中国アニメ『哪吒2』が世界席巻 ドン族合唱×シンセの衝撃 video poster
2025年現在、世界で旋風を起こしている中国アニメ映画『哪吒2』。その裏で、国際ニュースとしても注目されているのが、サウンドトラックに込められた「中国の文化コード」です。
作曲家・楊瑞(Yang Rui)さんは、約2500年の歴史を持ち、ユネスコのリストに登録されたドン族の合唱を取り入れ、それを一気にテンションを引き上げるバトルソングへと変貌させました。古代の旋律と現代のシンセウェーブを掛け合わせることで、東方の伝説を語るための新しい音楽言語が生まれ、時代を超える物語に現代的な生命を吹き込んでいます。
『哪吒2』の音楽が象徴する「中国の文化コード」
映画『哪吒2』は、古くから伝わる東方の英雄譚をベースにしつつ、その見せ方や聞かせ方はきわめて現代的です。中でも音楽は、伝統とデジタル技術が大胆に交差するポイントになっています。
従来の神話映画では、重厚なオーケストラや民族楽器が主役になることが多かったのに対し、『哪吒2』では、シンセサイザーを軸にしたエレクトロサウンドと、ドン族の多声合唱が正面からぶつかり合います。その結果として生まれているのは、「古いのに新しい」「ローカルなのにグローバル」なサウンドです。
ユネスコ登録のドン族合唱とは
楊瑞さんが素材として選んだドン族の合唱は、中国南部で受け継がれてきた伝統音楽で、約2500年前から続くとされています。指揮者を置かず、歌い手同士の呼吸だけでハーモニーを紡ぐのが特徴で、その独特の響きが評価され、ユネスコのリストにも登録されています。
もともとは村人の日常や自然への敬意、恋愛や祭礼などを歌う素朴な音楽でしたが、『哪吒2』の中では、神々と英雄がぶつかるバトルシーンを支える力強いコーラスとして再構成されています。
作曲家・楊瑞が生み出した「電撃バトルソング」
ドン族合唱をそのまま映画に流すのではなく、どう現代の観客に届く形に変えるか。ここに楊瑞さんの腕が光ります。
2500年の時間差を一曲の中に
- まず、伝統的なドン族合唱の旋律やハーモニーをベースに、緊張感の高いフレーズを選び出す。
- そこにシンセウェーブ特有のうねる低音や、鋭いリズムを重ね、バトルシーンにふさわしい推進力を持たせる。
- コーラスの入り方やカットを細かく編集し、「英雄が覚醒する瞬間」「敵とぶつかる瞬間」など、ドラマの起伏にシンクロさせる。
こうして出来上がったのが、伝統合唱を土台にしつつも、ゲーム音楽やクラブミュージックに慣れた世代にも直感的に刺さる「電撃バトルソング」です。
東方の伝説を語る新しい音楽言語
古代の旋律とシンセウェーブを組み合わせる試みは、単なる「和洋折衷」や「伝統と現代のミックス」にとどまりません。楊瑞さんが目指しているのは、東方の神話世界を、現代のグローバルなリスナーが共有できる音の文法で語り直すことだといえます。
ドン族合唱が持つ祈りのような反復、自然の音を思わせる揺らぎは、シンセサウンドの持つ無機質さやスピード感と組み合わさることで、「古代」と「未来」が同時に鳴っているような不思議な時間感覚を生み出します。これこそが、『哪吒2』が提示する新しい音楽言語の核心です。
なぜ世界の観客に刺さるのか
- シンセウェーブのビートは、国や言語を超えて共有されているポップミュージックの共通言語になっている。
- そこに、これまであまり触れる機会のなかったドン族合唱が乗ることで、「聞いたことがないのに、どこか懐かしい」サウンドになる。
- 物語としては東方の神話だが、音としてはグローバルなリスナーの耳に自然に入ってくる設計になっている。
タイムレスな物語を、いまの音で
今回のサウンドトラックは、古い物語が現代において意味を持ち続けるには、語り方をアップデートする必要があることを示しています。物語そのものは変えず、使う音のパレットだけを大胆に変える。その結果として、『哪吒2』は「タイムレスな伝説を、2025年の耳で楽しめる作品」になっています。
伝統音楽とテクノロジーの融合というテーマは、アジア各地でも広がりつつあります。その中で、ユネスコ登録のドン族合唱とシンセウェーブを掛け合わせた楊瑞さんの挑戦は、「中国発の物語が世界でどう響くのか」を考えるうえで、象徴的なケーススタディだといえるでしょう。
スマートフォンでサントラを一曲聴くだけでも、「2500年前の歌声」と「いま鳴っているビート」が同じイヤホンの中で出会う体験ができます。通勤時間やスキマ時間に、そんな時間旅行のような音の世界に浸ってみるのも良さそうです。
私たちが注目したいポイント
- ドン族合唱という具体的な伝統文化資源を、生かしながらも大胆に変形していること。
- 東方の英雄譚を、世界のポップカルチャーの文脈に乗せて発信していること。
- 音楽が、言葉の壁を越えて物語の入口になっていること。
『哪吒2』の成功は、「文化は古いままではなく、更新され続けるからこそ生き残る」というシンプルな事実を改めて教えてくれます。耳から伝わるこのアップデートの感覚を、私たち一人ひとりの「物語の楽しみ方」にもつなげていきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








