台湾のミンナン赤レンガ建築:一族の記憶を刻む家
台湾のミンナン赤レンガ建築は、高く反り上がる屋根の棟と鮮やかな装飾が印象的な伝統家屋です。一族の記憶を背負い、ミンナン文化と華僑のふるさとのイメージを象徴する存在として、いま改めて注目されています。
台湾を彩るミンナン赤レンガの家とは
国際ニュースや台湾の文化を日本語で追いかけていると、ときどき目にするのがミンナン地域の赤レンガ建築です。台湾の各地には、ミンナン文化の影響を受けた伝統的な住居が残されており、赤いレンガと独特の屋根のラインが強い印象を与えます。
これらの家は、単なる住まいというだけでなく、一族の歴史や地域の記憶を映し出す「物語の器」として存在してきました。
特徴1:赤レンガと優雅なカーブを描く棟
ミンナンの伝統家屋でもっとも目を引くのが、赤レンガの壁と、高くそびえ立ちながら優雅な弧を描く屋根の棟です。英語では鳩の尾のような形と表現されることもあるこの棟は、遠くから見ても一目で分かるシルエットをつくり出します。
赤レンガの落ち着いた色合いと、屋根の流れるようなラインが組み合わさることで、力強さとしなやかさが同居する独特の景観が生まれます。このコントラストこそが、ミンナン赤レンガ建築の大きな魅力です。
特徴2:石・レンガ・木を組み合わせた技
伝統的なミンナンの家づくりには、レンガ、石、木といった自然素材がバランスよく用いられます。職人はそれぞれの素材の特性を踏まえながら、住む人の暮らしと気候に合うように、繊細な調整を重ねてきました。
なかでも象徴的なのが、石材とレンガを組み合わせる独自の積み方です。石で土台や枠組みをつくり、その間をレンガで丁寧に埋めていくことで、安定感と意匠性を両立させています。そこに木材の梁や柱が加わることで、全体として温かみのある空間が生まれます。
特徴3:鮮やかな絵画と装飾が語る物語
ミンナン赤レンガの家を近くで見てみると、玄関や軒下、梁などに色鮮やかな絵画や装飾が施されていることに気づきます。花や鳥、伝統的な吉祥文様など、さまざまなモチーフが描かれ、家に込められた願いや祈りを表現しています。
これらの装飾は、単なる飾りではありません。一族が大切にしてきた価値観や物語を、次の世代へ静かに伝えていく役割を持っています。絵画や彫刻を読み解くことは、その家に住む人びとの歴史をたどることにもつながります。
一族の記憶を宿す「赤レンガの記憶装置」
ミンナン赤レンガ建築は、一族や一門が代々暮らしてきた家として存在してきました。庭の配置、部屋の使い方、祭壇の位置など、家のすみずみにまで住む人びとの暮らし方が刻まれています。
こうした家には、婚礼、祭り、弔いといった人生の節目の場面が積み重なり、時間とともに「一族の記憶」が積み上がっていきます。赤レンガの壁や、長年踏みしめられてきた床は、その記憶を静かに受け止め続けてきた存在だと言えるでしょう。
華僑のふるさとのイメージとして
ミンナン文化圏は、多くの華僑を送り出してきた地域としても知られています。遠く海外で暮らす人びとにとって、ミンナン赤レンガの家は、ふるさとを象徴する強いイメージとなってきました。
赤いレンガ、反り上がる屋根、色鮮やかな装飾。こうした景色は、海外で暮らす人びとにとって、子どもの頃の記憶や家族との時間を思い出させる「心の原風景」となっています。台湾のミンナン赤レンガ建築は、そうした感情の出口としても機能しているのです。
グローバル化の時代に見直される伝統建築
2025年のいま、世界各地でローカル文化や伝統建築の価値が見直されています。台湾のミンナン赤レンガ建築も例外ではありません。観光や文化研究の対象になるだけでなく、地域の人びとが自らのルーツを意識し直すきっかけにもなっています。
デジタル空間では、ハッシュタグで写真や動画が共有され、国境を越えてその魅力が伝わっています。台湾の歴史やミンナン文化に関心を持つ人びとにとって、赤レンガの家は「知識として学ぶ対象」であると同時に、「共感を持って眺める存在」にもなっています。
私たちは何を受け継ぎ、どう残していくのか
ミンナン赤レンガ建築のストーリーは、決して遠い地域だけの話ではありません。急速に変化する社会のなかで、どの地域でも「何を残し、何を更新していくのか」という問いに向き合っています。
- 家は単なる「物件」ではなく、記憶と物語を宿す器であること
- 素材や工法には、土地の環境と暮らしの知恵が詰まっていること
- 装飾や意匠には、見えにくい価値観や願いが表現されていること
こうした視点を持つことで、台湾のミンナン赤レンガ建築を見る目も変わってきますし、私たち自身が暮らす街や家を見直すきっかけにもなります。
SNS時代に広がる「台湾のミンナン赤レンガ」
スマートフォン一つで世界中の景色を眺められる時代に、台湾のミンナン赤レンガ建築は、写真や動画との相性もよいテーマです。印象的な赤と滑らかな曲線、ディテールまでこだわった装飾は、SNSで共有したくなる要素に満ちています。
気になる一枚を見つけたら、その背後にあるミンナン文化や華僑の歴史、一族の記憶に少し思いを巡らせてみるのもよいかもしれません。一枚の写真から、台湾とミンナン文化に対する理解が静かに深まっていきます。
台湾のミンナン赤レンガ建築は、過去の遺産であると同時に、現在も人びとのアイデンティティを支え続ける生きた文化です。ニュースを通じて世界を見るとき、こうしたローカルな風景にも目を向けてみると、新しい発見が待っています。
Reference(s):
cgtn.com








