Googleがスマートグラス再挑戦 中国本土発XREALと「Project Aura」で協業 video poster
Googleが約10年前の「Google Glass」以来となるスマートグラス市場への本格復帰に動いています。中国本土発のスタートアップXREALと組み、Android XR向けの新しい拡張現実(AR)グラス「Project Aura」を開発していることが明らかになりました。
Google Glassから約10年、「再挑戦」の意味
Googleは2025年の開発者会議「Google I/O 2025」でProject Auraを初披露し、その後、米カリフォルニアで開かれたAugmented World Expo 2025でも詳細を紹介しました。かつてのGoogle Glassは一般向け展開で苦戦しましたが、今回はパートナー企業との協業と新しいプラットフォーム戦略で再スタートを切ろうとしています。
Project Auraは、Googleが展開する新プラットフォーム「Android XR」に対応した光学シースルー型(OST)の拡張現実デバイスです。Android XR向けに正式に発表されたデバイスとしては、サムスンの混合現実ヘッドセット「Project Moohan」に続く2つ目の製品になります。
メガネ型のOST XRデバイスとは
Project Auraは、透明なレンズを通して現実世界を見ながら、その上にデジタル映像を重ねて表示する光学シースルー型のXRデバイスです。完全に仮想空間へ入り込むVRヘッドセットや、カメラ映像越しに現実を映す方式とは異なり、普段の視界を大きく遮らないことが特徴です。
メガネに近いフォームファクターを採用することで、屋内外を問わず日常的にかけ続けられることを狙います。通知や地図、作業支援情報などを「必要なときに、視界の片隅にそっと出す」ような、軽やかな情報体験への適性が高い形といえます。
XREAL設計チップ「X1S」が支える高度な処理
Project Auraの最大の特徴のひとつが、XREALが独自設計したXR向けチップ「X1S」です。XREAL共同創業者のWu Kejian氏は、中国のメディアCGTNの取材に対し、同社がXR処理専用のASIC(特定用途向け集積回路)を開発し、ARグラスに搭載された各種センサーのデータをつなぐ役割を果たしていると説明しました。
この「データブリッジング」と呼ばれる処理によって、現実世界から取得した情報とデジタルコンテンツを統合し、違和感の少ない拡張現実体験を実現します。現実と仮想をなめらかに橋渡しすることで、ユーザーの視界に表示される情報が、その場の空間や動きと自然に連動するようになります。
Wu氏によれば、X1Sは動きの遅れを示す「モーション・トゥ・フォトン遅延」を最短で3ミリ秒まで短縮できるといいます。これにより、仮想ディスプレイを空間上に固定しながら、ユーザーの頭や体の動きに追従させることが可能になるとしています。
Project Auraはサングラスのようなスマートグラスの形状を採用し、このX1Sチップを内蔵しながらも、外部のコンピューティングデバイスと連携して動作します。従来のARデバイスに多かった大型ヘッドセットとは対照的に、日常的に身につけやすい軽量なスタイルを目指した設計です。
- センサーからのデータを統合し、現実空間に重ね合わせるAR表示を制御
- 高速な動きの追跡と空間上の位置合わせ(トラッキングとアンカー)
- 外部コンピューティングデバイスとのデータ連携を最適化
重い処理は外付け「パック」へオフロード
メガネ自体を軽く保つため、負荷の大きい処理はケーブル接続された小型の外付けコンピューティングデバイスに委ねられます。円盤のような「パック」にはクアルコムのSnapdragon系チップが搭載され、高度なグラフィックス処理やアプリケーションの実行を担当します。
この外付けユニットはスマートフォンやパソコンとも接続でき、動画やゲーム、業務アプリケーションなど、幅広いデジタルコンテンツへの窓口として機能します。ユーザーはメガネを通して表示される情報を見ながら、手元のデバイスで操作するといった使い方が想定されています。
Geminiと連携する「空間コンピューティング」
Project Auraは、Googleの生成AI「Gemini」とも統合される計画です。これにより、ユーザーの位置や視線、ジェスチャーなどのコンテキスト情報とAIを組み合わせた、直感的な空間コンピューティング体験が可能になるとみられます。
たとえば、視界に映る看板の翻訳をその場で表示したり、作業手順や道順を目の前の空間に重ねて案内したりといった利用シナリオが想像されます。従来のスマートフォン画面中心の体験から、身体や空間全体を使ったコンピューティングへの移行を後押しする可能性があります。
単独ではなく「共同の力」で作るARグラス
Wu氏は「ハードウェア本体からシリコンチップ、オペレーティングシステム、アプリケーションに至るまで、ARグラスのスタック全体を単独の企業だけで作り上げることは難しい」と語り、Google、XREAL、そしてクアルコムを含む複数の企業による共同の取り組みが不可欠だと強調しました。
Googleにとっても、XREALのようなスタートアップとの提携は、Android XRという新しいプラットフォームの普及を進めるうえで重要な一歩です。一方のXREALにとっても、世界的なプラットフォーム企業と組むことで、これまで培ってきたハードウェア技術をより広い市場に届ける機会になります。
ARグラス市場で存在感を示すXREAL
XREALはここ3年連続でARグラス分野のグローバルリーダーとなっており、累計出荷台数は60万台を超えています。Wu氏は自社とGoogleを「真のAR信奉者」と表現し、共通のビジョンが今回の協業につながったと説明しています。
同氏は、世界中の大手企業とスタートアップが連携することで、ARグラスのエコシステム全体が前進するとしたうえで、「依然として複数のテック企業の共同作業が必要だ」と述べています。
日本の読者が押さえておきたいポイント
- GoogleがAndroid XRを軸に、スマートグラス市場へ本格復帰しつつある。
- Project Auraは、メガネ型の軽量デザインと外付けデバイスの組み合わせで、長時間装着しやすい設計を目指している。
- XREALのXR向けチップ「X1S」により、高速な動き追従と現実空間への自然な情報重ね合わせが期待される。
- Geminiとの連携により、翻訳やナビゲーション、リモートワーク支援など、AIを生かした新しい空間コンピューティング体験が広がる可能性がある。
- 大手プラットフォーム企業とスタートアップの協業は、今後のAR・XR市場の行方を占う重要な流れになりそうだ。
スマートフォンに次ぐ「次のコンピューティングプラットフォーム」をめぐり、世界のテック企業はXRや空間コンピューティングへの投資を加速させています。GoogleとXREALのProject Auraは、その潮流の中で、メガネ型デバイスがどこまで日常に入り込めるのかを試す試金石になるかもしれません。今後の続報に注目しておきたいところです。
Reference(s):
Google partners with Chinese startup for smart glasses comeback
cgtn.com








