世界初、チョモランマ北坡をワンカット撮影 中国人写真家の挑戦 video poster
世界最高峰チョモランマ(エベレスト)の北側斜面を、登頂の一部始終にわたって「一度もカメラを止めずに」撮影する——。2025年、この無謀とも思える挑戦を、中国の高所撮影のスペシャリスト、馬春林(マー・チュンリン)氏がやり遂げました。国際ニュースとしても、山岳映像表現としても注目すべき快挙です。
世界初の「ワンテイク登頂」
馬氏が成し遂げたのは、チョモランマの北側斜面から登山隊の動きを追い、頂上を目指す一連の行程を最初から最後まで一つのショットで撮るという試みでした。途中でカメラを止めたり編集でつなぎ合わせたりせず、「ワンカット」で描き切るのは世界で初めてとされています。関係者の間では「ミッション・インポッシブルが現実になった」と評されるほどの難度だったといえます。
わずか数週間の撮影ウィンドウ
この国際ニュースの背景には、きわめてシビアな条件がありました。撮影に使える登山シーズンの「窓」は数週間しかなく、その間にすべてを成功させなければ、挑戦は翌年以降に持ち越しになる状況だったといいます。
馬氏はエベレスト・ベースキャンプから標高6,500メートルのアドバンスド・ベースキャンプまで自ら歩を進め、高地での過酷な生活を送りながら、好条件が訪れる瞬間を待ち続けました。酸素の薄い極寒の環境でテント泊を重ね、「雲一つない青空」「風が弱い」「登山隊の進行ペースが計画どおり」といった条件がすべてそろうタイミングを見極める必要があったためです。
撮影は夜明けと同時にスタートしなければならず、その時刻は分単位で綿密に計算されました。登山ルートに合わせてカメラを動かし続ける必要があり、わずかな操作ミスがあれば全計画が台無しになる、文字通り「一発勝負」の現場だったといえます。
5年越しの夢がかなうまで
馬氏がチョモランマと向き合うのは初めてではありません。約5年前の2020年ごろには、すでに中国側(北側)からの登頂の様子を、複数のカットをつなぎ合わせた短編映像として完成させていました。
しかし、彼の頭から離れなかったのは「いつか必ず、この山の登頂を最初から最後まで一つのショットで撮り切りたい」という構想でした。その後も高地での準備と試行錯誤を重ねましたが、天候不良やタイミングの問題など、さまざまな理由で挑戦は何度も中断を余儀なくされてきました。
それでも馬氏はあきらめず、2025年の挑戦でついに長年の夢を形にしました。今回の成功は、個人の執念とチームの緻密な計画が結実した瞬間といえます。
なぜ「ワンカット」が注目されるのか
映画やドラマの世界では、長回しやワンカットの映像は、臨場感や没入感を高める表現手法として知られています。今回の登頂映像も、一度もカメラが切れないからこそ、視聴者は時間の経過や登山隊の緊張感、山の表情の変化をそのまま体感することができます。
一方で、過酷な高地での長時間撮影は、バッテリーや機材の管理、カメラワークの精度など、多くの技術的ハードルを伴うと考えられます。標高6,500メートル付近のアドバンスド・ベースキャンプでの待機から、夜明けの一瞬を逃さずカメラを回し続けるというプロセスは、山岳撮影の新しい可能性を示したと言えるでしょう。
極限の挑戦が私たちに投げかけるもの
今回のニュースは、山岳や映像の専門分野にとどまらず、「長く続く挑戦にどう向き合うか」という問いを私たちに投げかけています。5年越しの構想を粘り強く温め続け、限られたチャンスを逃さずに結果を出した馬氏の姿勢は、ビジネスや学び、日常生活にも通じるものがあります。
完成したワンカット映像は、画面の明るさを上げ、音に集中してフルスクリーンで見ることで、その迫力をより強く味わえる作品だとされています。スマートフォン一つで遠く離れた山頂で重ねられた「見えない努力」を目撃できる今だからこそ、この挑戦をきっかけに、自分自身のチャレンジのあり方を静かに見つめ直してみるのも良いかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








