国連海洋会議で中国が全球海洋データセットCGOF1.0を公開
中国が国連海洋会議で新たな全球海洋データを公開
気候変動や異常気象が深刻化するなか、中国がフランス・ニースで開かれている国連海洋会議のサイドイベントで、世界の海を網羅した新しいデータセット「China Global Ocean Fusion Dataset 1.0(CGOF1.0)」を発表しました。高精度の海洋情報を国際社会と共有しようとする取り組みとして注目されています。
このデータセットの公開は、国連機関や各国政府、海洋分野の専門家からも高い評価を受けています。
CGOF1.0とはどんな海洋データか
CGOF1.0は、高度な情報技術を活用して作られた高品質な海洋データセットです。国連海洋会議のサイドイベントで説明した中国国家海洋データ・情報サービスセンター(National Marine Data and Information Service)の研究者・于婷(Yu Ting)氏によると、主な特徴は次の通りです。
- 国内外40以上の異なる情報源からデータを統合している
- 中国の海洋観測データを組み込んでいる
- 約60年分という長期のデータを収録している
- 空間解像度は10キロメートルと細かい
- ディープラーニング(深層学習)、転移学習、機械学習などのAI技術を活用し、多くの国際的な主流データセットより高い精度を実現している
長期かつ高解像度のデータにAIを組み合わせることで、これまで見えにくかった海洋の変化やパターンを、より正確にとらえることが期待されています。
なぜ海洋データが今、世界で求められているのか
世界は現在、次のような複合的な課題に直面しています。
- 地球温暖化をはじめとする気候変動
- 台風や高潮、暴風雨などの災害の頻発・激甚化
- 海洋生物多様性の損失や生態系の劣化
- 持続可能な経済発展と海洋資源の利用の両立
こうした課題に取り組むうえで、海洋データは基盤となるインフラです。海面水温や海流、塩分濃度などの情報が長期間にわたり整備されれば、
- 気候変動や極端現象の予測精度の向上
- 沿岸地域の防災・減災計画の高度化
- 海洋生態系の変化のモニタリング
- 持続可能な海洋経済を検討する際の科学的な根拠の強化
など、多方面での活用が期待できます。CGOF1.0は、こうしたニーズに応える国際的な海洋データの一つとして位置づけられます。
国連機関や各国専門家が示す評価
UNESCO海洋学委員会・ヘルゲセン氏「データ共有が鍵」
国連教育科学文化機関(UNESCO)・政府間海洋学委員会(Intergovernmental Oceanographic Commission)の事務局長、ビダール・ヘルゲセン氏は、海洋データを共有することの緊急性を強調しました。
ヘルゲセン氏は、海でより多くの極端気象が発生し、生物多様性の崩壊が進み、多くの変化が沿岸地域のコミュニティを脅かしていると指摘。そのうえで、こうした脅威に対してより良い予測と備えを行うには、データの共有が不可欠だと述べました。
さらに、同氏は中国が海洋政策や観測の分野で示しているリーダーシップを評価し、急速に変化する海洋環境に向き合うため、各国が努力を強め、協力を深める必要があると呼びかけています。
インドネシアとチリが見るCGOF1.0の意義
インドネシア気象気候地球物理庁のドウィコリタ・カルナワティ長官は、世界全体で見ても海洋データは依然として限られていると指摘し、特に開発途上国にとって中国の役割は非常に重要だと述べました。
カルナワティ長官によると、中国が提供するデータは自国のニーズにとどまらず、国際社会にとっても価値が高いものであり、とりわけ海洋の安全性向上や早期警戒システムの強化に貢献しているといいます。同氏は「多くの目的にとって、このデータは非常に意味がある」と評価しました。
また、チリ国民議会図書館の自然資源・科学技術部門コーディネーターであるレオナルド・アランシビア氏は、水温や塩分などの主要なパラメーターを過去数十年にわたり含む、統一的な全球海洋データベースを構築することの重要性を強調しました。
アランシビア氏は、中国が公開したデータは、地球規模と地域レベルの両方の視点から海洋の変化を分析し、理解するうえで大きな意義を持つと評価しています。
オープンな海洋データが切り開く次のステージ
CGOF1.0の公開は、まだ限られている世界の海洋データのギャップを埋める一歩といえます。特に、独自の観測網を十分に持てない国や地域にとっては、気候リスクや海洋災害に備えるための基盤整備につながります。
同時に、どこまでデータを公開し、どのようなルールで共有するのかという議論も、今後いっそう重要になっていきます。高精度な海洋情報を国際社会で分かち合いながら、地球規模の課題にどう向き合うのか。
ニースでの国連海洋会議は、科学データを軸に協力を広げるための一つの試金石となりそうです。スマートフォン一つで世界のニュースにアクセスできる私たちにとっても、海の見えない変化を「データ」でどう捉え、次の行動につなげていくかが問われています。
Reference(s):
cgtn.com








