新疆から重慶へ0.007秒送電 超高圧直流で進む中国の再エネ戦略
中国・新疆ウイグル自治区から重慶市まで、およそ2260キロをわずか0.007秒で電気が駆け抜ける──そんな超高圧送電プロジェクトが運転を開始し、中国の再生可能エネルギー戦略と「西電東送」の新たな一歩となっています。エネルギー転換とインフラ投資をめぐる国際ニュースとしても注目される動きです。
0.007秒で2260キロ 新疆から重慶へ届く電力
中国国家電網公司は、新疆ウイグル自治区ハミ市と中国南西部の重慶市を結ぶ±800キロボルトの超高圧直流(UHV)送電プロジェクトが運転を開始したと発表しました。風力と太陽光が豊富な新疆で発電された電力が、約2260キロ離れた重慶の電力需要地に届くまでにかかる時間は、わずか0.007秒とされています。
この送電線は、新疆から他地域へ電力を送る大型プロジェクトとしては3件目で、年間360億キロワット時以上を重慶に送り込む計画です。そのうち半分以上が風力や太陽光などの新エネルギー由来であり、石炭に換算すると約600万トンの節約、二酸化炭素(CO2)排出量では約1600万トンの削減効果が見込まれています。
エネルギー拠点としての新疆 砂漠が「再エネの金鉱」に
新疆は、中国の西部から東部へ電力を送り出す国家プロジェクト「西電東送」の中核的な拠点です。今回の送電線の起点となるハミでは、2024年末時点で電力系統に接続された新エネルギーの設備容量が約2300万キロワットに達しました。
新疆全体では、最新データによると総発電設備容量が2億100万キロワットに増え、そのうち1億1200万キロワット、割合にして55.72%が再生可能エネルギーとなっています。かつて経済発展の制約とみなされていた広大な砂漠や乾燥地帯が、強い風と長い日照時間に支えられた「再エネの金鉱」に変わりつつある構図が見えてきます。
一方で、新疆の地元需要だけでは、急速に増えた電力をすべて使い切ることができません。発電量と需要のアンバランスを解消し、エネルギーを必要とする東部・中部へ効率よく届けることが大きな課題となってきました。その解決策として位置づけられているのが、今回のような超高圧直流送電プロジェクトです。
電力不足の重慶を支える「受け側」
送電線の受け側となる重慶は、約3200万人の人口を抱える大都市で、一次エネルギーの供給が不足しがちな地域です。西部の省級行政区域の中で唯一のエネルギー純輸入地域とされており、外部からの電力供給が経済を支える重要な柱になっています。
今回のUHVプロジェクトは、重慶の電力負荷中心にクリーンな電力を安定的に供給するとともに、新疆・重慶の双方で経済発展や地域間の協調的な発展、農村振興や住民福祉の向上に寄与すると期待されています。エネルギーを通じた地域間の補完関係を強める試みとも言えます。
超高圧送電が担う「西電東送」とカーボンピーク
UHVと呼ばれる超高圧直流送電は、送電損失が少なく、一度に大量の電力を長距離輸送できるのが特徴です。新疆では2010年以降、こうした送電プロジェクトを通じて累計9000億キロワット時以上の電力を域外に送り出しており、その約3割が再生可能エネルギー電力とされています。新疆からの電力は、すでに中国国内22の省級地域をカバーする規模に達しました。
国家電網新疆電力有限公司の試算では、新疆から東部・中部地域に1億キロワット分の太陽光発電を送電できれば、受け側地域で必要となる火力発電の設備容量を2500万キロワット削減できるとされています。これは、電源構成を化石燃料から再生可能エネルギーへシフトさせるうえで、送電網が果たす役割の大きさを物語ります。
中国は、2030年までにカーボンピーク(CO2排出の最大化)を達成し、2060年までにカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を実現するという二つの目標を掲げています。2024年には、新たに導入された発電設備のうち86%が再生可能エネルギーとなり、累計の設備容量でも再エネが全国の56%を占める水準に達したとされています。新疆発のUHVプロジェクトは、こうした長期目標に向けた電力システム転換の象徴的な一例だと言えるでしょう。
日本から見た意味 再エネ時代の送電網を考える
日本から見ると、中国西部の砂漠と重慶を結ぶ送電線は、遠い世界の話に思えるかもしれません。しかし、再生可能エネルギーを大量導入しつつ、どのように安定供給を確保するかという問いは、日本を含む多くの国や地域が直面している共通課題です。
風や太陽などの再エネは、発電量が天候や時間帯によって変動します。その電力を消費地から離れた場所で大量に生み出し、送電技術で大都市まで運ぶという発想は、電力網を国家規模で最適化していく試みでもあります。新疆から重慶へのUHV送電は、その実験場の一つとして、今後の国際的なエネルギー議論にも少なからぬ示唆を与えることになりそうです。
考えてみたいポイント
- 再生可能エネルギーは「どこで作り、どこで使う」のが合理的なのか
- 長距離送電インフラへの投資は、地域間の格差をどう変えるのか
- 日本やアジアの他地域では、どのような電力ネットワークがあり得るのか
新疆から重慶へ電力を運ぶ一本の送電線は、エネルギー安全保障や脱炭素、地域開発をめぐる大きな議論とつながっています。国際ニュースを日本語で追いながら、自分たちの電力システムの未来像を考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
UHV project launched, sending power from Xinjiang to Chongqing
cgtn.com








