CGTNが選ぶ2025年上海国際映画祭の必見作品
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2025年6月に開催された上海国際映画祭で、国際メディアCGTNが選んだ注目作品が話題になっています。400本超の上映作品から浮かび上がる「いまの世界」とは何でしょうか。
2025年上海国際映画祭とCGTNのセレクション
猛暑の6月、上海国際映画祭が再び開催され、今年は400本以上の映画が上映されました。伝説的映画人・袁牧之(Yuan Muzhi)の功績をたたえる企画や、4K修復によるクラシック作品の上映、新しいSF映画の特集など、アジアを中心に多彩なラインナップがそろいました。
その中からCGTNは、自らのモットーである『see the difference』に沿って、ジャンルも出自も異なる作品群をピックアップしました。アジア、欧州、中南米、ユーラシアを横断するこのセレクションは、文化の多様性と国境を越えた協働を映し出しています。
アジア発、「物語を守る」視線
ラオスの文化遺産を見つめる『The Guardian of Stories』
ラオス発のドキュメンタリー『The Guardian of Stories』は、文化遺産をテーマにした作品です。伝統芸能や口承(こうしょう)文化など、「失われるかもしれない物語」をどう次世代につなぐかという普遍的な問いを投げかけます。日本でも地域文化の継承は大きな課題であり、アジア内で共鳴しやすいテーマといえます。
犯罪と家族倫理が交差する『Wild Nights, Tamed Beasts』(中国)
中国の『Wild Nights, Tamed Beasts』は、犯罪の手がかりを追うサスペンスと、家族倫理をめぐるドラマという二本の線が交錯する構成です。スリラーでありながら、家庭や絆のあり方を問い直す物語でもあり、アジア映画らしい人間ドラマの厚みが期待されます。
伝統工芸を軸に社会を映す『Black, Red, Yellow』(キルギス)
キルギスの『Black, Red, Yellow』は、伝統的な絨毯(じゅうたん)づくりをめぐる物語です。職人技というミクロな世界を通して、世代交代や経済の変化など、社会のマクロな動きが浮かび上がります。手仕事とグローバル化の緊張関係は、日本の工芸にも通じるテーマです。
欧州とユーラシアが描く「いま」の現実
アルプスの風景に刻まれた女性たち『Vermiglio』
イタリア・フランス・ベルギーの共同制作『Vermiglio』は、アルプスの雄大な風景を背景に、女性たちの葛藤と闘いを描き出す作品です。一コマ一コマが絵画のように美しく、その中で社会的な不平等や見えない抑圧が静かに浮かび上がります。景観の美しさと重いテーマの対比が、現代ヨーロッパ映画らしい緊張感を生み出しています。
教育現場の暴力に向き合う『Lesson Learned』(ハンガリー)
ハンガリー映画『Lesson Learned』は、上海国際映画祭の「一帯一路映画週間(Belt and Road Film Week)」公式選出作品です。教育の現場に潜む暴力を、目をそらさずに描いたリアリズム作品とされています。体罰やいじめをどう防ぐかという問題は、国や地域を問わず共有される課題であり、教育に関わる人だけでなく、多くの観客の議論を呼びそうです。
アニメーションで描く家族のかたち『Son』
ロシアとカザフスタンによる短編アニメーション『Son』は、家族の絆をテーマにした作品です。実写では描きにくい感情の揺らぎや記憶のイメージを、アニメーションならではの表現で掘り下げていきます。短編というフォーマットも含め、映画祭ならではの出会いを象徴する一本といえます。
南米のクライムコメディからSFアニメ、実験映画まで
巧妙なだまし合いの『Nine Queens』(アルゼンチン)
アルゼンチン映画『Nine Queens』は、緻密なプロットが特徴のクライムコメディです。観客を翻弄するだまし合いと、ユーモアを交えた社会風刺が魅力の一本で、ラテンアメリカ映画の勢いと巧みな脚本術が光ります。
ファンタジー色あふれる『Edge of Time』(中国)
中国のアニメーション作品『Edge of Time』は、豊かなファンタジー要素で彩られた物語です。時間や現実の境界が揺らぐ世界観を通して、若い世代の不安や希望を象徴的に描き出していると解釈することもできます。アジア発のSF・ファンタジー作品が国際映画祭で存在感を高めていることを示す一本です。
カルト的名作『Eraserhead』(米国)の再評価
アメリカの『Eraserhead』は、デヴィッド・リンチ監督の実験的でアヴァンギャルドな長編デビュー作として知られています。今回の上海国際映画祭では、クラシック作品の再上映プログラムの一作として取り上げられ、現在の観客が改めてその異様なイメージ世界と音響表現に向き合う機会となりました。
なぜこのセレクションが「いま」を映すのか
CGTNが選んだ作品群には、いくつか共通する軸が見えてきます。
- 文化遺産や伝統工芸を通じて、アイデンティティや記憶を問い直す視点
- 家族や教育といった身近なテーマを通じて、暴力や倫理の問題に向き合う姿勢
- 女性の経験や抑圧を、風景や日常のディテールの中からすくい上げる視点
- アニメーションや実験映画など、新しい表現形式への挑戦
いずれの作品も、単に「海外らしい」「異文化的」な作品を見せるのではなく、現代社会が抱える課題をそれぞれの地域の文脈から描いている点が特徴です。文化の違いを感じながらも、「どこか自分たちの問題にもつながる」と思える距離感が、このセレクションの魅力といえます。
日本の観客へのヒント:「世界の物語」をどう受けとめるか
日本語で国際ニュースや国際映画祭の情報を追いかけている読者にとって、2025年の上海国際映画祭は、アジア発の視点から世界の映画をまとめて眺める機会になりました。CGTNのセレクションは、とくにアジアと欧州、中南米を結ぶ「映画による対話」の一断面を示しています。
今後、日本での劇場公開やオンライン配信の有無は作品ごとに異なりますが、映画祭でどのような作品が注目されているかを知ることは、次に見る一本を選ぶときのヒントにもなります。気になったタイトルやテーマをメモしておき、公開情報をチェックしてみるのもよいかもしれません。
まとめ:光と影のあいだにある「共有できる人間ドラマ」
2025年の上海国際映画祭でCGTNが選んだ作品群は、文化的な違いを前面に出しながらも、人間の感情や家族、記憶、暴力、希望といった普遍的なテーマを共有している点で共通しています。光と影の揺らめきの中で、世界のさまざまな「物語の守り人」たちが、観客に問いを投げかけているといえるでしょう。
短いスキマ時間に作品情報をチェックし、気になる映画をSNSでシェアしながら、世界の動きと自分の感覚のあいだに橋をかけていく。そんなニュースとの付き合い方が、「読みやすいのに考えさせられる」映画体験につながっていきそうです。
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Reference(s):
CGTN's film picks from the 2025 Shanghai International Film Festival
cgtn.com








