関が参加しています。参加する国・地域には、次のような名前が挙げられています。
- ニュージーランド
- デンマーク
- ドイツ
- チリ
- フランス
- インドネシア
- ブラジル
- ロシア
- インド
- クック諸島
- パプアニューギニア
- シンガポール
- ポルトガル
- そのほか複数の国・地域
南太平洋の島しょ国からヨーロッパ、アジアまで、多様な背景を持つ研究機関がハダルゾーンという共通のテーマで連携している点も、このプロジェクトの特徴です。
深海を知ることは私たちの未来を考えること
ハダルゾーンの探査は、一見すると遠い世界の話のように感じられるかもしれません。しかし、深海の理解は、海洋生態系を守り、海の資源を持続的に利用するうえで重要な基盤になります。
杜氏が語るように、「より深く知ること」が「共存」への一歩だとすれば、GHEPはそのための国際的な実験場といえます。今後、深海からどのような新しい知見がもたらされるのか。2020年代後半に向けて、ハダルゾーンは国際ニュースとしても、科学技術のフロンティアとしても、目が離せないテーマになりそうです。
Reference(s):
Into the deep sea: China joins global effort to explore hadal zone
cgtn.com








