中国「文化と自然遺産の日」スマート技術で世界遺産を守る
中国で2025年に第9回を迎えた「文化と自然遺産の日」では、先端の科学技術を活用して文化遺産や自然遺産を守る取り組みが前面に打ち出されています。とくに東部の都市・杭州では、ユネスコ世界遺産のグランドキャナル(京杭大運河)を保護するための「スマート運河プラットフォーム」が注目を集めています。
文化と自然遺産の日:守り方もデジタル時代に
文化と自然遺産の日は、中国が多様な文化遺産・自然遺産の価値を再確認し、その保護意識を高めるために設けた記念日です。第9回となる今年は、文化財保護とデジタル技術を組み合わせ、「壊れてから直す」のではなく「壊れる前に守る」という予防的な保護への転換が強調されています。
杭州グランドキャナルを支えるスマート運河プラットフォーム
中国東部・杭州では、この新しい流れを象徴する取り組みが進んでいます。ユネスコ世界遺産に登録されているグランドキャナルの管理に、スマート運河プラットフォームと呼ばれる高度な情報システムが導入され、運河の保全と運営のあり方を変えつつあります。
橋や古い城壁のゆがみをリアルタイムで把握
スマート運河プラットフォームは、運河沿いの橋などの歴史的構造物に生じるわずかな変化を、精密なモニタリングで追跡します。構造のひび割れや傾きといった兆候を早期に捉えることで、大きな損傷が起こる前に補修や補強といった手当てがしやすくなります。
同様の技術は、中国各地に残る古い城壁の保護にも活用されており、長い時間をかけて築かれてきた景観を静かに見守るデジタル番人の役割を果たしています。
行政データを一体化し、素早く連携
このシステムのもう一つの柱は、複数の行政部門が持つデータを一つのプラットフォームに統合している点です。これまで別々に管理されていた情報を集約することで、運河に関わる担当者が同じ基盤の上で状況を共有できるようになります。
問題が起きた際には、関係部門が迅速に連携しやすくなり、生きた文化遺産である運河を日常的に守るための意思決定もより効率的になります。
予防保全へ向かう中国の文化遺産保護
今回の取り組みの背景には、文化遺産の保護を事後対応から予防保全へと切り替えたいという考え方があります。損傷が目に見える形で現れてから修復するのではなく、その前段階で小さな変化を察知し、早めに対策を打つことで、文化財への負荷を小さく抑えることができます。
グランドキャナルのように、現在も地域の暮らしと密接に関わる生きた遺産では、日々の利用と長期的な保全を両立させることが不可欠です。デジタル技術を使ったモニタリングは、そのバランスをとるための有力な手段になりつつあります。
日本にとってのヒント:テックで遺産をどう守るか
中国の事例は、日本を含む他の国や地域にとっても示唆に富んでいます。歴史的な街並みや寺社、自然景観を守りつつ、観光や日常生活とどのように両立させていくのか。その際にデジタル技術をどこまで取り入れるかは、多くの社会が直面する共通の課題です。
センサーやデータ分析などの先端技術は、文化遺産を監視するためだけではなく、リスクを見える化し、地域の人々が遺産とより良く付き合うための材料を提供する手段にもなりえます。中国が文化と自然遺産の日を通じて示したのは、テクノロジーを文化の敵ではなく味方として位置づけようとする姿勢だと言えるでしょう。
これからの文化遺産保護を考える視点
2025年現在、世界各地で気候変動や都市化が文化遺産に影響を与えるなか、デジタル技術を活用した予防的な保護は今後ますます重要になっていきます。中国東部・杭州でのスマート運河プラットフォームは、その一つの具体的な方向性を示す取り組みだと言えるでしょう。
私たち一人ひとりが、自国や地域の遺産についてどのような技術を、どこまで使うべきかを考えることは、文化を次世代につなぐうえでの新しい問いになりつつあります。中国の最新の動きをきっかけに、日本でもこうした議論が広がるかもしれません。
Reference(s):
China's Heritage Day: How to harnesses tech to protect heritage
cgtn.com







