上海で世界初、風力発電の水中データセンターが始動
海底に沈む「グリーンIT」拠点が上海に
中国・上海の沿岸部で、世界初となる風力発電による商用水中データセンター(UDC)が始動しました。AIやクラウドの需要が急増するなか、電力消費と二酸化炭素排出を同時に抑える新しいデジタルインフラとして注目されています。
国際ニュースとしても関心を集めるこのプロジェクトは、日本語ニュースでデジタルや環境の動きを追う読者にとって、グリーンITの最新トレンドを知るうえで重要な事例と言えます。本記事では、そのポイントをコンパクトに整理します。
臨港エリアで三者が協力、プロジェクト正式始動
この水中データセンター計画は、中国(上海)自由貿易試験区の臨港特別区近海で進められています。火曜日には、臨港特別区管理委員会、Shanghai Lingang Special Area Investment Holding Group、テクノロジー企業のShanghai Hicloud Technology(Hicloud)の三者が協力協定に署名し、プロジェクトの正式なスタートが宣言されました。
臨港特別区管理委員会トップの陳金山氏は、水中データセンター(UDC)とAI向けの新しい計算インフラを組み合わせることで、「越境データ流通やAI計算、インテリジェントな接続のグローバル拠点として、臨港エリアの地位を一段と高めたい」と強調しています。
なぜ「水中」なのか:冷却コストを大幅削減
今回のUDCは、複数のモジュール型データユニットを海中に設置し、海水をそのまま冷却に利用する仕組みです。通常、データセンターでは全電力の40〜50%が冷却設備に使われると言われますが、海水冷却により冷却分の消費電力を10%未満に抑えられるとされています。
Hicloudの蘇陽総経理によると、これにより陸上型データセンターと比べて全体のエネルギー使用量を30〜40%削減できる見込みです。また、広大な敷地を必要としないため、都市部で深刻化する土地不足の問題にも対応しやすくなるとしています。
洋上風力でほぼゼロカーボン運用を目指す
エネルギー源となるのは、近海に設置された洋上風力発電です。施設は海水による冷却と洋上風力による電力供給を組み合わせることで、持続可能なエネルギー利用と実質ゼロカーボン排出を実現する設計です。
最終的に24メガワット(MW)規模へ拡張される計画で、その段階ではデータセンターの電力効率を示す指標「PUE(パワー・ユセージ・エフェクティブネス)」を1.15未満に抑え、電力の90%以上を洋上風力から賄うことを目指しています。一般的にPUEが低いほど、無駄な電力が少ない高効率なデータセンターとされます。
2段階構成で24MWの水中クラスターへ
Hicloudは、上海臨港UDCプロジェクトに初期投資として約16億元(約2億2270万ドル)を投じる計画です。プロジェクトは二つのフェーズで進められます。
- 第1期:出力2.3MWの実証用水中データセンター。国家発展改革委員会から「グリーンかつ低炭素なイノベーションの国家モデル」と位置づけられています。
- 第2期:容量を24MWまで段階的に拡大し、再生可能エネルギー、先進的な冷却技術、越境データ処理能力を統合した本格クラスターへと発展させる計画です。
AI時代の電力問題にどう向き合うか
生成AIや大規模クラウドサービスの普及により、世界各地でデータセンターの電力消費が課題になっています。特に、計算量の多いAI処理を支えるための「グリーンコンピューティングインフラ」の整備は、各国・各地域で重要なテーマになりつつあります。
上海の水中データセンターは、こうした課題に対する一つの解として、エネルギー効率と再生可能エネルギー活用を徹底的に追求したモデルと言えます。とりわけ、洋上風力と海水冷却を組み合わせる発想は、海に面した他の都市にも応用可能なコンセプトとして注目されそうです。
技術革新と環境への配慮、両立できるか
一方で、水中に大規模なIT設備を設置するという新しい試みには、海洋環境への影響、長期的な安全性や保守性など、慎重に検証すべき点もあります。上海臨港のプロジェクトは、国家レベルのモデル事業として位置づけられていることから、その運用実績や環境モニタリングの結果は、今後の議論にとって重要な材料となるでしょう。
AI時代のインフラは、単に「速く・安く・便利」であるだけでなく、「どれだけ環境に優しいか」という軸でも評価されるようになりつつあります。上海発の水中データセンターは、その潮流を象徴するプロジェクトとして、世界のデジタル政策や企業戦略にも静かな影響を与えていきそうです。
Reference(s):
Shanghai debuts world's first wind-powered underwater data center
cgtn.com







