Huawei任正非CEO「チップは一世代遅れ」も 科学と忍耐で半導体ギャップ克服へ
米国の輸出規制で先端半導体の調達が難しくなるなか、Huaweiの任正非CEOが「当社の単体チップは米国より一世代遅れている」と認めつつも、科学と長期的な投資でギャップを埋めていく方針を語りました。
米国の輸出規制と「一世代遅れ」の現状認識
中国の通信機器大手Huaweiの任正非CEOは、今週火曜日に人民日報に掲載されたインタビューで、自社の半導体戦略について率直に語りました。不公正だと指摘される米国の輸出規制が続くなかでも、「チップの問題を心配する必要はない」と強調し、長期的な技術戦略への自信を示しました。
任CEOは「当社の単体チップは、まだ米国より一世代遅れている」と現状を認めています。それでも、悲観するのではなく、科学的アプローチと時間を味方につけて差を縮めるという姿勢がにじみます。
クラスタ計算でチップ性能を底上げ
任CEOがカギとして挙げたのが、数学とクラスタ計算です。Huaweiは高度な数学的手法を用いて物理を補完し、「ムーアの法則を補う非ムーアの法則的なアプローチ」に取り組んでいるといいます。
その一例が、同社が最近発表したAIシステム「CloudMatrix 384」です。384個のAscend 910Cチップを接続して動作させるクラスタ構成で、単体のチップ性能だけに頼るのではなく、複数チップを連携させて全体としての計算能力を引き上げる設計です。一部報道では、競合するNvidiaなどのシステムと比べても、指標によっては同等かそれ以上の性能を示すと伝えられています。
任CEOは、こうしたアプローチによって「単体チップの遅れ」をシステム全体の工夫で補うことができると見ています。これは、半導体製造装置や先端プロセスへのアクセスが制約される環境で、いかに創意工夫を重ねるかという挑戦でもあります。
年間1800億元の研究開発、その3分の1を理論研究に
Huaweiの技術戦略を支えているのが、巨額の研究開発投資です。任CEOによると、同社の年間研究開発費は約1800億元(約250億ドル)にのぼり、そのおよそ3分の1を基礎理論の研究に充てているといいます。
注目すべきは、この基礎研究について「短期的な業績評価の対象にしない」と明言している点です。任CEOは「理論なくして突破はなく、理論なくして米国に追いつくことはできない」と語り、時間のかかる研究にも腰を据えて取り組む姿勢を示しました。
売上や市場シェアといった指標に直結しにくい理論研究にどこまで投資できるかは、多くの企業にとって難しい判断です。Huaweiは、ここであえて長期の視点を優先し、「いまは成果が見えなくても、将来の技術的飛躍の土台になる」という考え方を選んでいることになります。
「根を深くする」リーダーシップと戦略的忍耐
任CEOはインタビューで、自身のリーダーシップ哲学にも触れています。外部からの賞賛や批判にはとらわれず、「自分たちの仕事をしっかりやる」ことに集中し、一歩一歩前に進むことの重要性を何度も強調しました。
基礎研究への投資を「木の根を深くすること」にたとえ、「根が深くなければ、大きく長く成長することはできない」との考えを示しています。短期的な成果を求める圧力が強いなかで、あえて長期の土台づくりに資源を振り向ける姿勢は、Huaweiだけでなく、他のテクノロジー企業にとっても一つの参考になる視点といえます。
グローバルな半導体競争のなかで何が問われているか
今回の任CEOの発言は、米中両国の政府高官が技術分野の制限を主要議題とする通商協議を行っているタイミングで公表されました。各国・地域が半導体やAIをめぐって競争と協調のバランスを模索するなか、Huaweiのような企業がどのような戦略を取るかは、国際ニュースとしても注目されています。
任CEOが示したのは、「最先端プロセスへのフルアクセスがなくても、数学・アルゴリズム・システム設計といった別のレイヤーで創造性を発揮し、時間をかけて追いついていく」という道筋です。これは、単に一社の経営戦略にとどまらず、「技術的主権」や「サプライチェーンの再構築」といった、より広いテーマともつながっています。
今回のポイント
- Huaweiの任正非CEOは、自社のチップが米国より「一世代遅れ」と認めつつ、長期的な視点で追いつくと強調。
- 数学やクラスタ計算など、ムーアの法則に依存しないアプローチで性能ギャップを埋める戦略を説明。
- 年間約1800億元の研究開発費のうち約3分の1を基礎理論研究に投じ、短期評価の対象としない方針を示した。
- 「根を深くする」基礎研究重視の姿勢は、半導体・AI分野での国際競争が続くなかで、企業のあり方を問い直すものになっています。
Reference(s):
Huawei is bridging chip gap with science and patience, says CEO
cgtn.com








