中国と米国、ロンドン貿易協議で原則合意 関税引き下げと対立緩和へ
今年6月、ロンドンで行われた中国と米国の経済・貿易協議で、両国が関税引き下げを含む「原則的合意」に達していたことが、中国側の発表でわかりました。世界経済の行方を左右する2大経済の動きは、貿易戦争の緊張をどこまで和らげるのでしょうか。
ロンドン協議で確認された「原則的合意」
2025年6月9〜10日(現地時間)、中国と米国はロンドンで初の「中米経済・貿易協議メカニズム」の会合を開催しました。2日間にわたり「率直で踏み込んだ」話し合いが行われ、両国が互いの経済・貿易上の懸念に対応するうえで新たな進展があったと、中国側は説明しています。
今回の協議は、6月5日の習近平国家主席とドナルド・トランプ米大統領による電話会談で確認された重要な合意を具体化し、5月のジュネーブでの経済・貿易協議の成果を固めるためのものと位置づけられました。双方は、その実施に向けた「原則的なコンセンサス」と、今後の措置の枠組みで一致したとされています。
中国側からは、対米経済・貿易交渉を統括する何立峰副首相が出席しました。米側はスコット・ベッセント財務長官、ハワード・ルトニック商務長官、ジェイミソン・グリアー通商代表が参加し、首脳レベルの戦略的な指示のもとで行われた重要な協議だと副首相は強調しました。
何副首相は、中国と米国の経済・貿易関係の本質は「互恵とウィンウィン(双方に利益がある)協力」にあると指摘し、「協力は双方の利益となり、対立は双方を傷つける」と述べました。そのうえで、中国は誠意を持って協議に臨む一方で、守るべき原則もあるとし、米国に対しては、対等な対話と互恵的な協力を通じて貿易摩擦を解決するよう促しました。
ジュネーブ会合で進んだ関税引き下げ
今回のロンドン協議の前段として、5月10〜11日にスイス・ジュネーブで行われた高官級会合では、すでに大きな前進があったとされています。12日に発表された共同声明では、中国と米国が相互の追加関税を大幅に引き下げることで合意しました。
米国は中国からの輸入品に課していた追加関税の91%を撤廃し、中国も米国製品への報復関税の91%を取り下げました。さらに米国は、残る24%の「相互関税」の適用を90日間停止し、中国もこれに対応する措置を取ることで歩調を合わせています。
習近平国家主席は6月5日の電話会談で、ジュネーブ会合は対話と協議を通じて経済・貿易問題を解決していくうえで重要な一歩になったと評価し、中国社会だけでなく国際社会からも歓迎されていると述べました。トランプ大統領も「非常に成功し、良い取引になった」と応じ、合意の着実な履行に向けて中国と協力すると表明しています。
関税調整が物流に与えた即時のインパクト
関税政策の調整は、すぐに現場の物流にも表れました。コンテナ追跡データを提供するヴィジオンによると、関税引き下げ後、中国から米国向けのコンテナ予約はほぼ一気に約300%増加したとされています。
深圳の塩田港にある貨物倉庫のマネジャーは、中国メディアの取材に対し、米国向け輸出貨物の取り扱いが「5月末には1日平均120本前後だったコンテナが200本を超え、6割以上増えた」と明かしました。同港は、中国から米国向け輸出全体の4分の1以上を扱う重要な拠点です。
在中国アメリカ商工会議所のマイケル・ハート会頭は、これまでの関税を巡る応酬について「貿易戦争は一種の『現実チェック』であり、中国が米国にとって重要な市場であり、主要な供給源でもあることを証明した」と述べています。互いの経済が深く結びついているからこそ、関税の上げ下げが即座に企業の行動と物流に反映される構図が浮かび上がります。
ロンドン協議がめざすもの:対立から協調へ
ロンドン会合を受けて、中国の国際貿易代表を務める李成鋼氏は、今回の進展が両国間の信頼を強め、経済・貿易関係の安定的かつ健全な発展をさらに後押しすることが期待されるとコメントしました。
米国のクリストファー・ニューポート大学の孫泰一准教授も、中国国際テレビ(CGTN)のインタビューで、ロンドンでの協議は、双方が未解決の経済・貿易問題を整理し、二国間関係を本来の軌道に戻すうえで重要な機会になったと分析しています。
孫氏によれば、今回の協議を通じて、両国はそれぞれの戦略的な能力を示すと同時に、相手の立場をより明確に理解するようになりました。その結果として、長期的な対立よりも、互いに利益をもたらす協力を追求する方が、自国の利益にかなうという認識を共有するに至ったといいます。
日本や世界にとっての意味
世界第1位と第2位の経済が対立から協調へと舵を切ることは、日本を含むアジアや世界の経済にも無視できない影響を与えます。中国と米国の貿易摩擦が激化すれば、サプライチェーンの混乱や需要減退を通じて、日本企業の輸出や投資にも波及する可能性が高いからです。
今回示された関税引き下げや協議メカニズムの枠組みは、少なくとも当面、急激な緊張の高まりを抑える安全弁として機能し得ます。一方で、多くの関税や規制は依然として残っており、技術や安全保障をめぐる対立がすべて解消されたわけではありません。
とはいえ、双方が「対話のテーブル」に戻る意思を示したことは、世界経済の不確実性を和らげるシグナルとも受け取れます。私たちが今後の動きを見ていくうえで、どんなポイントに注目できるでしょうか。
今後の注目ポイント
- 残された関税や非関税措置について、どこまで具体的な削減・緩和のロードマップが示されるか
- コンテナ取扱量や企業の投資計画など、実体経済の指標がどの程度持続的な回復を見せるか
- 経済・貿易協議の枠組みが、気候変動やデジタル経済など、より広い分野での協力に発展していくか
大国同士の競争が避けられない時代だからこそ、「対立か協力か」の二択ではなく、どこまで互いの利益が重なる領域を広げられるかが問われています。ロンドンでの「原則的合意」は、その試みの一歩目にすぎません。中国と米国の次の一手が、私たちの日常やビジネスにどのように影響していくのか、引き続き丁寧に追っていきたいところです。
Reference(s):
China, U.S. reach principled consensus after trade talks in London
cgtn.com







