現代音楽が中国の伝統楽器「三弦」に新しい命を吹き込む video poster
現代音楽と中国の伝統楽器を組み合わせる動きが、ここ数年で一気に存在感を増しています。北部の天津市出身のフォーク音楽クリエイター・Chu Qi Gui Zi(チュー・チー・グイズ)さんは、その象徴的な存在の一人です。
三弦と電子音楽の融合、SNSで数百万の「いいね」
Chu Qi Gui Ziさんは、中国の伝統的な三弦(さんげん/三線とも表記される、三本弦の中国琵琶の一種)を、エレクトロニック・ダンス・ミュージックなどの現代音楽と組み合わせた動画コンテンツで人気を集めています。すでにSNS上では、彼女の投稿が数百万件の「いいね」を獲得しているとされています。
彼女が三弦を学び始めたのは13歳の頃です。現在は、天津市河東区の無形文化遺産プロジェクトである「大型三弦演奏技法」の伝承者として活動しており、伝統的な奏法を受け継ぎながらも、新しい表現方法を模索し続けています。
全国を旅しながら、三弦の魅力を伝える
Chu Qi Gui Ziさんには、「三弦と一緒に全国を旅する」という夢があります。これまでに、根河、ハルビン、上海、深圳など、中国各地の20以上の都市を訪れ、その土地ごとに三弦の演奏を披露してきました。
こうした旅の中で撮影された演奏動画は、オンラインで公開され、各地の風景とともに三弦の音色を届けています。地域の空気感と伝統楽器の響きが重なり合うことで、視聴者は「音楽」と「場所」の両方を体験できる構成になっています。
漢服×サングラス×EDM――「ギャップ」が入口になる
Chu Qi Gui Ziさんのスタイルを象徴するのが、漢服(ハンフー)にサングラスという装いで、三弦を手に電子ダンスミュージックを奏でるスタイルです。この一見ミスマッチな組み合わせが、彼女の動画を強く印象づけています。
伝統的な衣装と近未来的な電子音、そして素朴な三弦の響き。その「ギャップ」こそが、視聴者の好奇心を引き出し、「三弦ってどんな楽器だろう?」と興味を持つきっかけになっているといえます。
なぜ伝統楽器と現代音楽の融合が支持されるのか
Chu Qi Gui Ziさんの取り組みは、単なる「バズる動画作り」にとどまりません。背景には、無形文化遺産としての伝統と、デジタル世代の感性をつなぐ狙いがあります。
こうした試みが支持を集める理由として、次のようなポイントが考えられます。
- 視覚的・聴覚的なインパクト:漢服とサングラス、三弦と電子音という対照的な要素が、短時間で強い印象を残します。
- 音の新鮮さ:三弦の素朴で柔らかな音色が、ビートの強い現代音楽と重なることで、新しいサウンドとして再発見されます。
- 文化継承の新しい形:SNSや動画配信を通じて、これまで触れる機会の少なかった若い世代にも、伝統楽器への入口を広げています。
特に、無形文化遺産のような「形のない文化」を守るには、「知ってもらう」「面白いと思ってもらう」という初期のきっかけづくりが重要です。Chu Qi Gui Ziさんの活動は、その一つの実践例といえるでしょう。
デジタルネイティブ世代と伝統文化
スマートフォンで音楽や動画を楽しむ世代にとって、「最初に出会う伝統文化」は、教科書ではなくSNSのタイムライン上にあることが珍しくなくなりました。三弦のような伝統楽器が、ショート動画やライブ配信を通じて広がっていく流れは、2025年の今を象徴する現象の一つです。
こうした動きは、中国の伝統音楽に限らず、各国の伝統芸能にも重ね合わせて考えることができます。クラシック音楽、邦楽、民族舞踊なども、現代的なアレンジやデジタル技術と組み合わさることで、新たなファン層を獲得する可能性があります。
「守る」だけでなく「更新する」伝統へ
無形文化遺産というと、「変えてはいけないもの」というイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、もともと伝統文化は、それぞれの時代の生活や価値観とともに変化してきた側面もあります。
Chu Qi Gui Ziさんの三弦演奏は、伝統的な技法を大切にしながらも、現代の音楽シーンやデジタル文化と対話しようとする試みです。守るだけでなく、時代に合わせて更新していくことも、これからの文化継承の一つの形かもしれません。
通勤中にイヤホンで聴くプレイリストの中に、ふと三弦の音色が紛れ込んでくる日も、そう遠くないかもしれません。伝統とモダンの「ギャップ」から生まれる新しい音楽が、これからどのように広がっていくのか、注目していきたいところです。
Reference(s):
Modern music injects new vitality into traditional Chinese instruments
cgtn.com








