汗でパーキンソン病を察知 中国研究チームが新ウェアラブルパッチ
パーキンソン病の兆しを、採血ではなく「汗」から読み取る——中国科学院の研究チームが、絆創膏サイズのウェアラブルパッチを開発し、早期診断への新しい道を開こうとしています。
中国科学院長春応用化学研究所の張強(Zhang Qiang)氏が率いる研究チームは、パーキンソン病に関連する複数のバイオマーカー(体内状態を示す物質)をオンラインで解析できる、完全統合型の汗センシングパッチを開発しました。研究成果は国際学術誌Advanced Materialsに火曜日付で掲載され、汗の成分をリアルタイムで読み取ることで、病気の進行を非侵襲的に追跡できる可能性を示しています。
パーキンソン病と早期診断の難しさ
パーキンソン病は、神経細胞が徐々に壊れていく進行性の神経変性疾患です。手の震えや動作の緩慢さといった症状は、神経の変性が始まってから何年も経って初めて現れることが多く、早期発見が難しい病気として知られています。
現在、有効な根治療法はなく、多くの患者は長期にわたり薬物療法に依存して症状をコントロールしています。そのため、症状が本格化する前の「ゴールデンウィンドウ」と呼ばれる時期に、できるだけ早く異変をとらえ、治療や予防的な介入につなげることが極めて重要とされています。
汗を読む絆創膏サイズのウェアラブルパッチ
今回開発されたパッチは、見た目は絆創膏ほどの大きさですが、その内部には研究チームが自ら設計したミニチュアの検出器が組み込まれています。パーキンソン病に関連するとされるL-ドーパ、アスコルビン酸(ビタミンC)、グルコースなどの物質を、汗から連続的に測定できるのが特徴です。
張氏は「絆創膏ほどの大きさですが、私たちが開発したミニチュア検出器が中に入っています」と説明し、患者は血液を採取したり注射を受けたりする必要がないと強調しています。
集める・測る・処理するを1枚に
研究チームによると、このシステムは次のような要素を1枚の柔らかいパッチに統合しています。
- 生体模倣マイクロ流体モジュール:座ったままの状態でも汗を安定して集められる流路構造を備え、汗を自動的に取り込む仕組みを持つ。
- 先進的な電気化学センシングプラットフォーム:L-ドーパやアスコルビン酸、グルコースなど複数のバイオマーカーを同時に検出できる柔軟な電極を搭載。
- オンサイト信号処理回路:センサーからの信号をその場で処理し、ノイズを減らしながら意味のあるデータに変換。
- 専用ソフトウェア:取得したデータをワイヤレスで送信し、リアルタイムで可視化する。
張氏は、「体に『翻訳機』を取り付けるようなものです。汗に含まれる生体信号を、患者が理解しやすい情報に変換します」と、この仕組みをたとえています。
「時計のように簡単に」使えることを目指す
このパッチは柔らかい素材でできており、皮膚に密着しながらも動きに追従できる設計です。研究チームは、運動中などでも安定して汗を採取できるよう、自走式の汗収集チップを組み込むことで、サンプリングのばらつきを抑えたとしています。
また、センサー部は複数のバイオマーカーを同時に測定できるよう配置されており、信号処理モジュールが測定データをワイヤレスで送信します。張氏は「時計を身につけるのと同じくらい簡単に使えます」とも述べ、日常生活の中で負担なく装着できることをアピールしています。
高リスク層の見守りツールとしての期待
研究チームは、将来的にはパーキンソン病の高リスクとされる人々が、このモニタリングシステムにアクセスできるようになることを目指しています。早い段階から汗のバイオマーカーを継続的に追跡できれば、症状が表に出る前に異常の兆しをとらえ、医師との相談や生活習慣の見直しなど、早期の対応につなげられる可能性があります。
パーキンソン病のように長期間をかけて進行する病気では、「いつから何が変わり始めたのか」を客観的なデータで把握することが、治療戦略を立てるうえで重要になります。汗という日常的な生体情報を活用する今回のアプローチは、患者の負担を減らしながら長期的に病状を見守る新しい手段として注目されそうです。
アジアをはじめ世界で高齢化が進むなか、こうしたウェアラブル型のヘルステックは、病院に行く前の「気づき」を早めるツールとして存在感を増しています。汗から体の変化を読み取る小さなパッチは、私たちの「病気との付き合い方」を静かに変えていくかもしれません。
Reference(s):
Chinese scientists make wearable pad for Parkinson's disease warning
cgtn.com








