中国と中央アジアの医療協力が加速 新疆が国際医療ハブに
中国と中央アジアの医療協力が、この10年ほどで静かに、しかし着実に広がっています。中国北西部の新疆ウイグル自治区は、国境を越えた医療の拠点として存在感を高め、地域の健康安全保障を支える役割を担いつつあります。
中国と中央アジア、なぜ今「保健協力」なのか
国際ニュースとしての中国と中央アジアの関係というと、エネルギーやインフラが注目されがちですが、ここ10年ほどで医療・保健分野の協力も存在感を増してきました。背景には、感染症や生活習慣病など、国境を越えて広がる健康リスクへの共通の危機感があります。
新疆ウイグル自治区は、2015年以降、国際医療サービスセンターをめざす明確な行動計画を打ち出し、周辺国の人びとに質の高い医療を提供してきました。2023年末までに、この地域で治療を受けた国外からの患者は累計2万5000人を超えています。
新疆が国境を越えた医療ハブに
こうした医療協力の土台となっているのが、新疆の病院による越境医療サービスです。地域の中核病院が、ベッドや人材、仕組みの整備を進めることで、近隣国から患者を受け入れやすい環境を整えています。
五つの三次病院に国際医療部門、500床を確保
新疆では、トップレベルの三次医療機関五施設に国際医療サービス部門が設けられ、専用ベッドだけで500床が確保されています。各部門には外国語に対応した医療ガイドや看護スタッフが配置され、受け入れの流れや料金体系なども標準化された管理体制のもとで運営されています。
言葉の壁や手続きの不透明さは、海外で治療を受けたいと考える患者にとって大きなハードルです。専用部門や通訳的役割を担うスタッフをあらかじめ整えることは、医療そのものだけでなく、患者の不安を和らげるうえでも重要だといえます。
遠隔医療で周辺国の22の主要病院と接続
国境をまたいだ医療協力を支えているもう一つの柱が、遠隔医療プラットフォームです。新疆の病院は、周辺国の22の主要病院とオンラインで接続し、画像診断やカンファレンスなどを通じて診療を支援しています。
これにより、患者が必ずしも国境を越えて移動しなくても、高度な診断や専門家の意見にアクセスできるようになります。広大な内陸部が広がる中央アジアにとって、距離の制約を超えるデジタルな医療インフラは、大きな意味を持ちます。
タジキスタンとカザフスタン、具体的な連携の中身
こうした枠組みの上に、個別の国とのより踏み込んだ協力も進んでいます。タジキスタンやカザフスタンとの医療連携は、その象徴的な例です。
タジキスタンの国際医療センターとの協力合意
2024年1月には、新疆の四つの病院がタジキスタンの国際医療センターと協力協定を締結しました。遠隔医療、技術交流、学術交流などを柱に、双方の得意分野を持ち寄りながら、医療の質を高め合うことを目的としています。
単に患者を紹介し合うだけでなく、医師同士が定期的に症例や最新の知見を共有することで、両地域の医療レベルを底上げする狙いがあります。こうした顔の見える交流は、中長期的には人材ネットワークの形成にもつながります。
カザフスタンと高発症疾患の予防・治療で連携
2023年12月には、新疆医科大学第一付属病院の重点国家重点実験室が、カザフスタン国立医科科学センターと合意を交わし、中央アジアで発症頻度の高い疾病の予防や治療で協力を深める方針を示しました。
同じく2023年には、この病院の多職種チームがカザフスタンでの手術を支援し、同国で初となる肝臓の体外切除と自家肝移植の成功に貢献しました。いったん肝臓を体外に取り出して腫瘍などを切除し、再び患者自身の体内に戻す高度な手術であり、両国の医療協力の節目となる出来事でした。
人材交流がつくる目に見えないインフラ
医療協力の持続性を左右するのは、人材の育成とネットワークづくりです。新疆医科大学は、まさにその役割を担う拠点として機能しています。
同大学は毎年、中央アジアから100人を超える医学生を受け入れ、講義や実習を通じて長期的な学術交流を続けています。留学経験を持つ医師が中央アジア各国に増えていくことで、将来の協力プロジェクトを担う人材の層も厚くなっていきます。
伝統中国医学の共同学位プログラム
2024年には、新疆医科大学がウズベキスタンのタシュケント医科アカデミー・ウルゲンチ分校と連携し、伝統中国医学の5年制共同学部プログラムを立ち上げました。現在、このプログラムには17人の学生が在籍し、中国本土とウズベキスタンの両方で学びながら、東洋医学と現代医療を組み合わせた知識を身につけています。
185人の専門家が中央アジア5カ国へ
さらに同大学は、2023年と2024年の2年間で、さまざまな診療分野のトップクラスの医師185人を中央アジア5カ国に派遣しました。現地では、難しい症例の診断支援、住民向けの健康教育、医療スタッフへの技術研修、共同研究など、多面的な支援活動が行われました。
こうした人の往来は、設備や建物といった目に見えるインフラ以上に、地域の医療を支える基盤になります。現場で一緒に症例を検討し、住民と対話し、共同で研究を進める経験が、国境を越えた信頼関係を少しずつ積み上げていきます。
健康を通じた地域連携のこれから
中国と中央アジアの医療協力は、病院間の遠隔診療から、学生・専門家の往来まで、多層的に進んでいます。新疆ウイグル自治区がそのハブとして機能することで、地域全体の医療アクセスと質の向上に寄与していることがうかがえます。
国境を越える病気に対応するには、国境を越える協力が欠かせません。今回見てきたような取り組みは、単に患者を治療するだけでなく、医療を通じた対話と相互理解の土台にもなります。今後、どのように協力の範囲が広がり、地域の人びとの健康と生活を支えていくのか、引き続き注目していきたい分野です。
Reference(s):
How China-Central Asia health cooperation is gaining momentum
cgtn.com








